第138回 「石積み」が若い世代に選ばれる理由

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第138回 「石積み」が若い世代に選ばれる理由

安田

日本人は昔から、虫の声や風に揺れる葉の音に「風情」を感じる、豊かな感性を持っていましたよね。


中島

そうですね。虫の鳴き声も日本人には心地よく聞こえると言いますよね。

安田

ええ。ただ最近は、そういったものを雑音と感じてしまう人も増えていると聞きます。そんな中で、庭という空間は「忘れかけられた四季の音」を思い出させてくれる場所じゃないかと。


中島

ああ、同感です。音もそうですし、庭に植えた木に実がなると鳥が自然と集まってくるんですが、そういう光景にも風情を感じますよね。

安田

いいですねぇ。鳥のさえずりを聞きながら過ごす休日なんて最高ですよ。ウグイスとかメジロとかね。でも庭の手入れのことを考えると、嫌がる人もいるんですかね。


中島

うーん、鳥が実を食べてフンが落ちるから嫌だという方も中にはいます。虫に関しても、毛虫がつく木は嫌だというお声はよく聞きますし。まったくつかない木はないのでなかなか難しいんですが。

安田

まあ、毛虫は確かに嫌かもしれない(笑)。でも鳴く虫、コオロギやキリギリスみたいな秋の風物詩のような虫はいいと思いますけど。


中島

そちらは特に嫌だと言われたことはないですね。ある程度の植栽と下草があれば、自然に来るようになると思います。

安田

へぇ。夕方に虫の鳴き声を聞きながらビールを飲む、なんてのが似合う庭ですよね。ただそういう情緒が最近失われている気がして。


中島

シンボルツリー1本だけでは難しいですが、ある程度ボリュームのある植栽と下草があれば、虫は自然に集まってきます。

安田

そういう風情を感じる感性って、日本のものづくりやクリエイティブにも関わってくる気がするんです。最近の若い世代でそういう庭を求める方はいるんでしょうか?


中島

それでいうと、30代くらいの方で石積みをリクエストされることが増えてきましたね。風情を求める気持ちが、そういう形で現れているのかもしれません。

安田

そうなんですね。石積みというと高そうなイメージがありますが、実際はどうなんですか?


中島

実はL字型のコンクリート壁より安くなることもあるんです。「崩れ積み」といって土の上に積んでいくだけなので、基礎工事が不要なんです。

安田

へ〜、それは意外ですね。それが知れ渡れば「実はやってみたかった」なんて依頼も増えそうです。でもただ積んでいくだけだと、地震で崩れたりはしないんですか?


中島

東日本大震災のとき茨城にいたんですが、崩れ積みはほとんど崩れなかったんです。むしろコンクリートブロックの方が倒れていたくらいで。

安田

へぇ! 逆に丈夫なんですね。そういえば以前よく見かけた野面積みとは違うんですか?

中島

野面積みは石を加工して積むこともあるんですが、崩れ積みは石を加工せずにそのまま積み上げていくんです。しかも基礎がなく、裏から詰める「裏込め」もすべて土で、コンクリートを使わないんですよ。

安田

裏は土なんですか! 面白いなぁ。コンクリートで塞がないから、石の隙間から草が生えてきたりして、虫も集まりやすそうですね。

中島

そうなんです。僕の自宅でも石積みの間から木を出しているんですが、草花も育ちやすいですよ。

安田

石の間から木が出ているって、すごく絵になりそうです。コンクリートとは全然違う庭になるんだろうなぁ。

中島

そうですね。昔の日本の庭に近い雰囲気が作れると思います。石積みがいいという若い方が増えているのは、日本の風情が見直されてきている証かなと思うと嬉しいですよね。

安田

本当ですね。安くて丈夫で、しかも美しい。石積みという伝統的な技術が、今の若い世代の感性やライフスタイルにも馴染んでいる。そんな面白い現象が、中島さんの庭作りから始まっている気がします。


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

Facebook

高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

感想・著者への質問はこちらから