2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第329回「大企業の辞めどき」
第一生命グループがまたリストラですか?
はい。50歳以上に対して1000人規模の早期退職をかけてますね。このリストを見てください。第一生命のみならず、すごい数ですよ。
ワコール、ソニー、Casio、シャープ、住友ファーマ?
昔の住友製薬です。
ソニーもですか。900人も。
ソニーはリストラの常連ですよ。
資生堂、リコー、オムロン、コニカミノルタ、東芝、住友化学、日産自動車、まだまだありますね。
そうなんです。
これはどういうことが起きてるんですか。
いやもう単純で「給与が高くて生産性の低い人を間引きしたい」ってことと、この人たちの将来の「退職金債務を早めに落としてしまいたい」ってことです。
20代の採用にはかなり投資してますよね。初任給30万円はもう当たり前で。つまり20代、30代の優秀な人材は欲しいけど、給料に見合わない上の層はいらない。そういうことですか。
おっしゃる通りです。
年功序列や終身雇用は事実上終わってるってことですね。
はい。新卒の給与を変えると、結局は人事制度を変えなきゃいけないじゃないですか。
一番下を上げるってことは既存社員も上げないといけないですよね。
そうなんですよ。そうすると、ただでさえ金食い虫だと思ってたのに、また余計なお金がかかる。「特損で落とせるし、業績もいいし、節税にもなるからリストラしておこう」って。
リストラすると株価が下がったりしないんですか?
黒字リストラって株主受けはいいんですよ。「積極的に生産性が高いことをやってるね」って評価が上がる。
でも日本の場合は解雇規制があるじゃないですか。早期退職希望を募るといい人材も抜けてしまいますよね?
先に絶対にやめてほしくない社員は極秘で抑えにかかります。「安田さんにはぜひ残ってこういうポジションで活躍してほしいので、引き続き第一生命でお願いできますか」なんて言われるわけですよ。
そういう人って何%くらいいるんですか?
同期で1%ぐらいじゃないかな。
え!そんな少ないんですか。100人にひとり?
そんなものでしょうね。選抜も早くなってるし。30代前半で「え。あいつ昇進したの?」「管理職になったの?」なんて。
つまり30代半ばぐらいにはもう決着がついてる?
30代後半には自分がどこまで昇進ができるか見えるはずです。「いや、俺は認めないぞ」って人もいるけど。
その時点で出世のレールに乗っていないと、どこかで肩叩きに合うと。
当然ですよ。
じゃあ30代後半には見切りをつけて転職活動した方がいい?
いや遅すぎますね。30前後までじゃないですか。
30前後?そんなに早いんですか。
遅いぐらいですよ。第一生命の30前後って、ベンチャー企業に行って即戦力性があるかっていうと、ちょっと厳しい。大企業育ちって裁量の小さい仕事しかやってないから。
じゃあベンチャーではなく同じような規模の大企業に転職するんでしょうか。
これがね、総合職の横への転職って一部例外を除いて、あんまりないんです。
じゃあどうなるんですか?
そこでみんな行き止まりになるんです。
え!30歳でもう行き止まりですか。
はい。根本的にキャリアをここで考え直さなきゃダメ。年収ダウンも含めて、自分は何が足りないのか。何を目指すのか。
そこから勉強し直して専門性を磨いていくわけですか?ほぼ未経験ですよね?就職出来ますか?
30歳前後だったら1回はできると思います。基本キャリア採用だけど「なんでもやってもらうよ」というポジション。
どんな会社が採用するんですか?
オーナー系上場企業、もしくは未上場企業で「新卒でいい人材が採れなかった企業」は採るでしょうね。30前後だったらまだポテンシャル採用ですから。
30歳で未経験採用ですか。
はい。広義の第二新卒採用ですね。だから30歳がギリギリ。29までに見切りをつけないと。だけどこれが難しいわけです。ちょうど勘違いしてる年齢なので。給料が高いからチヤホヤされてみんな結婚するし。
奥さんは転職なんて反対でしょうね。
絶対に反対しますよ。「あなたが第一生命に勤めてるから結婚したんだ」って言われるでしょうね。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。