第2回 最低レベルの健康「ミニマムヘルス」とは

この対談について

健康人生塾の塾長にしてホリスティックニュートリション(総括的栄養学)研究家の久保さんと、「健康とは何か」を深堀りしていく対談企画。「健康と不健康は何が違うのか」「人間は不健康では幸せになれないのか」など、様々な角度から「健康」を考えます。

第2回 最低レベルの健康「ミニマムヘルス」とは

安田
前回は、健康の基準は人それぞれ、つまり「健康には幅がある」というような話でしたね。

久保
ええ。私も健康というカテゴリーでいろいろ学ばせてもらっている中で、特に「ホリスティックニュートリション」即ち、総括的な栄養学というものがメインなんですね。
安田
総括的な栄養学ですか。

久保
ええ。その学問の中でも当然「健康って何だろう」ということを考えるわけですが、方向として「オプティマルヘルス」を目指しましょうと。
安田
オプティマルヘルス。なんだか難しい言葉が次々出てきますね(笑)。それは一体どういうものなんですか?

久保
簡単に言うと、「健康の最高レベル」ということです。健康というものに例えば10段階があるとすると、その最高レベルを目指しましょうという。
安田
最高レベルの健康……やっぱり筋肉隆々じゃないとダメってことですか?

久保
必ずしもそういうことではないんですが。要は、「自分の体のパフォーマンスを最高に発揮できる状態」を目指すということですね。
安田
なるほど。でも、「どんなパフォーマンスを発揮したいか」は人によって違いますよね。プロ野球選手だったら速い球を投げたりたくさん打てること。マラソン選手だったら42.195kmを早く走ること。

久保
仰るとおりです。冒頭安田さんが仰った「健康には幅がある」という話で、オプティマルヘルス、最高レベルの健康も、人によって状態は変わってくるということです。
安田
なるほどなあ。でも、「最高レベルの健康」があるってことは、「最低レベルの健康」もあるんじゃないですか?

久保
そうなんです。10段階中の10が「オプティマルヘルス」だとすると、2とか3あたりの段階を「ミニマムヘルス」と言うんです。興味深いのは、日本人の多くが考える健康って、この「ミニマムヘルス」なんですよ。
安田
ああ、つまり、別に絶好調ってわけでもないけど、お医者さんで病気とは診断されないっていう。

久保
そうそう。「病気じゃないから健康」っていう考え方です。でもそれは「ミニマムヘルス」なんですよ。その先にもっと段階がある。だからホリスティックニュートリションでは「オプティマルヘルスを目指そう」と言うわけです。
安田
おもしろいですね。ところで久保さんは元ファンケルの社員さんで、サプリメントを扱っていたんですよね。で、「ちゃんとした食事をとっていればサプリメントなんて必要ない」って言う人と、「現代社会は栄養バランスが悪いからサプリメントが必要」って言う人、両方いるじゃないですか。

久保
いますね。まあ、どちらも一理あるとは思います。
安田
プロの目から見て実際どうなんですか? だって、食事って意味で言えば、昔より今の方が明らかに豊かなわけでしょう? それでなんでサプリメントが必要なんだって話になりませんか。

久保
先ほどの「オプティマルヘルス」「ミニマムヘルス」の話にも絡むんですが、前者、つまり「食事で全部まかなえる」という人が言う健康って、「ミニマムヘルス」を指していたりするんですよ。
安田
ああ、なるほど。「必要最低限は食事でまかなえる」ってことですね。

久保
ええ。たとえばビタミンCで言うと、厚労省が言う1日あたりの推奨摂取量は100mgなんですけど、これは食事で充分だったりします。昔、それこそ大航海時代の海賊なんかの間では、「壊血病」というビタミンC欠乏症が流行ったんですよ。
安田
へえ。つまり普通の食事では最低限のビタミンCが摂取できなかったと。

久保
そういうことです。彼らは長い期間を海の上で生活するので、食事はどうしても火の通ったものや乾燥したものになる。生野菜や果物とかを食べる機会が極端に少なかったわけですね。
安田
それで病気になっちゃうわけですね。でも現代なら、病気にならない程度の健康、ミニマムヘルスであれば食事でまかなえると。

久保
そうそう。一方で、「ビタミンCは1日2000mg取らないといけない」と言う学者さんもいるわけです。現代はストレス社会で、昔よりもたくさんのビタミンCが必要なんだというわけです。
安田
ストレス社会だとなぜビタミンCが必要なんですか?

