第345回 社員の不労所得を増やしてあげる

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第345回「社員の不労所得を増やしてあげる」


安田

確定拠出年金の上限が変わるんですか?

久野

ほぼ決定ですね。2027年の1月から変更となる予定です。

安田

どれくらい変わるんですか。

久野

企業型が5万5000円、個人型が2万3000円だったところが、企業も個人も6万2000円までOKになります。私は企業型をお勧めしています。

安田

それはどういう理由で?

久野

企業型は基本的な経費を企業が負担してくれます。それに個人型って面倒くさがってみんなやらないんですよ。

安田

両方やるという選択肢もあるんですか。

久野

可能ですけど、合計金額が変わらないのであまり合理性はないです。

安田

なるほど。まあ企業でやってくれるなら、そっちの方がお得ですよね。

久野

中小企業は入っていない会社がまだ多いんですけど。可能なら上限まで企業でやるのが理想だと思います。会社によっては上限が決まっているケースもありますけど。

安田

上限が決まってる?

久野

要は会社が全額出してくれるケースですね。毎月1万円と決まっている場合とか。「残りの5万2000円分を自分で出します」という組み合わせは可能だと思います。

安田

企業としても社会保険料が下がるメリットがありますよね。なぜ入っていない会社が多いんですか?

久野

経営者がメリットを知らないケースも多いですね。まだ2%ちょっとです。

安田

そんなに少ないんですか。じゃあ仕方なく個人でやっている人が多い?

久野

多いですね。意識が高い人ほどそんな感じです。大企業から中小企業に転職してくる時に「え。ないんですか?」みたいな雰囲気になったり。

安田

採用力にも直結しそうですね。

久野

いい人材、よく勉強している人材を採ろうと思ったら必要です。あとは定着にも影響します。ちゃんと運用することで労働収入より増えることもあるので。

安田

私もどんどん増えていってます(笑)

久野

そのためには金融教育が必要で。企業型を導入する場合、企業は金融教育を一緒にしていくことをお勧めしています。

安田

大事なことですよね。

久野

やってあげた方が定着に繋がります。お金が増えたら会社に感謝するので。

安田

その企業型の上限が月額6万2000円になると。

久野

そうですね。年間で8万4000円上がります。

安田

個人的にはもっと上げて欲しいですけど。

久野

これからさらに上がっていくと思います。インフレも加味して上がっていきますので。

安田

国として上げたくない理由ってあるんですか?

久野

単純に税収が減っちゃうので。

安田

社会保険も減りますしね。ちなみに加入する会社は増える傾向にはあるんですか?

久野

はい。どんどん増えています。うちで直接の導入支援をしているところは1200社ぐらいですが、パートナー経由を含めると5000社くらいお手伝いしています。

安田

すごいですね!

久野

私の感覚では「まだ5000社」という感じです。300万社ぐらいあるので。

安田

でも5000社はすごいですよ。

久野

中小企業の導入サポートでは間違いなくウチが1番です。

安田

これから加速して、あっという間に何万社単位になりそうですね。

久野

社員さんも喜びますし、導入するなら絶対に早くやった方がいいです。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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