壁をすり抜ける

人は壁をすり抜けることができない。
ではその理由を考えたことはあるだろうか。
はあ?と言われそうな話であるが、
ここがとても重要なのである。

考えるまでもなく、そこに壁があるからだろう。
そのように即答する人は考えていない。
街には時々、ガラス扉に突っ込んでいく人がいる。
あまりに綺麗に磨かれているので、
そこに扉があることが分からないのである。

ないと思っていたものがある。
透明なガラスに跳ね返された人は、
とても恥ずかしそうである。
「あの人、扉に突っ込んじゃったよ(笑)」
と揶揄されるからである。

人は壁をすり抜けることはできない。
だから壁に突っ込んではならない。
突っ込む人はよほど迂闊な人かおバカさんである。
それが普通の人たちの常識なのである。

だが経営者は常識人であってはならない。
壁に突っ込むことも経営者の仕事なのである。
扉に突っ込む人の中にはガラスを砕いてしまう人がいる。
あの硬いガラスを砕いてしまうのだから
凄いパワーである。

ぶつかる人が特別に体を鍛えているわけではない。
もともと人間はその程度の力を秘めているのだ。
だが多くの人は全力で壁にぶつかることはできない。
跳ね返されて笑いものになることを避けたいからである。

壁を抜けられない最大の要因は壁があることではない。
壁は抜けられないと脳みそが認識していることだ。

現実の生活において、私たちはわざわざ
壁を突き破って進む必要はない。
押したら倒れるボロい壁だったとしても、
壁だと認めて迂回することは社会のルールなのである。

だが経営においてこのルールは適用されない。
すべての壁はすり抜けることができる。
経営者の脳みそはそのように設定しておくべきだ。
そこに壁があると認識した時点で人の思考は停止する。
思考が停止すれば行動も停止してしまう。

地域の壁、業界の壁、資金の壁、社内事情の壁など、
ビジネスにはいろんな壁が存在する。
だがそれらは、どれひとつとして
ガラス扉ほども強固ではない。

壁を乗り越えるという表現があるが、
それは間違ったやり方だ。
乗り越えるのはそこに壁があるからだ。
壁などない。
そう思って突っ込んでいけば壁などない。

ぶち壊して進めという意味ではない。
最初から壁などないのである。
壁をつくっているのは自分自身の脳みそだ。
壁はない。そう認識する必要すらない。
その状態になった時、
人は壁をすり抜けることができるのである。

 

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2件のコメントがあります

  1.  いろんな複数のマインド研修(自己啓発研修やセミナー)に参加しましたが、共通テーマは自己の心や思考の壁やくせ及び世間や社会の常識、並びに心地よい自分が作った(自己正当化の)壁を認識し、どう乗り越えていくかでした。
     ある研修でのことばを引用しますが、人は「(思考に)何も無し」から、人は壁をすり抜けることができるのであるに合点しました。

  2. コメントありがとうございます。壁をなくす研修があるんですね。
    私も何か面白い(かつてない)研修を編み出してみたいです。

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