第65回 新卒一括採用は今後も続きますか?

この対談について

「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。

第65回 新卒一括採用は今後も続きますか?

安田

今日は新卒採用について聞きたいんですけどね。今は20代の奪い合いみたいな感じで、どんどん初任給が上がってきてるじゃないですか。でも新卒の子って3年くらいで辞めちゃったりするでしょう。


西崎

そうでしょうね。売り手市場で転職も有利になっているし、長く定着してもらうのはどんどん難しくなっている。

安田

そうそう。企業が研修だセミナーだと一生懸命教育して、そろそろ戦力になりそうだってところであっさり転職されちゃう。そうなると労力が無駄になるどころか、教育コストの分損しちゃうわけでしょ。


西崎

そういうこともあってか、最近は中途採用メインに切り替えた企業も多いみたいですね。イチから育てるんじゃなく、ある程度育った状態の人を呼んでくるという。

安田

当然そうなってくると思うんですが、その中途の人だってね、どこかの会社で教育を受けてきているわけですよ。名刺の渡し方やらスーツの着方から、手取り足取り教えてくれた会社がいる。それを思うと同情してしまいます(笑)。


西崎

笑。日本は新卒採用してゼロから教えるっていうのが前提になってますもんね。まぁ今後はだんだん変わっていくんでしょうけど。

安田

ちなみにトゥモローゲートさんはそのあたりどうしているんです?


西崎

うーん、僕らはもう「新卒」っていうカテゴリ自体をやめちゃってますね。新卒も中途も関係なく、なんなら高校生にも内定出しちゃう、ってスタイルです。

安田

へぇ! 高校生も。


西崎

ええ。うちは頻繁に会社説明会をやっているんですが、高校生の参加もけっこうあるんですよ。逆に40歳以上のベテランの方が来てくれたりもして。

安田

は~、それはおもしろそうですね。ちなみにさっき出てたような「新卒の教育」問題について、トゥモローゲートさんはどうしているんです?


西崎

それでいうとインターンを結構やってますね。内定を出した後、学生の時期にアルバイトのような形で働いてもらうので、入社する頃にはある程度のことができるようになっていて。

安田

なるほど、それはいいですね。ちなみにちゃんと「名刺の渡し方」みたいなことから教えてあげるわけですか。


西崎

ええ。そういう基礎から教えていって、一人で営業行けるくらいまでにします。実際、大学2年生が名刺持って営業出たりしてますよ。

安田

は〜、すごいですね。入社時点で2年目3年目くらいのレベルにはなってそうです。ところでちょっと話は変わりますけど、学生さんの面接をしたときに「御社は私をどう育ててくれるんですか?」みたいなスタンスの方がいるじゃないですか。そういうのってどう思います?


西崎

う〜ん、まぁ正直、ちょっと違和感を感じてしまいますね。

安田

そうですよね。なぜ育ててもらうことが前提なんだ、みたいな。実際そういう方が来たら不採用ですか。


西崎

うちには合わないと思うよ、って割とハッキリ言っちゃいますね。時代の流れ的には「そういうタイプの子も受け止めていかないと」って感じなのかもしれませんけど。

安田

でも正解だと思いますよ。だって今の子たちって、一社目で基礎を教えてもらって、そのスキルを持って転職するのが当然って感覚なんですよ。経営者からしたら「キミは育ててもらった義理も感じないのか」って話で(笑)。


西崎

笑。ともあれ、もうそういう時代なんでしょうね。逆に言えば、企業側もそこまで新卒の一括採用にこだわらなくていいんじゃないかなと。

安田

そうですよね。実際「新卒の育成なんて馬鹿らしい。やめたやめた!」って会社が増えてくると思います。そもそも給与払って教育してあげるのなんて、日本くらいなものですからね。海外のインターンなんて無給が当たり前だったりするわけで。


西崎

そうですよね。だからやっぱり入社する段階である程度戦力化されている状態を目指すべきだと思います。

安田

それが正しい形ですよね。就職活動に2年も3年もかけるんじゃなくて、その時間はスキルアップに充てて、そこで身につけたスキルを武器にいい会社に入社すればいい。


西崎

そうそう。学生時代のアルバイトもね、ビジネススキルが身につく仕事をした方が絶対にプラスじゃないですか。同じ時間働くなら、やりたいこととか入りたい業界にリンクした仕事をした方がいい。

安田

本当にそうですよ。大学生って全く社会人スキルと関係ないようなバイトをしてますけど、それならトゥモローゲートさんのインターンに行った方がよっぽど将来のためになる(笑)。


西崎

ありがとうございます(笑)。もちろん人によるとは思いますけどね。でも単純にもったいないですよ、時間が。

安田

同感です。そしてそれは、新卒一括採用して律儀に教育し続けている企業にも言えると思うんですよね。もう少しシビアに考えたほうがいいんじゃないかなと。


西崎

まぁでも、この文化はなかなかなくならないとは思いますけどね。安田さんが仰るようなリスクも当然ありますが、一定期間にまとまった人数を採用できる仕組みって、今もう新卒くらいしかないので。

安田

ああ、なるほどね。大手企業ならそれでもいいのかもしれませんね。何十人も採用して半分くらい残ればいいか、という感じで。でも中小企業だと採用しても十人くらいでしょうし、もっと定着してもらわないと困っちゃうんじゃないですかね。


西崎

そうでしょうね。なのでうちは、今後も新卒採用自体はやっていきますけど、先ほど話したようにインターン前提で考えてます。

安田

ちなみにインターンの時期にどれだけ成長できたかで、入社時の給与は変わるんですか?


西崎

ええ、成果に応じて変えてますね。

安田

へえ、じゃあもしかしたら初任給が50万円の新卒、みたいな子が出てくるのかもしれませんね。企業側からしたら払うのが大変そうですけど(笑)。


西崎

いやいや、むしろそれくらいの額を払えるくらいの子に来てほしいですよ。それ以上の成果を上げてくれるってことなんで。

安田

ああ、そうかそうか。そう考えるとWin-Winですね。これを読んでいる学生さんも、興味があればぜひトゥモローゲートさんの説明会に参加してみてください!

 


対談している二人

西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社
代表取締役 最高経営責任者

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1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数19万人とSNSでの発信も積極的に展開している。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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