第218回「生き残るファミレスの境目」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第217回「日本電産で証明されたこと」

 第218回「生き残るファミレスの境目」 


安田

消費者の「ファミレス離れ」が止まらないそうです。コロナでみんな外食しなくなって。コロナが落ち着いてもお客さんが戻ってこない。

石塚

今はそんな感じですね。

安田

ファミレスという業態自体がもうオワコンなんでしょうか。

石塚

ファミレスがオワコンだとは僕は思わないです。

安田

そうですか。

石塚

たとえばサイゼリヤというチェーンは、やっぱり素晴らしいですよ。

安田

あれもファミレスですか?

石塚

ファミレスです。

安田

へぇ~。行ったことありますけど。確かに安いけど、「もう1回行こうかな」とは思わなかったです。個人的にはデニーズの方が好きです。

石塚

そうですか。

安田

席のゆったりさとか、メニューも我々世代に響くし、でかい肉が出てきたり。私はサイゼリヤにはあまり魅力を感じなくて。デニーズ的なファミレスに残ってほしいです。

石塚

もちろん好みもあるけど、サイゼリヤはどこを狙うかがはっきりしていて。「広げすぎず狭すぎず」「うちはここで勝負するんだ」って。

安田

どこを狙ってるんですか?

石塚

低価格帯ですね。コストパフォーマンスでのナンバー1。でもそれは安田さんには合わないですよ。

安田

確かに。安いだけでは選ばないですね。

石塚

安い割においしい。それを求める層が世の中には結構いるわけですよ。

安田

よくサイゼリヤで打合せをする知り合いがいます。たしかにドリンクは飲み放題で安いし、小腹が減ったら食べ物もあるし。

石塚

打ち合わせには便利ですね。

安田

ファミレスというよりは喫茶店の延長みたいなイメージ。

石塚

まあそうですね。そういうニーズも取り込んでるってことですよ。

安田

デニーズもそんなに美味しいわけではないんですけど。「ちゃんとご飯食べたぞ」という気分にはなる。

石塚

それはわかるような気がします。サイゼリヤってイタリアン業態だから定食があるわけじゃない。基本ぜんぶ単品じゃないですか。

安田

そうですね。

石塚

そういうメニューの差はあるかもしれません。

安田

だけど企業としてはサイゼリヤのほうが優れていると。業績を見ると確かにデニーズは厳しいみたいですね。これは経営力の差ですか。

石塚

結局ファミレスって、いちばん大きいのは商品開発力なんですよ。

安田

商品開発力ですか。

石塚

はい。安いコストでどれぐらい美味いものをつくれるかの勝負。それを究極に煮詰めていくとサイゼリヤになる。

安田

なるほど。

石塚

これを中途半端にやってしまうと、味も中途半端、価格も中途半端、材料費が高騰すると厳しい、ということになる。

安田

現にそうなってますね。

石塚

サイゼリヤって調達までぜんぶ自分たちでやってるから。そこも含めた商品力の差は大きいと思います。

安田

私が18歳でアメリカに行った頃、まだ日本にはそんなにファミレスがなくて。

石塚

なかったですね。

安田

「日本にはこんなレストランはないな」というオシャレさがありました。古きよきアメリカのダイナーみたいな。

石塚

分かります。ファミレスで食事をすること自体がかっこよかったですよ。

安田

そうなんです。いまの若者はファミレスにそういうのは感じないんですか。

石塚

感じないでしょう。「値段が安くて長居できるところ」「Wi-Fiがつながって充電もできるところ」ぐらいのイメージじゃないですか。

安田

昔みたいにちょっと価格帯を上げて、もうちょい大人な人を入れて、みたいな戦略はどうですか。「若い頃は、こういうのが好きだったんだ」という年配者狙い。

石塚

ロイヤルホストというファミレスはまさにそれですよ。

安田

そうなんですか!

石塚

はい。ロイヤルホストはたぶん安田さんが行っても、ある程度うなずいてくれると思います。

安田

へぇ~。知りませんでした。今度行ってみます。

石塚

そのかわり単価もちょっと高いです。

安田

ちょっとぐらい高くてもいいですよ。

石塚

つまりファミレスって、どの単価帯で勝負するかなんですよ。ガストとサイゼリヤはある意味、単価帯が一緒なんです。

安田

へえ〜。

石塚

だけどガストとサイゼリヤをくらべると、やっぱりサイゼリヤはターゲットを絞っている分よくできてます。

安田

デニーズやすかいらーくはどうですか?

石塚

すかいらーくという業態は今はなくなっちゃった。

安田

そうなんですか!すかいらーくってもうないんですか。

石塚

すかいらーくは廉価版のガストに、もう十数年前にぜんぶ変わった。

安田

なんと。

石塚

すかいらーくグループのいくつかの業態のひとつがガストです。

安田

なんかガストって安っぽいイメージなんですよ。

石塚

そう。同じ単価でもサイゼリヤのような満足感を感じられない。それがガストの弱みです。ただ価格を落としただけっていう。

安田

ファミレス業態がダメなわけではないと。

石塚

僕はやりようだと思います。実際ロイヤルは単価が少し高めで、全店舗にちゃんとシェフ・コックを置いて、最後にちゃんと手をかけて調理する。

安田

おお!まさに私が求めるファミレスです。

石塚

でしょう。ロイヤルに行くと、必ず店長と料理長と2人の写真が名前付きで飾ってあるんです。「2人がこのお店をやっています」という感じで。

安田

いい戦略ですね。

石塚

はい。安田さんはロイヤルに行ったほうがいいと思います。

安田

家族で近所のデニーズに行ったんですけど。席が広くて景色もいいんです。でも「セントラルキッチンでつくったのを温めただけ」みたいなハンバーグでした。

石塚

そうそう。

安田

そこの満足感もロイヤルにはあるわけですね。

石塚

あります。残念ながらデニーズはセブン&アイグループのお荷物企業なので。

安田

なんと。そうなんですか。

石塚

はい。セブン&アイも本気でデニーズをやっているようには見えない。

安田

こんどロイヤルに行ってみます。でも子供が大きくなったら、個人店の美味しい洋食屋さんにいくと思いますけど。

石塚

そうなっちゃうでしょうね。基本的に安田さんはファミレスのターゲットではないですよ。

安田

そうかも知れません。石塚さんの読みではロイヤルホストとサイゼリヤは生き残りますか。

石塚

はい。どっちも残ると思います。

安田

ガストとデニーズは厳しい。

石塚

この10年ぐらい、まともに商品開発をやっていない感じがします。

安田

私が食べたメニューもそんな感じでした。空いているので客としては嬉しいんですけど(笑)

石塚

次に行ったら閉店になってるかもしれません(笑)

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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