第44回 民主主義と資本主義の矛盾

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第44回 民主主義と資本主義の矛盾

安田

藤原さんがメルマガに書かれていた「民主主義と資本主義の相入れなさ」がとても興味深くて。


藤原

ありがとうございます。

安田

それで、「民主主義の矛盾」が今の選挙の仕組みにも表れているんじゃないかと思ったんです。選挙で勝つためには、短期で成果を出すことを約束しなきゃいけない。けれど、国のトップに求められるのは本来、長期的な視野での決断のはずで。


藤原

ええ、仰るとおりです。ただ悲しいかな、人間が短期的な快楽を求めるのもまた事実なんですよね。世の中には「愚民政策」なんて言葉もありますが、言い方はさておきそれが機能してしまうことも実際にある。

安田

確かに「愚民」という表現は乱暴ですが、快楽主義的な人は大勢いますからね。


藤原

ええ。だからこそ本当は、先ほど安田さんが仰ったように長期的な視野で物事を考える必要があるわけですけど。でも現実的に、「短期的には我慢が必要ですけど、長期的にはこんな明るい未来が来ますから!」と言っても絶対に選挙には受からない(笑)。

安田

そうそう(笑)。「次の次の世代で豊かになればいいじゃないですか」と本当は言うべきなんでしょうけど、そんなことを言ったら誰一人として投票してくれませんから(笑)。


藤原

1人くらいはいてほしいですけどね(笑)。でも確実に選挙には負けてしまう。そうなると結局、選挙に勝つためには短期的な成果を約束するしかなくなるわけですよね。「民主主義の限界」がここにあると思うんです。

安田

確かにそうですよね。短期的な成果を掲げる人を選んでおいて、後から「この20年何をやってきたんだ!」と怒ったりする。企業の場合は、経営者が独断で方針を決めますよね。社員全員に投票させて会社の方向性を決めることなんてあり得ない。だからこそ長期的な視野で動けるという側面があるわけで。


藤原

そうですね。オーナー企業は特に、経営者の意思で長期的な投資がしやすいです。一方、上場企業になると株主が短期的な利益を求めるのでなかなか難しい。

安田

上場企業は3ヶ月ごとの業績でトップの評価が決まってしまいますからね。長期で物事を考えられる余地が少ないように感じます。


藤原

ええ。上場企業は株主の期待に応えなければならないので、短期的な利益を優先せざるを得ないですよね。それが「資本主義の矛盾」でもある。

安田

上場企業では株主を無視することはできませんからね。本当は長期で考えれば大抵のことはうまくいくはずなんですけど、目の前の株主に利益をもたらさないと株価が下がってしまう。結果的に、資本主義でも短期的な思考が強くなってしまうんでしょうね。


藤原

でも例えばAmazonなんかは、長い間配当を出さずに赤字経営を続けましたよね。株主に相当叩かれながらもその姿勢を貫いて、結果的には株主を儲けさせた。

安田

そうですね。あのぐらい振り切った方が、長期的には成功する可能性が高いのかもしれません。ただ、そういう企業は稀ですよね。


藤原

確かに。ともあれ、企業の方がまだ国よりは長期的な視点で動けるかもしれませんね。国の政策となると、より多くの利害関係が絡んでくるので、短期的な成果を求められることが多いですから。

安田

実際、今の少子高齢化問題も2〜3年で解決するような問題ではありませんよね。教育から根本的に変えないと、なかなか成果が出ない。人口減少だって超長期的に見たら減ることが必ずしも悪いとは言えないかもしれないわけで。


藤原

確かにそうですね。ある程度までは人口増に伴って経済が活性化していきますけど、増え続けたらどこかで破綻することは目に見えてますからね。

安田

先進国はどこも少子化に悩まされてますけど、地球全体では人口は増え続けているわけです。つまり発展途上国は人口が増え続け、先進国は減っていく。自然界でもライオンのような強い動物は子孫を少ししか残さないのと同様に、先進国ほど少子化する傾向にあるのかもしれません。


藤原

ふーむ、なるほど。増えすぎなければ、そこに質の高い教育を集中させることもできますからね。結局どこかでバランスを取るしかないんでしょう。

安田

そう思います。世界人口も増えすぎると地球は耐えきれないので、どこかで減り始めると思うんです。世界全体で何人が適切なのか、さらには日本にとっての理想の人口は何人なのかを真剣に考えないといけない。


藤原

うーん、確かに。「減ったら増やせばいい」という発想こそが短期的な政策そのものという気がしますね。

安田

そうそう。そもそもね、1億数千万人という日本の人口も、個人的には多すぎるように思えるんです。世界に70億人いて、そのうちの100人に1人以上が日本人なんですよ。あくまで感覚的な数字ですけど、5千万人でも多い気がします。


藤原

国土の広さを考えると、人口が偏っていることは間違いありませんね。満遍なく人口を分布させるのは難しいかもしれませんが。

安田

そうですね。でも長期的に取り組めば、国の形を変えることだってできると思うんです。ただ民主主義国家だと、今日話していたように短期的な成果を求める声ばかりが強くなってしまう。つまり独裁国家の方が長期視点でうまくいく可能性がある、という皮肉な話になってしまうんです。


藤原

うーん、理屈ではそうなりますけど、実際に独裁国家でうまくいってるところはないですからねぇ。国家の基礎研究や長期的な開発に少なからず資金が投じられていることを考えると、民主主義の方がまだ救いがあるかもしれない。

安田

なるほど。確かに長期的な視点を持つ政治家が全くいないわけではないですもんね。とはいえトップが頻繁に変わると、短期的な利益を求める声がますます強くなります。


藤原

そうですね。結局、一般受けする人が選ばれてしまう。

安田

本当は「この愚民どもめ!」くらい言ってくれるリーダーが出てきたらおもしろいんですけどね(笑)。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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