第88回 「客集め」の時代が終わり、「働き手集め」の時代へ

この対談について

住宅業界(新築・リフォーム・不動産)の「課題何でも解決屋」として20年以上のキャリアを持つ株式会社ランリグが、その過程で出会った優秀な人材を他社に活用してもらう新サービス『その道のプロ』をスタートしました。2000名以上のスペシャリストと繋がる渡邉社長に、『その道のプロ』の活用方法を伺う対談企画。

第88回 「客集め」の時代が終わり、「働き手集め」の時代へ

安田

スポーツでもルールが変わることってよくありますよね。オリンピック柔道でも、日本人が勝ちすぎるからとルールが変わったりする。同じように、スポーツ以外でも力のある人が自分に有利なように書き換えていることもあると思うんです。


渡邉

それでいうと、地球温暖化も誰かが勝手に作ったルールじゃないか、みたいな話がありましたね。

安田

ああ、今までの46億年で定期的に温暖化と寒冷化を繰り返していて、たまたま今が温暖化の時期なだけだという説ですよね。それについては諸説あるんでしょうが、ルールが変わると勝者が変わるということは間違いないわけです。


渡邉

確かに。昨日まで勝ってた人が負けて、負けてた人が勝つことなんても全然ありますからね。ビジネスでいうゲームチェンジですよね。

安田

そうそう。ビジネスでは今までは「客集めが最優先」というルールだったんですけど、「働き手集めが最優先」というルールに変わりつつありますよね。外食産業は特にその変化が早くて、「働き手をいかに安いコストで集めて定着させられるか」が勝敗を分けている。


渡邉

まさに勝者が入れ替わってますよね。でもまだその変化に気づいてない人も多い気がします。社員に力を入れる必要は感じているけど、そのためにもお客さんからもっとお金をもらわないと、と考えてしまう。

安田

どうしても古いルールが染み付いているんですよ。もちろん「お客様に少しでも喜んでもらおう」と考えることはすごく大事なんですけど、今はそれよりも「“社員様”にいかに満足して働いてもらうか」が大事だと思います。


渡邉

確かに。“社員様”が満足した結果、会社全体でお客様に喜んでもらえるサービスが提供できるんですよね。

安田

そういうことです。だから「どうしたらお客さんに喜んでもらえるだろう」って一生懸命考えるのと同じように、「社員が辞めずに働いてくれるためには何が必要なのか」をもっと真剣に考えないと。


渡邉

土日にしっかり休んでもらえるように配慮したりとかね。そういう具体的なアクションをどんどんしていかないといけない。

安田

そうそう。会社のビジョンも大事だけど、それだけでは足りない部分があるし、報酬を上げるにも限界があります。特に中小企業の場合、全員が同じ条件で満足できるわけではないので、それぞれの状況や希望に応じた柔軟な対応が必要になるんじゃないかと思うんです。


渡邉

ああ、確かに。それぞれの社員に合わせた対応というのは、中小企業ならではの強みかもしれませんね。大企業だと全体でルールを作る必要があるけど、中小企業だからこそできる細かな対応もある。それを活かしていけるといいですよね。

安田

そうですね。社員の視点に立って、一人ひとりの事情を理解して対応する。それが働きやすさにつながるし、結果的に会社全体の力になると思います。

渡邉

確かに。人数が少ない分、柔軟性を発揮できる部分もありますね。大企業なら、休暇制度を充実させたり育児休業を延長したりできますが、人手不足が課題の中小企業では、それが難しい場合もありますからね。

安田

そうですよ。例えば共働き夫婦の社員がいて、奥さんが水曜日に重要な会議があるなら、その日は休ませてあげて家事や育児をサポートできるようにするとか。そういう細かい対応が必要なんじゃないでしょうか。


渡邉

それいいですね! そんな配慮をしてくれたら、奥さんの方がその会社のファンになってくれるんじゃないかな。本人が辞めようとしても、奥さんが止めてくれたり(笑)。

安田

あり得るでしょうね(笑)。だから本人のことだけじゃなくて、家族構成とかをしっかり把握して。それも「奥さんがどんな仕事をしていて何曜日が忙しいか」とか、「旦那がどんな仕事に就いていたら喜ぶか」ぐらいまで真剣に考えないと。


渡邉

ふ~む、まさに「家族カルテ」が必要ですね。そういえばワイキューブでも、社員旅行に社員の家族を招待したりしてましたよね。

安田

ああ、やってましたね。でも今はそれでは足りないというか、ちょっと方向性を変えた方がいい気がします。社員旅行だって、行きたい人もいれば行きたくない人もいますから。


渡邉

確かにそれぞれですもんね。転勤も、皆がしたくないかというと、したい人もいるわけで。…となると、例えば「奥さんの転勤先に合わせて異動させてあげる」のもいいかもしれませんよね。

安田

それはいいですね。昇進にしても同じで、管理職にすることで家族にどんな影響が出るのかまで配慮が必要だと思います。「昇進しておめでとう!」なんて、時代遅れも甚だしいですから。


渡邉

確かに! でもまだその感覚が抜けきってない人の方が多い気がします。

安田

まぁそうですね。ともあれ、一番の問題点は経営者の中でやっぱり「お客さんが上」になっていることですよ。つまり裏返せばいまだに「社員が下」だと思っている。もちろんお客さんに対する意識を下げてはいけないんですが、社員に対する意識も高めていかないと。

渡邉

そうか。社員もお客さん同様に大事にするということですね。

安田

そうですそうです。これからはどんどん人が抜けていってしまうわけで。言ったことをちゃんと責任もってやってくれる人なんて、拝み倒してでも働き続けてもらうくらいの感覚じゃないと。

渡邉

給料や働く環境などの条件面も整備した上で、ですよね。

安田

もちろん。どうせ今後は給料を上げていかないといけないんですから、先に上げるか後追いするかのどちらかなんですよ。それならどう考えても、先に上げた方が有利ですからね。

渡邉

ああ、確かに。とはいえ、後追いの方に回りたくなる経営者が多そうですけど。でも考えたら先に上げる方が絶対にお得なわけで。

安田

実際、十数人の規模の会社で平均年収1000万円超を実現している社長さんもいますからね。しかもそれは最低条件だと言い切っている。

渡邉

すごいですね。僕もそれくらいできるように、もっと儲けないといけないなぁ。

安田

というよりは、自然と儲かってしまうような、いわば「濡れ手に粟」ビジネスを考える必要があるでしょうね。

 

 


対談している二人

渡邉 昇一(わたなべ しょういち)
株式会社ランリグ 代表取締役

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1975年、大阪市に生まれる。大学卒業後、採用コンサルティング会社ワイキューブに入社。同社の営業、マーケティングのマネージャー、社長室長及び、福岡などの支店立上げを担当し、同社の売上40億達成に貢献した。29歳の年に株式会社ラン・リグを設立し、今期20期目。述べ900社以上の住宅会社のマーケティング、人材コンサルティング支援と並行し、500店舗以上が加盟するボランタリーチェーン「センリョク」など、VC、FC構築にも多数携わる。また、自身が司会を務め、住宅業界の経営者をゲストに招き送る自社のラジオ番組は、6年間で、延べ300回以上の配信を経て、毎月2万人以上の業界関係者が視聴する番組に成長した。今年5月には、2000人以上のプロ人材とのネットワークを生かした~社長の右腕派遣サービス~【その道のプロ】を本格リリース。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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