第118回 政治家の本音はどこにある?

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第118回 政治家の本音はどこにある?

安田
今日は「政治家」という存在について考えてみたくて。日本の政治家ってとかく批判を受けやすいじゃないですか。日本の将来のために税金を増やすといえば怒られ、現金で支給しようとすればまた怒られ…。

鈴木
何やっても怒られますよね(笑)。ちょっとかわいそうになるくらい。
安田
そうなんですよ(笑)。選挙で当選することしか考えていないとか、自分の利益になることでしか動かないとかね。でも実際、彼らが国民の幸福をまったく考えていないということはないと思っていて。

鈴木
そうですねぇ。少なくとも政治家を志した時には、日本の将来について真剣に考えていた人も多いんじゃないかな。まあ、長く続ける過程でその情熱は薄まっていってしまうのかもしれないけれど。
安田
なるほど。政治家人生が長くなればなるほど、情熱が減ってくると(笑)。

鈴木
そうそう(笑)。まあ政治に限らず何でもそうですけどね。現実に直面していくことで理想と現実の間にギャップが生まれてくる。さらに言えば、冒頭話していたように何をやっても叩かれちゃうわけでしょ。そりゃ嫌にもなりますって(笑)。
安田
本当ですよ(笑)。大して高い報酬でもないのに「政治家は金を取りすぎだ」って国民全員から言われますし(笑)。政治家以外の仕事に就いたらもっと稼げるような優秀な人、いっぱいいますからね。

鈴木
そうでしょうね。ちなみに安田さん、政治家になろうと思ったことはないんですか。
安田
…実は会社が潰れた時に、ちょっと考えたことがあります(笑)。

鈴木
そうなんですか!(笑) それはどうして? 「俺がこの日本を変えてみせる!」って思ったんですか?
安田
いやいや(笑)、政治家になりたかったというよりも、1回の選挙で過半数を取れたら面白いだろうなと思いまして。

鈴木
え、どういうことですか?
安田
今考えると子どもっぽい考えなんですけど、日本中の経営者からお金を集めて、すべての選挙地に候補者を立てるんです。そうすれば議席の過半数を取ることも可能なんじゃないかって思って(笑)。政党名も「与党」っていう名前にするところまでは決めていました(笑)。

鈴木
負けても「与党」なわけか(笑)。面白い(笑)。
安田
笑。とは言え、会社が潰れた後に奥さんから「貴方が何をやってもついていくけれど、政治家だけはやめてちょうだい」って言われましたので断念しました(笑)。まあ私自身も政治家には向いてない自覚がありますけどね。声も小さいし自己主張もほとんどしないし、リーダーシップもないので。一番政治家に向いていないタイプです(笑)。

鈴木
笑。どちらかというと安田さんは、表に立つよりも「参謀」として裏から選挙活動を考えるタイプですもんね?
安田
そうですね(笑)。ちょっと話を戻しますと、本当に国や国民の幸福を100%考えている政治家もいるだろうと思う反面、それはせいぜい2割程度しかいないと私は思うんです。というのも、民主主義の日本では、「各地域の代表」が国政を決める。つまり選挙を勝ち抜かなければならないわけですよ。

鈴木
そうですね。そうなるとどうしても、自分の選挙区をおろそかにできない。結局自分の地元にお金を回したり仕事を回したりしないと選挙に勝てない、ってことになっちゃう。
安田
そうなんです。そもそも構造的に「自分の選挙基盤はそっちのけで国のためにすべてを捧げます」って動きができないわけですよ。

鈴木
いわゆる「部分最適」のジレンマなんでしょうね。それにしても政治家を目指す人って、相当な勇気がありますよね。政治家になった途端、公人となって、プライベートはある意味一切なくなるわけでしょ?
安田
本当ですよね。それほどの勇気と情熱を持ってやっと政治家になったのに、大体の人がプライベートで問題を起こし、国民から叩かれて、辞任に追い込まれてしまう…(笑)。

鈴木
確かにそのイメージは強いかもしれない(笑)。でも例えば田中角栄さんなんて、今でも地元で愛されているし多くの政治家から尊敬されていますけど、プライベートもなかなかのものだったでしょ?(笑) でもそれを叩かれるようなことなんてなかった。時代の変化なのかもしれませんけど、今は大変ですよ。
安田
そうですねぇ。そういう突然無職になるリスクまで受け入れて政治家になったのに、国民からはボロカスに言われるわけですから(笑)。「もう自分の利益のためだけにやらせてもらう」ってなっちゃうのも仕方がないのかも。

鈴木
そうかもしれない(笑)。まぁ僕としては、やることさえやってくれれば聖人君子でいてもらう必要はないと思いますけどね。議員が不倫していたとかよく報道されますけど、そんなこといちいち目くじら立てて言うことなんかな〜とは思います(笑)。

 


対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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