久保
ストレスで炎症が起こったりすると通常よりビタミンCを使うんですよ。免疫機能により、体が異常を検知して白血球が増えるわけです。で、その白血球がビタミンCをすごく消費するんですね。
安田
なるほど。つまり、通常の状態であれば1日100mgで充分なんだけど、ストレスがかかった状態だともっとたくさん必要になると。

久保
ええ。なのでそういう場合は食事だけだと追いつかないのでサプリメントで補いましょうと。そういう意味では両方とも一理あるんですよ。
安田
久保さんとしてはどちらなんですか? サプリメントは必要? それとも食事で充分?

久保
私自身は、もちろん食事というものはベースとして非常に重要だと思っていますが、現代社会で「オプティマルヘルス」を目指す上では、サプリメントは必要だと考えています。
安田
なるほど。うーん、でも、やっぱり違和感あるんですよ。いくらストレス社会とは言え、やっぱり昔の方が栄養的には偏っていたはずでしょう? 実際、いわゆる餓死みたいなことはほとんどなくなっているわけだし。

久保
そうですね。なのでカロリーだけの問題じゃないんでしょうね。燃料をどれだけ大量に入れても、それを燃やすためのオイルとか、部品とか、電気とか、そういう環境が整っていないとエネルギーは消費できないと。
安田
理屈はわかるんですけど、昔の日本人と今の日本人で、昔の方がよかったとは思えないんですよ。

久保
1つ例を上げるとすると、玄米食がありますね。玄米は白米よりビタミンもミネラルも豊富なんです。でも、現代で玄米食べている人なんてそう多くないでしょう?
安田
99.9%白米でしょうね。

久保
ですよね。でも白米にする時に捨ててしまう部分、つまり糠(ぬか)の部分にすごく栄養があるわけです。それこそ、米の栄養の99%は糠にあると言われている。
安田
なるほど。ほとんどの栄養素を取り去ったものが白米だと。

久保
漢字で書くとすごくわかりやすいんですよ。米偏に白と書くと、どういう字になります?
安田
米偏に白……ああ、粕(かす)ですね。

久保
そう、カスです。一方で、糠という字は米偏に健康の「康」と書く。そういう意味で、昔の人のほうが健康だったとも言えるわけです。
安田
最近は肥満とかメタボとか、そっちの問題もありますしね。

久保
そうなんです。興味深いのは、1925年あたりの日本人と現代の日本人、摂取カロリーで言うとあまり違いはないっていうデータがあるんです。
安田
へえ、つまり、同じカロリーを取っているのに、昔の人の方が健康だった。

久保
ある意味そう言えるということですね。同じカロリーでも、栄養素の内訳が違うんでしょう。そういう意味で、サプリメントで調整するということも、「オプティマルヘルス」を目指す上では大切かなあと思います。

 


対談している二人

久保 光弘(くぼ みつひろ)
健康人生塾 塾長/ホリスティックニュートリション研究家

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仙台出身、神奈川大学卒。すかいらーくグループ藍屋入社後、ファンケルへ。約20年サプリメントの営業として勤務後、2013年独立し「健康人生塾」立ち上げ。食をテーマにした「健康人生アドバイザー」としての活動を開始。JHNA認定講師・JHNA認定ストレスニュートリショニスト。ら・べるびい予防医学研究所・ミネラル検査パートナー。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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