第313回 日本人の手取りはどこまで減るのか?

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第313回「日本人の手取りはどこまで減るのか?」


安田

ようやく給料が増えてきましたけど、手取り金額は下がり続けてますね。これ将来的にはどうなっていくんでしょう?手取りが増えることって構造的にあり得ない気がするんですけど。

久野

それはそうでしょうね。税金も社会保険料も下がる要素がないから。厚生年金は高止まってますけど健康保険料はちょこちょこ上がってますし。

安田

ですよね。

久野

標準報酬の上限も変更しようと議論しています。むしろどんどん上がっていきますよ。そもそもインフレになると税率は上がる傾向がありますから。

安田

物価が上がり、税金が増える状態は、普通のことなんだと。

久野

年収500万円の時に買っていたものと、1000万円になって買えるものが同じだとすると、1000万円の方が税率が高いので。インフレになると上がっていく構造ですね。

安田

なるほど。

久野

つまり収入が増えても買えるものがどんどん減っていくってことですよ。

安田

そうですよね。社会保険料なんて企業が負担してる分も合わせると30%くらいあるし。所得税や住民税も合わせると半分くらいは取られちゃう。

久野

それに消費税もかかってくるわけじゃないですか。

安田

確かに。実質的な手取りが額面の3分の1とかっていう時代が来るかも。

久野

あり得るでしょうね。そこを狙って国も動いてるような気がします。

安田

となると、額面をもっともっと上げていくしかないですよね。

久野

そうですね。

安田

税金や社会保険料を抑えて「手取り額を増やせ」という国民が多いですけど。それって構造的にもう不可能ですよね。75歳まで年金は出しませんとか、医療費の負担率を上げるとかしないと。

久野

正直103万円の壁が変わったところで大して減税にならないんですよ。それよりは医療費負担を増やすとかに切り込まないと。

安田

とはいえ5割負担とかにはできないじゃないですか。限界があるような気がするんですけど。

久野

本当はしないといけないですよね。

安田

そこまでやったら減税できるんですか?

久野

増税はしなくても済むかもしれないです。

安田

もうすぐ団塊の世代が75歳を超えると言われていて。定年後に働いてきた人も75歳を超えると1割ぐらいしか働かなくなるらしいです。

久野

1割では厳しいですね。

安田

働かないで消費するだけの老人がどんどん増えていくわけです。流石にどこかで破綻しそうな気がします。もっと老人にも働いてもらわないと。

久野

そうですね。健康保険対策は間違いなく何か手を打たなきゃいけない。

安田

どこが問題だと思いますか?

久野

たくさん収めている人でもサービスが同じっていうのが1番変だと思うんですよ。

安田

確かに。収入が多い人は絶対に赤字ですよ。100%負担して保険に入らない方が安いです。

久野

だからもっと下の方から取らなきゃいけない。病院に行きまくってる人は課税しないといけない。

安田

すぐに「俺たちを殺す気か?」みたいな話になっちゃうじゃないですか。

久野

政治家がそこに忖度してるから前に進まないんです。あと年金に関しては、もう年金額を減らすしかないんですよ。

安田

75歳までは出さないとか。

久野

これから強烈なインフレが起こってくるわけじゃないですか。その時に年金の金額を据え置くっていうのが1番いいと思います。そうすると実質の支払いは減るので。

安田

なるほど。減った分は働いて稼いでもらうと。

久野

それと社会保険料の最低ランクは見直さないとダメ。個人負担2900円で健康保険が受けられるんですけど、めちゃめちゃ安くないですか。

安田

安いですね。でも保険というものは稼げない人を守るためにあるから。仕方がない気もします。

久野

それもあるんですけど最低ランクがあまりに低い。だから色々問題になるんだと思います。

安田

アメリカのように「お金がないやつは自分でなんとかしろ」ってことでしょうか。

久野

そこまで行かなくてもいいので、もうちょっと最低金額を上げていかないと。維持できなくなりますから。

安田

それにしても日本人は我慢強いですよね。これだけ税負担が増えても黙って払い続けるんですから。

久野

本当に。海外だったら暴動が起きてますよ。インフレとか、手取りが減るって、政治的なリスクがめちゃくちゃ大きいんです。

安田

政権が転覆したりしますもんね。

久野

はい。だから多くの国家はめちゃくちゃ気をつけてるらしいです。日本だけでしょ。こんなに油断して大丈夫なのは。

安田

国民が我慢し続けている限りずっとこの状態が続くんでしょうね。

久野

本気で「国家を変えたい」っていう総理が出てこないと。「もう自分の代で終わらせる」「後ろ指さされても構わない」と覚悟して。

安田

そんな政治家は絶対に出てこないですよ(笑)

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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