変と不変の取説 第92回「自粛はどこに向かうのか」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第92回「自粛はどこに向かうのか」

前回、第91回は「知事から藩主へ」

安田

GoToキャンペーンについて、泉さんの意見が聞きたいんですけど。

やるべきかどうかってことですか。

安田

「なんでこの時期に!?」という意見と、地方の観光業や瀕死の旅行代理店を見てると、「やらざるをえない」という意見もありまして。国民の大多数は「ふざけんな」って感じですけど、泉さんの見解はどうですか?

何か「施策を打たないといけない」というのは確かですね。そこでひねり出した苦肉の策という感じ。

安田

それは「日本経済のために」ってことですか?

そうです。地方創生って、ほぼ観光しかないんですよ。だから観光業が衰退すると、地方は完全に衰退してしまいます。

安田

ということは、地方を救うためってことですか?GoToキャンペーンの目的は。

基本的にはそうでしょうね。

安田

「JTBと癒着してる」とも言われてますけど。JTBも政治献金ぐらいしてそうですし。大手旅行代理店はかなり厳しいみたいですよ。

冬のボーナスなしとか、そんな感じですね。

安田

仮にJTBがつぶれたら、社員を含め関わる人数はすごいです。その人たちがみんな仕事をなくしたら大変なことになります。

大変なことになるでしょうね。

安田

だからそこを「なんとか救わなきゃいけない」ってのもあるのかなと。あんまり関係ないですか?

多分あんまり関係ないと思います。国会議員の人たちって、本質は国会議員ではないので。

安田

どういう意味ですか?

彼らは地方の票で来てますので。「地方にどれだけ国の財源を引っ張ってこれるか」っていうのがミッション。

安田

ああ、たしかに。国会議員を地方の利益で選ぶっていうのが、そもそもおかしいですよね。

今の仕組みでは「本当に国のことを考える人」は選ばれないです。

安田

なるほど。じゃあGoToキャンペーンは地方のためにやってると。泉さんもやるべきだという意見ですか?

地方のことを考えたらやるべきですね。

安田

でもそれによって、またコロナが「全国に広がるんじゃないか」と言われてます。東京の陽性者がすごく増えてて。

言われてますね。

安田

泉さんも東京に住んでるから嫌がられるでしょ?地方に行ったら。

嫌がられないですね。

安田

え!嫌がられないですか?

私が気にしてないだけかもしれませんけど(笑)

安田

絶対そうですよ。じゃあ泉さんはGoToキャンペーン賛成派だと。

タイミングとかやり方は、もう少し考えたほうがよかったですけど。施策としては、苦肉の策ですけど、ああいう推進はどんどんしたほうがいいと思ってます。

安田

そうですよね。何もしなかったら地方経済はどんどん死んでいきますから。

はい。

安田

でも一方で、反対する意見がものすごく大きいですよ。「怖い」というのは分からなくもないんですけど。

国民の大半は会社員ですからね。

安田

はい。休んでいても給料が払われるし。「会社がなんとかしてくれる」「国がなんとかしてくれる」と思ってますよ。だけど政治家は「このままじゃ経済がまずい」と思ってる。

でしょうね。だから強引にGoToキャンペーンを進めてるわけで。

安田

とはいえ都知事選も「危ないから家にいろ」「お店に行くな」と主張する小池さんが再選しました。「危ない」って言ったほうが、やっぱり票になるというか。

「不安を解消します」というのが、いちばん票が取れます。

安田

自分の頭で考えない国民を育ててきたツケですね。「会社員になったら一生安泰」とか。

そういう洗脳をしてきましたから。

安田

さんざん教育してきたわけですよ。「自分では考えずに、言われたとおりやっとけば幸せになれるんだ」みたいなことを。

はい。

安田

それは国策ともいえるわけじゃないですか。泉さんがいつも言ってるように。

国策だと思います。素直な労働力を大量に生み出すための。

安田

国策で「考えない国民」ができ上がっちゃった。その結果が今回みたいな事態ですよ。政治家も「コロナより経済止まるほうがよっぽど危ないぞ」ってわかってるのに、それを言うと支持率を失うから言えない。

確実に票を失いますね。まず老人の票がなくなります。

安田

考えない国民に理路整然と伝えても通用しない。考えてないから「いやいや、危ないやろ」ってところで思考が止まっちゃってる。

まさにそうですね。こういう状態の中で「どうやって経済を回していくか」を考えることができない。

安田

とにかく家にいろとか。マスクしとけとか。もはや自殺行為ですよ。

そういう思考トレーニングをしてないので。いきなりそういうことを言われても「無難なほうにいきましょう」って発想しか出ない。

安田

無難な生活がしたいのなら、それ相応のリスクは取らなくちゃいけないですよ。

これをやり過ごせば「なんとかなる」と思い込んでるんです。

安田

国や会社を信じてるってことですか?

どうしていいのか分からないってことですね。こういう状況がいままでなかったので。生まれてはじめて直面したリスクなんじゃないですか。

安田

「もう自粛はいやだ!」って国民が暴動を起こす国もあるわけです。日本は「民度が高いからそんなことしない」って言われてますけど。

反発するほうが健全ですよ。

安田

ですよね。日本は「自粛しろ」って人が多いですけど。「じゃあ1年間は収入ゼロで」となっても同じことが言えるのか。

国民全員生活保護ってやつですね。

安田

生活保護も払えなくなりますよ。その規模になってしまったら。

ですね。

安田

すごく不思議なんですけど。いまだに国民の6〜7割が「緊急事態宣言をもう1回出す」ってことに賛成みたいです。

やっぱりどこか他人事なんですよ。

安田

でも最終的には自分のところに返ってきませんか?

もちろん返ってきます。国はどんどん借金が膨らんでいきますから。最後は国民にツケを払わせることになる。

安田

ですよね。それを分かってるんですかね。「自粛しろ」とか「緊急事態宣言を出せ」って人たちは。

内政が「もうガタガタだ」ということはわかってるでしょう。

安田

だけど経済を動かすことには反対だと。

とりあえず目の前の不安をなくしたいんですよ。だから「自粛してじっとしてたほうがいい」っていう。

安田

そうやってだんだん死んでいくと。

どんどん貧しくなっていくことは間違いないです。

安田

それを分かってやってるんですか?覚悟してると。

覚悟ではないですね。単にそういう状態に慣れちゃったんですよ。


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


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第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

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