商売をしていると必ずそこには商品というものが存在する。商品には形のある有形商材と形のない無形商材がある。無形商材は人件費の割合が高く原材料費が安いイメージ、有形商材は原材料費が高く人件費率が低いイメージがある。だがどちらも突き詰めていくと人件費に行き着くことになる。
どんな有形商材にも原材料というものがあり、原材料を作り出しているのも人間だからである。原材料だけではない。それを加工する機械も、機械を設置する工場も、原材料を工場に運ぶ物流も、その管理も、全て人間が行なっている。つまり全てのサービスや商品は人間の手間暇で出来ているということだ。
サービス業はわかりやすい。髪を切ってもらう、ネイルを綺麗にしてもらう、肩や腰を揉んでもらう。そこには人件費がダイレクトに関わってくる。喫茶や食事もわかりやすい。お金を払う対象がコーヒーや食事であったとしても、それを作っている人、運んでくれる人がいることは容易に想像がつく。
難しいのは人の顔が見えない有形商材や多くの裏方が関わってくるサービスだ。たとえば宅配便は運んでくれる人の顔は見える。しかしバックヤードで商品を整理している人や検品している人、その人たちを管理している人の顔までは見えない。だがそこには確実に多くの人の時間が費やされているのである。
つまり全ての商品には人件費が含まれるということ。いや、全ての商品は人件費で出来ているといっても過言ではない。素材の価格も突き詰めていけばそこに関わった人の人件費なのである。商品を買う人はぜひこの事実を胸に刻んでほしい。安く買おうとしているその商品は人の時間の結晶なのである。
うちの業界は値上げができない。そんなことをしたら売れなくなる。そう考えている経営者にはぜひご理解いただきたい。安く売ろうとしているものが何なのかを。私たちは一体何を売っているのか。それは人間の時間である。商売の種類に関わらずそれは同じ。商品とは関わった人すべての時間なのである。
なぜ安売りしてはいけないのか。なぜ少しでも高く売ることを考えないといけないのか。それは人の時間を売っているから。その商品、その商売に関わる人を豊かにしたいのなら、少しでも高く買ってもらうための努力をすること。値上げこそが経営者のやるべき最大かつ最優先の仕事なのである。
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