真面目と不真面目の使い分け

真面目にアピールするだけでは集客ができない。商品の良さや丁寧な顧客対応、真面目な企業姿勢をどんなにアピールしても、無数にひしめく企業情報の中に埋もれていくだけだ。情報が溢れる現代社会においては不真面目な集客が必須なのである。

「日本一高いポスティング」を名乗る会社。「ブラック」を代名詞とする社長。代表が「カメライダーという怪しい着ぐるみ」で登場する自動車学校。これらは私の知り合いが経営する実在の企業である。その共通点は口コミ力が抜群に良いこと。同規模、同業種の会社の中で飛び抜けて認知度が高いこと。同業他社に比べて集客コストが格段に低いこと。

「え!」「なぜ?」「どうして?」という違和感を上手に使い、人の注意を引き、足を止めさせ、自社ストーリーの中に引き込んでいる。99%の会社はこんなリスキーなPRをやらない。だからひとり勝ちできる。真面目な集客をやればやるほど他社と似てしまい、集客コストが跳ね上がり、値下げしないと売れない会社になっていくのだ。

不真面目の活用は現代において不可欠なスキルである。ただし不真面目は集客に止めなくてはならない。あくまで注意を引き、足を止めさせるための手段だ。顧客との接点が生まれたら二重人格かと思われるほど真面目に仕事に取り組む。真面目すぎるほどの顧客対応、真面目すぎるほどの納品クオリティ、真面目すぎるほどのアフターフォロー。これがないとただの詐欺集団になってしまう。

集客は不真面目に。商品開発、納品、顧客フォローはド真面目に。この使い分けが重要であることを全社員に理解させる。ここを徹底しないと社員が間違えてしまう。ウチは高いことが売りなのだ、ブラックが売りなのだ、不真面目が売りなのだと勘違いしてしまう。そうなるとこのビジネスは短命に終わる。面白いけど納品クオリティは低い。知名度はあるけどただ高いだけ。悪い口コミは良い口コミの倍速で広がっていく。

高いけれどもそれだけの価値があるサービス。ブラックと名乗っているけど仕事はめちゃくちゃ真剣。この評判を得るために徹底的に顧客に寄り添うのである。商品を売るのではなく顧客の要望を実現する。そこに全力を傾ける。結果的に取引先の満足度は高くなり、リピートや紹介の割合が増え、マーケットでの評判が良くなっていく。真面目と不真面目の使い分けが現代社会の必須戦略なのである。

 

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