第86回 「四季を感じる暮らし」の先生として、世界に発信?

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第86回 「四季を感じる暮らし」の先生として、世界に発信?

安田

以前のお話で、日本人は庭に「ユーザビリティ」、つまり使いやすさを求めるって仰ってましたよね。ゆったり車が2台停められるかとか。逆に海外はどうなんですか? 重視する所が違うんでしょうか。


中島

そうですね。例えば中国で庭を作った時は、「車を視界に入れない」っていうコンセプトでした。だから駐車場は地下に設けて、庭から車が一切見えない設計になっていて。

安田

へぇ、車が見えると「かっこ悪い」って感覚なんですかね。でも駐車場を丸ごと地下に作るなんて相当なコストじゃないですか。しかも土地は余ってるはずなのに。


中島

富裕層の人にとっては、お金をかけてでもそういう部分にこだわりたいんでしょうね。実際、周囲を見渡しても車が一台も見えないような広々とした雰囲気で完成しました。

安田

なるほどなぁ。私は昔アメリカに住んでたことがあるんですけど、あちらは芝生の庭が主流ですよね。芝刈り機がどの家庭にもあって、子どもがバイト代わりに芝を刈ったりして。


中島

そういう文化が根付いているんでしょうね。「庭=手間を掛けてでも維持するもの」っていう前提があるというか。

安田

日本だと「手間を減らすこと」が前提になるけど、アメリカでは「手間をかけて楽しむ」文化があるんですよね。野球場も天然芝が主流だし、屋根付きの球場でも芝を守るために開閉式にしていたりしますから。


中島

確かにそうですね。そういう意味では海外の方が「自然の心地よさ」を重視しているのかもしれません。

安田

そうなんでしょうね。それに比べると今の日本はちょっとさみしい感じですよね。庭もどんどん人工的になっていっているというか。


中島

そうかもしれません。今の日本ではアルミで囲ったような外構が流行っていて。「庭」というより「エクステリア」ですね。アルミってけっこう高いんですけど、「スタイリッシュ」な印象で若い人に人気なんです。

安田

まぁそれはそれで一つの好みなんでしょうけどね。でも私のような古い人間からすると、本来の庭とはちょっと違う方向に行ってる気がしちゃうんです。


中島

デザインとしては格好良いんですけどね。でも確かに、自然との調和とか四季を感じるような要素は少ないですね。

安田

そうなんですよ。前回も出ましたけど、そういう部分に価値を感じるのはもう、日本人ではなく外国人なのかもしれない。日本もこれからは外国人が1割を占めるようになると言われてますし、やっぱり外国人向けの提案に注力していくべきな気がします。


中島

なるほど。実際外国人の方に受け入れてもらえたらすごく嬉しいです。

安田

絶対すぐファンがつきますよ。ちなみにもし外国の方から「庭を作ってほしい」と相談されたら、どんな提案をします?


中島

そこは基本的には日本の方と変わりませんね。まずはじっくりヒアリングして、その人の暮らし方や建物とのバランスを見ながら提案します。そのうえで、できれば日本の四季を感じられるような庭にしたいですね。

安田

松とか桜、モミジなんかはどうですか? ザ・日本って感じですけど、外国の方にはイメージしやすくて人気も高そうです。

中島

確かにベタではあるけど、好まれると思います。でもあえてそういう定番を外して提案するのも面白い気がしますね。より奥深い四季の魅力を伝えるには、そういう工夫も必要かもしれません。

安田

は〜、いいですね。中島さんが「四季を感じる暮らし」の先生として、そういう文化を教えていくというか。


中島

海外に向けて、そういうことを発信していくのもいいですね。ちょっと考えてみようかな。

安田

すごくいいと思います!海外の人って広々とした庭やゆったりした暮らしを好む人が多いですからね。

 


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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