第12回 余裕を生み出すのは、お金にならない仕事

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第12回 余裕を生み出すのは、お金にならない仕事

安田
私は「お金にならない仕事」っていろいろあるなって思っているんです。それは「儲からない事業」という意味ではなく、たとえば専業主婦が子育てや家事をやってもお金にはならないけど、それも立派な「仕事」だというような。

鈴木
ああ、確かにそうですね。
安田
でも世の中には「お金が発生しないのは仕事じゃない」と思っている人も多い気がします。経営者である鈴木さんはどう考えますか?

鈴木
「お金が発生するものだけが仕事」とは思いませんよ。お金以外のリターンもあるわけですしね。
安田
まさにそうなんですよ。むしろ社会って「お金にはならないけど、なくては誰かが困る仕事」の集合体で成り立っているような気がするんですよ。

鈴木
ははあ、なるほど。わかる気がします。
安田
私、よくフリーランスの方に相談を受けるんですよ。「タダでやってくれと言ってくる知り合いや友達が後を絶たない」って。

鈴木
そういうパターン、よく聞きますよね。
安田
ええ。で、前提としてもちろんちゃんと金銭はいただくべきだとは思うんです。一方で、年収1000万円、2000万円と稼いでいるフリーランスの人って、そういう無償の仕事もけっこうやっていたりするんです。

鈴木
わかります。1円にもならないことなのに、すごく熱心にやってくれる人、いますもんね。そういう人にはまた頼みたいと思ってしまいます。
安田
そうそう。つまりお金の発生しない仕事を通じて信頼を得、結果それが大きな売上に繋がっていく。そういう流れを理解できず、「お金になることしか受けません」と決めてしまう人は、あんまり稼げないんじゃないかと思うんですけど。

鈴木
絶対にそうだと思います。だってそういう人って、「自分にとって得かどうか」しか考えていないわけでしょう?そんな目線の人に、仕事は集まってきませんよ。
安田
ですよねえ。気持ちはわかるんですけど、もう少し大きな視点で仕事というものを考えた方がいいですよね。かく言う私もメルマガを書いたりYouTubeをやったりしてますけど、すぐにはお金にならないですからね。

鈴木
でも長期的な目で見れば、何かしら大きなリターンがありそうだから続けている、と。
安田
そういうことです。もちろん好きだからやっている面もありますけど、いつか誰かの役に立つことができ、それが信頼や売上に繋がるだろうと信じてやってます。

鈴木
「これだけ時間や費用をかけたんだから、早く回収しなきゃ」と考えているうちは、あまりいい仕事ができないでしょうね。
安田
私もそう思います。

鈴木
そういう意味で言えば、「これだけ稼がないと」という枠が明確過ぎると、逆にその枠から出ることができない気がしますね。枠の外にはもっともっと大きな売上の可能性があるかもしれないのに。
安田
本当ですね。友達からタダでキャッチコピー書いてよ、デザインしてよ、と言われたとき、「タダだから断ろう」と考えるのは簡単です。でもそこで、文句を言わず一生懸命やってあげる。つまり、まず自分から「GIVE」するんです。

鈴木
大切ですよね。よしんば売上に繋がらなかったとしても、練習やトレーニングの機会にはなるわけですし。
安田
そうそう、そうなんですよ。

鈴木
あるいは、「無料でいいのでフィードバックをしっかりください」と頼むとかね。まあ、今日食べるお金もない、くらいに余裕のない中で、そういう対応をするのは難しいかもしれませんけど。
安田
逆に、余裕がないのはそういう「タダで人の役に立つ」ということをやらないからだと思うんです、私は。

鈴木
なるほど、発想が逆だと。
安田
ええ。ですから、8時間働いたら8時間分の時給がもらえるという「お金になる仕事」だけをやっている人は、その辛いスパイラルから抜け出せないんじゃないかな、と。

鈴木
お金にならないことをやってこそ、余裕が出てくるわけですか。
安田
そう思いますね。あと私が不思議なのは、お客さんから依頼された「お金が発生する仕事」ばかりに一生懸命になって、自分たちに対する投資を全然しない会社が多いってことなんです。

鈴木
ああ、確かにそれは私も感じます。ホームページ制作会社なのに、自社のホームページを全然作り込んでいなかったりとか。そんな会社に依頼が入るはずもないのに。
安田
そうそう。でも、自分のことにいくら時間をかけても売上にならない。お金にならない仕事はしない。そう考える人がびっくりするくらい多いんですよ。

鈴木
へえ、不思議だなあ。でもそれが安田さんがさっき仰った「辛いスパイラル」から抜けられない理由ってことですね。
安田
そういう方には「投資」の感覚がないんだと思いますね。目先の売上を作ることにしか興味がない。だからいつまでたっても余裕がない。

鈴木
なるほどなあ。でも実際、「恩を売っておく」って大事なことですもんね。無料なのに頑張ってくれたなとか、すごく熱心にアドバイスしてくれたな、とか、そういうのは忘れないですもん。
安田
そうなんですよ。実際に余裕をもって稼いでいる人たちって、間違いなくそういう「お金にはならないけど誰かの役に立つこと」をやってきてますよ。

鈴木
それで思い出しましたけど、生命保険会社の営業の人たちって、そんな感じじゃないですか?話をいろいろ聞いてくれて、アドバイスをくれて、時には人を紹介してくれる。商品の話はせずに(笑)。
安田
まあ、保険は誰から買っても同じなわけで。そうすると保険に詳しいのは当然として、それ以外の付加価値として、人柄とか熱心さとか思いやりとか、そういう部分が重要になってくるんだと思います。

鈴木
フリーランスの人たちは、そういう保険会社の人をモデルにするといいかもしれないですね。
安田
確かにそうかもしれません。あるいは社長さんの中にも、面倒見がよくていろいろな会社の相談に乗っている方っていますよね。そういう方もGIVEをすることでちゃんと会社が大きくなっているんですよ。

鈴木
ああ、そういえば最近始めた不動産事業で一緒にやってくれている人、実は昔に悩み相談を受けてあげていた人なんですよね。
安田
へえ、そうなんですか。それはまさに「GIVEの法則」的な話ですね。

鈴木
ええ。「こういう事業をやりたいんだよね」って声をかけたら「待ってました。いつか役に立ちたいとずっと思ってたんです!」って。
安田
いや、素晴らしいですね。そういう意味では我々って、もう人生の後半戦に入っているじゃないですか。鈴木さんはそう思っていないかもしれませんが(笑)。

鈴木
笑。
安田
最後の幕が降りかけている中、今までの帳尻が合っていたかどうかが明確になってくる年齢なんだろうな、と思うんです。

鈴木
自分がこれまでにどれだけGIVEしてきたかが明確になる、と?
安田
そうです。今の経済的な豊かさ、あるいは支えてくれる友達の人数などは、これまでの人生で「どれだけGIVEできたか」に比例しているんだろうなって。

鈴木
なるほど。確かにそんな気がします。

 


対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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