第29回 社員が喜んで社員旅行に参加する会社

この対談について

地元国立大学を卒業後、父から引き継いだのは演歌が流れ日本人形が飾られたケーキ屋。そんなお店をいったいどのようにしてメディア取材の殺到する人気店へと変貌させたのかーー。株式会社モンテドールの代表取締役兼オーナーパティシエ・スギタマサユキさんの半生とお菓子作りにかける情熱を、安田佳生が深掘りします。

第29回 社員が喜んで社員旅行に参加する会社

安田

確かスギタさんの会社って社員旅行をされていますよね?


スギタ

ええ、毎年していますね。今年は沖縄に行きました。

安田

実は最近のネット記事で話題になっていたんですが、令和の新入社員って社員旅行を全く喜んでいないらしいんですよ。「プライベートの時間まで会社の人と一緒にいなきゃいけないなんて…」って(笑)。


スギタ

ああ、確かにそういう話を聞きますよね。「社員旅行なんていいから、そのぶん休みとお金をちょうだいよ」ってことなんですかね…(笑)。

安田

そういう中でスギタさんの会社は「社員旅行」をすごく大事にされている。そもそもどういうきっかけで始まったんですか?


スギタ

最初の社員旅行は会社設立10年目のタイミングでしたかね。

安田

ふーむ、つまりちょうど私たちBFIと一緒にお仕事を始めた頃ですかね。


スギタ

ええ。安田さんたちといろいろとお話していく中で、「お客様に喜んでもらうこと」だけでなく「社員もこの会社を誇りに思えて、もっと楽しく働ける場所にしていけるといいよね」という風になっていって。

安田

そうでしたね〜。お客さんだけでなく社員さんも大切にする、そういうフェーズに移行するタイミングじゃないかって話になったんでしたね。


スギタ

そうそう。それをきっかけに、社員と親睦を深めるイベントの1つとして社員旅行を企画して。

安田

なるほどなるほど。記念すべき第1回の社員旅行は、神戸に行かれたんでしたよね。


スギタ

そうなんです。僕の修行先をみんなで見に行こうって(笑)。12〜3人で行きました。

安田

いいですね〜。具体的にはどんなことをされたんですか?


スギタ

神戸のパン屋さんやケーキ屋さんをいろいろ巡って、僕の修行先『ダニエル』にみんなでご挨拶に行って、夜は温泉に入って…。みんなで旅行に行くなんてはじめての経験でしたし、すごく楽しかったですよ。

安田

良かったですねぇ。第1回が好評だったから、その後は毎年社員旅行をするようになったというわけですか。


スギタ

ええ。僕だけじゃなくて、社員さんたちも「今年はどこに行きますか?」って楽しみにしてくれていたので(笑)。それで翌年は「体験を共有しよう」って、陶芸をしたりカヤックをしたりしました。

安田

そういえばフランスにも行かれてませんでしたっけ?


スギタ

行きました! 確か5回目だったかな。パリのケーキ屋さんやパン屋さんを見て回って。旅行とはいえ、自分たちの仕事のヒントになりそうなことは吸収していこう、というスタンスで。

安田

いやぁ、すごいですね。ちなみに社員旅行の費用は社員さんたちが積立しているんですか?


スギタ

いえいえ、全部会社持ちで、社員さんからは一切徴収してないです。だってそれをしちゃうと、それこそ冒頭の話じゃないですけど「社員旅行なんてなくてもいい」になると思うので…(笑)。

安田

確かにそうですね(笑)。ただお金の問題だけじゃなく、「無礼講なんて言いつつ、実際に上司や社長になんでも言えるわけないじゃん」っていう意見もあるのかなと思うんです。そのあたり、スギタさんの会社はどうですか?


スギタ

あぁ、なるほど。そういう面では、ウチの会社はもう一切忖度なしですよ(笑)。そもそも僕も社長とかシェフではなく「スギタさん」って呼ばれていますし(笑)。

安田

そうなんですか! 「シェフ」って呼ばれるのが当たり前なのかと思っていました。


スギタ

昔は僕も、自分の修行時代に倣って「シェフって呼んでね」とは言っていたんですよ。でも僕にとって「シェフ」と呼ばれるべき人は、僕の尊敬している『ダニエル』のシェフ1人で。だから自分がそう呼ばれることに違和感もあったんですよね。

安田

ははぁ…なるほど。それでどうしたんですか?


スギタ

結局「シェフ」呼びはやめてもらって、そこからはずっと「スギタさん」です(笑)。

安田

なるほどなぁ。でもそういうフラットな関係性ができているから、社員の皆さんも社員旅行が楽しめるのかもしれないですね。


スギタ

それはあると思います。ちなみにウチの社員旅行中は、敬語禁止にしていますからね(笑)。

安田

それはすごい! …とはいえ、いくらなんでもタメ口は無理なんじゃないですか?(笑)


スギタ

本音はそれでもいいと思っているんですけどね(笑)。ですから丁寧語まではギリギリセーフにしています(笑)。

安田

「スギタさん、これをしていただけますか?」みたいなのはダメで、「これしてくださ〜い」ならOKと(笑)。言葉遣い云々というより、気持ちを大事にしている感じですかね。


スギタ

そうですそうです。やっぱり僕としては日頃から、下からの意見が出やすいような雰囲気を作っていきたいので。

安田

なるほどなぁ。つまり社員旅行が全部ダメだというわけではなくて、やり方を考えれば社員も喜んで参加してくれるってことなんでしょうね。


スギタ

そうそう。ちなみにウチの求人説明会で社員の子が、学生さんたちに社員旅行のアピールをしてましたよ(笑)。「ウチの社員旅行、めちゃくちゃ面白いよ」って。

安田

社員さん自らが「ウチの会社のアピールポイントは、社員旅行だ」と思ってくれているわけですね。いやぁ〜素晴らしいです!


対談している二人

スギタ マサユキ
株式会社モンテドール 代表取締役

1979年生まれ、広島県広島市出身。幼少期より「家業である洋菓子店を継ぐ!」と豪語していたが、一転して大学に進学することを決意。その後再び継ぐことを決め修行から戻って来るも、先代のケーキ屋を壊して新しくケーキ屋をつくってしまう。株式会社モンテドール代表取締役。現在は広島県広島市にて、洋菓子店「Harvest time 」、パン屋「sugita bakery」の二店舗を展開。オーナーパティシエとして、日々の製造や商品開発に奮闘中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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