第348回「女子大工学部の裏事情」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第347回「三井住友銀行が導入した社内FA制度」

 第348回「女子大工学部の裏事情」 


安田

工学部を設置する女子大が増えているそうですが、これはどういう理由ですか?

石塚

そもそも理工系って女子がめちゃくちゃ少ないじゃないですか。

安田

はい。そういうイメージです。

石塚

そのイメージを誰が作ってきたかっていうと、男ですよ。

安田

なんとなく女子は理工系が好きじゃないと思っていました。

石塚

そう。女子は数学が弱いとか。思い込んでる。

安田

確かに先入観がありますね。女子は文学部とか英文学部が好きなイメージ。

石塚

じつは僕、男なんですが数学が不得意で。

安田

男でも不得意な人っていますよね。

石塚

そして僕の周りには昔から理系女子が多くて。だからそういう先入観がないんですよ。

安田

言われてみれば私の娘も理系で物理専攻です。だけど女子大に工学部を作るほどニーズがあるんでしょうか?

石塚

女子大は定員割れの危機をすごく感じていて。積極的にもっと理系女子を取り込もう、そして定員割れを防ごう、という流れだと思います。

安田

そんなニーズがあるんですか?

石塚

いま女子大離れがものすごくて。

安田

女子大離れ?

石塚

たとえば津田塾とか、お茶の水女子とか、奈良女子大とか。名門じゃないですか。

安田

はい。名門ですね。

石塚

今ものすごく偏差値が下がっているんですよ。かつて偏差値60を超えていた名門が軒並み50を切っていて、30台という学校もあります。

安田

なぜそんなに下がってしまったんですか?

石塚

成績のいい女子がみんな総合大学に行きたがるから。

安田

なんと。そうなんですね。

石塚

そう。女子が女子大に行かなくなってる。

安田

工学部を設置することでその流れが変わると思いますか。

石塚

変わる可能性はあると思います。入りやすいから。男子と入試で数学や物理を競わなくてもいいじゃないですか。

安田

なるほど。

石塚

質の高い教育がそこにあるなら、女子大の理工系ってありがたいわけです。

安田

ちなみに工学部出身の女子って就職は有利なんでしょうか。

石塚

めちゃくちゃ有利です。メガバンクも理系ばっかり採用してるし。

安田

それは女子でもOKなんですか?

石塚

もちろんOKです。「君、理工系なの?ちょっとこっち来てください」っていう時代ですよ。

安田

「女子はお茶汲み」なんていう時代はもうとっくに終わっているわけですね。

石塚

そういう企業はもう死んでくださいって感じです。それでなくても銀行、保険、証券は採用が少ない。

安田

昔は人気業界でしたけどね。

石塚

20年ぐらい前は金融が女子大生の人気就職先でした。一般職採用で花嫁候補みたいな。

安田

そういうイメージです。

石塚

だけど今は就職先第1位ってIT業界ですから。

安田

なぜITが人気なんですか?

石塚

スキルを身に付けさせてもらって、自分の技術でずっと働いて食べていけるから。

安田

なるほど。今は共働き前提で結婚しますからね。

石塚

おっしゃる通り。だから女子大の工学部って良い狙い目なんですよ。

安田

単なる思いつきじゃないってことですね。

石塚

よく考えられていると思います。女子大には女子の求人しか来ないし。つまり就職でも男子とバッティングしないわけですよ。

安田

女子大工学部の採用枠みたいなものがあると?

石塚

はい。本気の女子採用。女子大工学部は非常に良い戦略です。

安田

女子大の文系はどうなっていくんでしょうか。

石塚

難しいでしょうね。文系でキャリアを積むなら教育学部なんですけど。

安田

つまり学校の先生?

石塚

そう。キャリア積むなら学校の先生が1番だったわけですよ。だけど仕事はキツイし休みは少ないし稼げないし。キャリア思考の女子は工学部に流れるでしょうね。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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