第80回 男性の方が寿命が短いのは「肩書」のせい?

この対談について

健康人生塾の塾長にしてホリスティックニュートリション(総括的栄養学)研究家の久保さんと、「健康とは何か」を深堀りしていく対談企画。「健康と不健康は何が違うのか」「人間は不健康では幸せになれないのか」など、様々な角度から「健康」を考えます。

第80回 男性の方が寿命が短いのは「肩書」のせい?

安田
今日は健康人生塾・塾長の久保さんに「なぜ男女で寿命に差が出るのか」についてお聞きしたいと思います。以前、寿命の話をしましたが、女性の方が長生きなのは世界共通なんですかね。

久保
そうですね。統計のあるほとんどの国と地域で女性の方が長いそうですよ。しかも100歳以上については圧倒的に女性の方が多いはずです。
安田
なるほど。ちなみに男性は、独身者より既婚者の方が寿命が長いんですけど、女性は独身でも既婚でも差はないらしいです。さらに言うと、妻に先立たれた夫はすぐに死んじゃうけど、夫に先立たれた妻はむしろ長生きすると(笑)。

久保
なるほどなるほど(笑)。医学的には「長寿には女性ホルモンが影響している」とか「女性は体が小さくて基礎代謝量が少ない分、老化を進める活性酵素の量も少ない」とか諸説あるようです。ただ個人的には、「男女の役割の違い」が大きく影響しているんじゃないかと思っているんです。
安田
ほう…役割の違い、ですか。

久保
以前の対談では、「直立歩行が人類に大きな変化を与えた」というお話をしました。ところが出産をする女性にとっては、その直立歩行が大きな「不利」になるんです。
安田
へぇ、そうなんですか! それはどうしてです?

久保
直立歩行するための骨格だと、出産時に母体に大きな負担がかかるんですよ。
安田
ははぁ、直立歩行で長距離移動ができるようになった反面、子どもを産むのには不利な骨格になってしまったわけですか。

久保
そういうことです。多くの哺乳類は生まれてすぐ歩けますよね。でも人間は生まれて1年くらいたってようやく歩けるようになる。つまり赤ちゃんを「未熟」な状態で産まざるを得ないんですね。
安田
ふむふむ。お母さんのお腹の中で、生まれてすぐ歩けるくらいまで成熟させることができないわけだ。

久保
そうなんです。だから未熟なまま産む。そうすると今度は赤ちゃんを守るために、ずっとそばに誰かがいなくてはならないので、女性は「子どもを守る役割」を担うようになったわけです。現代のように核家族ではなく、複数の家族が協力して守っていたと考えられます。
安田
なるほどなるほど。では一方の男性にはどんな「役割」があったんでしょうか?

久保
男性は獲物を捕まえるために狩りに出ますが、1人で大きな獲物を仕留めることはできません。だから複数名でチームを組んだり協力関係を結んでいたと考えられます。その時に重要になったのが「目には見えない何かで繋がること」だったんじゃないかと思っているんです。
安田
目に見えない繋がりですか…。もう少し詳しく教えていただけますか?

久保
「獲物を仕留めるためにどう動くか」を考えるのって、想像の中でのことですよね。まだ獲物を手にしていない状態のある意味「架空の世界」の中で、誰がどう動くのかというような作戦を立てる必要がある。その過程で自分と相手との繋がりを感じなきゃいけなかったんです。
安田
ふーむ…お話を聞いていると、女性の方が現実的な役割があるのに対して、男性の役割はなんとなく曖昧なもののような気がします(笑)。

久保
まさにそこがポイントなんです。女性には「子ども守る」とか「獲物を切り分ける」といった「現実の世界」で明確な役割がある。でも男性は「目に見えない繋がり」に自分の存在を強く感じていたんだろうと思うんです。
安田
なるほど。男性は「架空の世界」を皆で共有するためにも、その世界の中で繋がりを作り、結束力を高めていったわけですね。

久保
ええ。それが今で言うところの「肩書」なんじゃないかなと思っているんです。男性って自分の肩書がなくなってしまった時に、ガクッと気力を失ったりするでしょう? 「アイデンティティ」そのものがなくなったと感じてしまうというか。
安田
あぁ確かに。定年した途端、社会との繋がりが絶たれちゃうんですよね。それで孤独になってしまう男性も多いと聞きます。

久保
そうそう。さらに言えば、先ほど「妻に先立たれた夫は長生きできない」という話もありましたけど、妻が亡くなることで「夫」や「家長」という肩書がなくなってしまうのも大きいと思うんですよ。
安田
なるほどなぁ。会社を退職した後の男性にとっては、「夫」というのが最後に遺された肩書だというわけですね。そしてそれがなくなることで、心が弱っていってしまうと。…確かにわかる気がします(笑)。

久保
かたや女性は現実的であるがゆえ、目の前の現実に合わせた対応が得意で。しかも昔から狩りで男性が留守の間、女性同士井戸端会議をしてきたのでコミュニケーション能力も高い(笑)。それで夫が亡くなった後も孤独になることなく楽しく過ごすことができるんだろうなと。
安田
ははぁ…確かに「肩書」って空想のものですもんね。そこに自分の存在意義をあまり強く結びつけてしまうと、失った時にぽっくり逝っちゃいますよ、ということですね(笑)。

久保
…というのが私の結論なんですが、どうでしょうか?(笑)
安田
いやぁ、すごく面白いお話でした!

 


対談している二人

久保 光弘(くぼ みつひろ)
健康人生塾 塾長/ホリスティックニュートリション研究家

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仙台出身、神奈川大学卒。すかいらーくグループ藍屋入社後、ファンケルへ。約20年サプリメントの営業として勤務後、2013年独立し「健康人生塾」立ち上げ。食をテーマにした「健康人生アドバイザー」としての活動を開始。JHNA認定講師・JHNA認定ストレスニュートリショニスト。ら・べるびい予防医学研究所・ミネラル検査パートナー。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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