人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。
第44回 民主主義と資本主義の矛盾

藤原さんがメルマガに書かれていた「民主主義と資本主義の相入れなさ」がとても興味深くて。

それで、「民主主義の矛盾」が今の選挙の仕組みにも表れているんじゃないかと思ったんです。選挙で勝つためには、短期で成果を出すことを約束しなきゃいけない。けれど、国のトップに求められるのは本来、長期的な視野での決断のはずで。

ええ、仰るとおりです。ただ悲しいかな、人間が短期的な快楽を求めるのもまた事実なんですよね。世の中には「愚民政策」なんて言葉もありますが、言い方はさておきそれが機能してしまうことも実際にある。

ええ。だからこそ本当は、先ほど安田さんが仰ったように長期的な視野で物事を考える必要があるわけですけど。でも現実的に、「短期的には我慢が必要ですけど、長期的にはこんな明るい未来が来ますから!」と言っても絶対に選挙には受からない(笑)。

1人くらいはいてほしいですけどね(笑)。でも確実に選挙には負けてしまう。そうなると結局、選挙に勝つためには短期的な成果を約束するしかなくなるわけですよね。「民主主義の限界」がここにあると思うんです。

確かにそうですよね。短期的な成果を掲げる人を選んでおいて、後から「この20年何をやってきたんだ!」と怒ったりする。企業の場合は、経営者が独断で方針を決めますよね。社員全員に投票させて会社の方向性を決めることなんてあり得ない。だからこそ長期的な視野で動けるという側面があるわけで。

上場企業では株主を無視することはできませんからね。本当は長期で考えれば大抵のことはうまくいくはずなんですけど、目の前の株主に利益をもたらさないと株価が下がってしまう。結果的に、資本主義でも短期的な思考が強くなってしまうんでしょうね。

実際、今の少子高齢化問題も2〜3年で解決するような問題ではありませんよね。教育から根本的に変えないと、なかなか成果が出ない。人口減少だって超長期的に見たら減ることが必ずしも悪いとは言えないかもしれないわけで。

先進国はどこも少子化に悩まされてますけど、地球全体では人口は増え続けているわけです。つまり発展途上国は人口が増え続け、先進国は減っていく。自然界でもライオンのような強い動物は子孫を少ししか残さないのと同様に、先進国ほど少子化する傾向にあるのかもしれません。

そうそう。そもそもね、1億数千万人という日本の人口も、個人的には多すぎるように思えるんです。世界に70億人いて、そのうちの100人に1人以上が日本人なんですよ。あくまで感覚的な数字ですけど、5千万人でも多い気がします。

そうですね。でも長期的に取り組めば、国の形を変えることだってできると思うんです。ただ民主主義国家だと、今日話していたように短期的な成果を求める声ばかりが強くなってしまう。つまり独裁国家の方が長期視点でうまくいく可能性がある、という皮肉な話になってしまうんです。

うーん、理屈ではそうなりますけど、実際に独裁国家でうまくいってるところはないですからねぇ。国家の基礎研究や長期的な開発に少なからず資金が投じられていることを考えると、民主主義の方がまだ救いがあるかもしれない。
対談している二人
藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表
1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。