第75回 平均年収1000万円時代に向けて、経営者が今すべきこと

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第75回 平均年収1000万円時代に向けて、経営者が今すべきこと

安田

前回も話題に出ましたけど、最近はいろんな人が「手取りを増やそう」としてますよね。政治家だけでなく、経営者も「社員の給料を上げないと人が来ない」と言い出している。


倉橋

確かにそうですね。実際、その通りだと思います。

安田

私もそう思うものの、現実的にどこまで上げられるんだろう、とは思うんですよ。というわけで、多くの社員を抱えている倉橋さんのお話をお聞きしたいなと。


倉橋

なるほど。それでいうと、昔から「社員は給料の3倍は粗利で稼ぐことが必要だ」と言われてますよね。裏を返せば、「会社は社員に払う額の3倍の粗利を作らなければいけない」ということでもあると思うんです。

安田

ああ、確かに。粗利がなければ給料は払えませんからね。でも頭を切り替えられない経営者さんもまだまだ多いですよね。「うちの業界では難しい」「うちの地域では難しい」と逃げ腰になってしまって。


倉橋

そうですね。でも、もし粗利を作ることが本当に難しいなら、業界や地域を変える選択肢も考えなければいけないと思いますよ。厳しいことを言うようですが、そのまま何もせずにいたら、いずれ会社はなくなってしまうでしょうね。

安田

私もそう思います。実際、万代さんはビジネスモデルも変えて、エリアも変えて、業績を伸ばしているわけですからね。そうやって収益性を高める努力が求められているんでしょう。


倉橋

それに加えて、「経営の意思決定のスピード」もより速さを求められるようになったと感じます。事業をやっていれば、中にはうまくいかないプロジェクトもありますが、それをいかに早く損切りできるかが重要で。

安田

ああ、なるほど。損失を抑えて新たに利益の出る事業に投資していくわけですね。


倉橋

そうです。そういう意味でも、利益に対する感度は以前よりシビアになっている気がしますね。

安田

確かに「なんとなくの経営で、気づけば利益が出ていた」なんてことはもうあり得ないですからね。利益の出るところからは細かく取っていかないと。


倉橋

そうそう。集客からすべてロジカルに考えて、それでもうまくいかない時は潔く損切りをする。そうやって利益を積み重ねることで、ようやく社員に還元できるわけです。これからの時代に会社が生き残っていくには、それしか道がないとすら思います。

安田

同感です。経営者にとっては、かなり大きな発想の転換が求められる時代ですよね。ちなみに仮に発想の転換ができたとして、日本人の平均年収を1000万円まで持っていくことも可能だと思いますか?


倉橋

今は先進国の中でも平均所得が最下位に近い状態ですけど、逆にどの国でもできていると考えれば、日本でも全然不可能ではないと思います。でもそのためには、安田さんがXで仰っていた通り、経営者が頑張るしかない。

安田

そうですよね。政治家がいくら「給料を上げろ」と言っても、経営者が上げなければ実際には上がっていかないわけで。

倉橋

そうそう。そのためにも、会社が儲かることにストップがかからない社会になってほしいと思います。

安田

そういう社会を作っていくには、1人当たりの生産性を上げる努力は必須でしょうね。これからは人口が5000万人近くまで減ると言われていて、労働人口も今の半分弱の3000万人になるわけですから。ちなみに倉橋さん自身は、万代という会社で平均年収を1000万円にすることは実現できそうですか?

倉橋

そうですねぇ。それくらいできないと、幸せな未来はやってこない気がしますね。

安田

なるほど。とはいえ平均1000万円ってけっこう大変じゃないですか? もちろんすでに実現している会社もあれば、その3分の1くらいしか払っていない会社もあるわけで。

倉橋

確かに簡単ではないかもしれません。でも考え方によっては、今はチャンスでもあると思っていて。むしろ流通業界で最大手と言われるような大企業よりも、柔軟に変化していける僕らのような企業の方が、これからの伸びは期待できるんじゃないかと。

安田

それはそうですね。これからいくらでもより付加価値の高いサービスは作っていけますから。

倉橋

ええ。業界内でも、ロピアやドン・キホーテは本当によく考えられていると思います。でも最大手となると、あまりそう感じられなくて。だからこそ買収されそうになったり、大量閉店に追い込まれたりしているわけで。

安田

そこまで大きくなると、「規模の経済」で押し切れると思ってしまうのかもしれませんね。「ある程度安くて品揃えがよければ客は来るだろう」という考えで商売している部分はありそうです。

倉橋

閉店に至るまでにも、少しずつ客足が減っていることには気づいていたはずなんです。でも20年もの間、効果的な手が打てていなかった。僕自身はお客さんの数が少しでも減ると、めちゃくちゃ気になってしまうので、そこが不思議だなぁと。

安田

大きい会社ほど手を打てなくなっているんでしょうね。逆に言えば、倉橋さんはどういう手を打っていきますか?

倉橋

流通業で一番大事な指標は「客数」です。そこに対して手を尽くしていくことが、会社の利益につながり、結果的に従業員の給料アップにつながっていくんだと思います。

安田

なるほど。つまりお客さんにとっての価値のあるものを提供して、来客数をとことん追求していくことが、平均年収1000万円を実現する道だと。

倉橋

ええ、そう思います。この先日本人の平均年収が1000万円になるかどうかは、僕も含めた一人ひとりの経営者にかかっているってことです。

安田

仰るとおりですね。倉橋さんのような経営者が増えていくことを願っています。


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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