第100回 月5000円で手に入る「庭のある暮らし」

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第100回 月5000円で手に入る「庭のある暮らし」

安田

最近は「木は手間がかかるから嫌だ」という声も多いと聞きます。でもそれって昔も同じだったわけじゃないですか。なぜ昔の人はあえて手間のかかる木を植えていたんでしょう?


中島

理由の一つは、人件費の安さだと思いますね。剪定のために庭師を呼んでも大したお金がかからなかった。

安田

ああ、なるほどなるほど。でも、安いとは言え維持費はかかっているわけで、当時の施主さんも「庭は手間がかかるものだ」と認識していたはずですけど。


中島

そうですね。ある程度手間がかかることはわかった上で植えていたと思います。むしろ「手をかけて庭を維持すること」自体が誇りだったというか。

安田

ああ〜、なるほど。確かにキレイで広い庭を見ると「羨ましい」と思った記憶があります(笑)。近所にそういう庭があって、年に何回か植木屋さんが来て、ハサミでキレイに刈ってました。


中島

両手ばさみで、職人さんが3~4人がかりでやっていた時代でしょうね。1本1本手作業で刈っていくので、1日では終わらないことも多かったらしいです。

安田

そうそう。朝から晩まで作業して、途中でお茶を出したりして。まさに「おもてなし」の雰囲気でした(笑)。今はそんな光景も減ってしまいましたけど。


中島

でも今でも年配の方のお宅に行くと、お茶やお菓子を出してくださって一緒に休憩することがありますよ。すごく丁寧に接してくださって。

安田

いいですねぇ。ともあれ時代は流れ、今は「木は手間がかかるから植えない」という風になってきていると思うんです。何が変わったんでしょうね。


中島

私が聞いたところだと、「木は大変だからやめとけ」と親御さんから言われて育った、みたいな話も多いそうです。それこそ祖父母の代に作った庭を親が引き継いで、その維持で苦労したパターンというか。

安田

ああ、うちの実家もまさにそれでした! 昔は庭にたくさん木があったんですが、建て替えたときに全部なくして、植木鉢だけになりました(笑)。


中島

やっぱり大変だったんでしょうね(笑)。でも僕としては次の世代にも「庭があってよかった」と思ってほしいんです。だからなるべく少ない手入れで、四季が感じられる空間を残せたらいいなと。

安田

ふむふむ。そうすると、昔のまま残してもダメなんでしょうね。手間やコストを考えると、現代の庭はもっとコンパクトで、維持しやすい方向で考えないと。


中島

仰るとおりです。direct nagomiでは、60坪〜70坪であれば、お手入れを1日3万5000円で収められるように工夫しています。それを年2回やらせていただければ、お庭をいい状態で維持できますので。

安田

なるほど。それなら月5000円ちょっとで、四季のある庭が楽しめるわけですね。しかも木が伸び放題にならず、手入れの行き届いた庭になる。サブスク的なサービスにするのもよさそうですね。月5000円で、6月と年末に1回ずつ職人さんが来てくれるような。


中島

ああ、おもしろいですね。「そろそろ剪定の時期ですよ」なんて連絡もらえたら、普段気にしていなくていいから気持ちも楽ですし。

安田

旅行中に来てもらってもいいんですもんね。いちいち在宅しなくても済むなら、さらにハードルが下がってありがたいです。ちなみに剪定って「見た目」だけのためにやるものなんですか?

中島

もちろんそれも重要ですが、実は木が太ってしまうことを防ぐ目的もあるんです。木は定期的に切って養分の流れをコントロールすることが大事でして。

安田

へぇ、なるほど。葉っぱがついてると、その分養分が回って木が成長してしまうわけですね。


中島

そういうことです。そういう意味では、そもそも成長の遅い木を選ぶのもポイントですね。成長の早い木は、剪定してもどんどん大きくなっちゃいますから。

安田

なるほど。そうやって木を選んで、剪定のタイミングを工夫すれば、今の暮らしに合った素敵なお庭が作れると。家の中から緑が見えて、ちょっと庭に出るだけでも気分が変わりますもんね。

中島

ええ。そういう豊かな時間を作るお手伝いができれば嬉しいですね。

 


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

Facebook

高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

感想・著者への質問はこちらから

CAPTCHA