この記事について
2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
前回は 第323回「大企業勤務者に必要なのは運?」
第324回「セブン&アイ買収に見る日本の未来」
安田
石塚
カナダのコンビニ大手クシュタールグループによる買収提案ですね。
安田
コンビニは海外から輸入したビジネスモデルですけど、今では独自の進化を遂げて海外よりもはるかに進化しているイメージです。
石塚
安田
店舗数もクシュタールグループよりセブン&アイホールディングスの方が多くて。
石塚
セブンが8万店舗に対してクシュタールは1万6700ですからね。
安田
小さい方が大きい方に買収をかけてくるっていう。この構図がよく分からないんですけど。
石塚
安田
石塚
物価とか為替のことを考えるとお買い得なんだと思います。クシュタールの方が。
安田
なるほど。円安で。今ならセブン&アイがお買い得だと。
石塚
安田
でもセブン&アイとしたら、これだけ儲かっていて売る理由がない気がするんですけど。
石塚
それはその通りですよね。ナメられた話ですよ。だけどセブン&アイも当初はちょっと前向きだったんですよ。
安田
そうなんですか?どういうところで前向きだったんですか。
石塚
買収内容によっては50:50ぐらいに持ち込んで、1位2位でくっついて、もっと大っきく世界展開しようとかって考えたんじゃないですか。
安田
石塚
はい。北米店舗数1位がセブン&アイで2位がこのクシュタールさんなので。1位2位連合ですよ。
安田
石塚
細かいところはわからないんですけど。恐らくセブン&アイが思っていたほど甘くはないと思うんです。買うってことは「もう俺たちの言う通りに動け」みたいな。
安田
石塚
日本人ってそういうところが甘いから。買収提案とか言ってますけど要は乗っ取りですよ。
安田
そもそも上場企業ってそういうもんですけどね。株価が下がると高いところに買い取られちゃって。
石塚
おっしゃる通り。それが嫌なら上場しなきゃいいわけで。
安田
セブン&アイは「著しく過小評価されている」と怒ってますね。提案には応じない姿勢を示したと書いてます。
石塚
断られたけど、また条件を変えて買収提案してきてるみたいですね。やはりセブン&アイの全株式を取得したいということで。
安田
総額なんと5兆円ですよ。この5兆って誰が手に入れるんですか?
石塚
まずイトーヨーカドーの創業者伊藤家でしょ。あと鈴木さんっていう長らく君臨した方も株を少し持ってるし。ただ創業家と言っても10%くらいだった気がします。
安田
10%でも持ってたら5000億ですよ。売れば10世代ぐらい先まで悠々自適の生活ができます。売っちゃうのも1つの手じゃないんですか。
石塚
いやあ。国内トップで散々やってきたのに「今更カナダのクシュタールなんかに売れるか!」って感じでしょう。実は娘が今カナダにいるんですけど。
安田
石塚
それで聞いたんですよ。「クシュタールてどんな店?」って。そしたら「お父さん、もうこんなしょぼい店はない」って(笑)。
安田
確かに海外のコンビニってしょぼいんですよ。映画に出てくるような田舎のなんでも屋みたいな感じで。それに比べて日本のセブンはもう立派な国民インフラになってる。
石塚
だからこそ買いたいんでしょう。5兆でセブンの商品開発能力とか、系列や取引先とのネットワークとか、全部手に入れたい。
安田
石塚
日本のコンビニはオリンピックで来た外国選手もびっくりしちゃうレベルですから。何を食べても美味しいし、スイーツは信じられない安くて美味しいって。それをクシュタール全体に展開したら売上も利益も改善される。
安田
でも5兆なんて調達できるんですか?いくらなんでも自己資金ではないでしょう。
石塚
当然クシュタールが全部は調達できない。ただカナダ政府もお金を出すと言ってますね。
安田
なるほど。もはや国策なんですね。セブン&アイを買うことが。
石塚
このセブン&アイの一件はこれから続出する買収劇の始まりだと僕は予想してます。
安田
円安で安くなった日本の優良企業を海外企業がバンバン買いに来ると。
石塚
今世界で1番キャッシュリッチな会社はアメリカのブラックロックですけど。キャッシュが1400兆ぐらいあって東京証券取引所を丸ごと買ってお釣りが来る。上場してる日本の会社を全部買える。
安田
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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。