第371回「新卒が選ぶべき大企業とは」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第370回「プロ経営者が生きている世界」

 第371回「新卒が選ぶべき大企業とは」 


安田

もう黒字リストラでは誰も驚かなくなりました。

石塚

慣れって恐ろしいですよね。

安田

本当にそうですね。今回の三菱電機も勤続3年以上、53歳以上の早期退職募集です。業績がいいうちに重たい人材を整理して若手を増やしたいと。

石塚

三菱電機ってじつは評判が悪い会社なんですよ。

安田

え?そうなんですか。

石塚

はい。僕は絶対に新卒には勧めないです。とにかくパワハラ気質で。

安田

今どき?

石塚

若手がのびのびと働ける環境ではない。

安田

営業利益は過去最高と書いてますけど。

石塚

今のところ業績はいいですね。だけど若くて優秀な人を集めているとは言えないです。

安田

三菱電機だったら来そうですけど。優秀な新卒とか。

石塚

このままでは厳しいと思います。もうちょっと自分たちの足元を見て、社員が「この会社好き」って言ってくれる会社にしないと。

安田

今回のリストラも社内の評判は悪そうですよね。

石塚

リストラをしたとて、これからそんなに若い優秀な人間を集められるのかなって。僕は疑問ですね。同じ三菱でも三菱商事とか銀行だったら来るでしょうけど。

安田

かつて日本の大手家電メーカーは超人気企業でしたけど。

石塚

昔はね。今はほとんど産業機器の会社ですから。そういう意味では仕事は手堅いんですよ。足腰はしっかりしてる。

安田

だけどリストラは避けられない?

石塚

グローバル展開を考える上で、お荷物の人間はお金を払ってでも降ろしたい。退職金債務も軽くして、もっと世界の優秀な人材を採りたいんじゃないですか。

安田

世界で戦っていくとなると日本の労働法は邪魔ですよね。世界のルールで勝てるようにしないと。

石塚

おっしゃる通り。だからみんな早期退職という名のリストラをするわけですよ。

安田

とはいえリストラしていない大企業もあるわけで。いずれはみんなやりますか?

石塚

みんなリストラすると思います。なぜかと言うと株主の受けがいいから。「これだけ利益を出すべく努力をしています」って説得力あるじゃないですか。

安田

人件費を削っているだけですけど。

石塚

身を削ってでも「ちゃんと株主に還元できるよう利益を出します」っていう姿勢は「いや、大したもんだ」って話になる。

安田

そうなんですかね。

石塚

株主受けはいいと思います。

安田

50代で仕事が出来る人だっているでしょうし。大切にしてきた企業文化みたいなものや、会社に対するロイヤリティが途切れませんか。

石塚

そんなこと言っていられないんですよ。とくにこの三菱電機は不正検査問題で事件になったじゃないですか。

安田

そうでしたっけ。

石塚

はい。この会社って風通しが良くないんだと思います。隠蔽する企業文化ってことですよ。

安田

そんなものは無くなった方がいいと。

石塚

そういうものを変えたいんでしょうね。給料が高い上位職の方においとま頂いて、重たい頭を軽くしたい。

安田

大手企業に入れば人生安泰という常識もなくなりつつありますね。

石塚

探せば安泰企業はあると思います。ものすごい高収益で人を大切にする会社。ただそういう会社は得てして知名度があまりない。

安田

地味だけど就職先としては超優良企業ってことですか。

石塚

東京エレクトロンだってみんな知らなかったじゃないですか。そういう隠れた優良企業が日本には何百社もあります。ある特定分野のシェアが恐ろしいぐらい高いとか。社風もマイルドで。

安田

就職するならそこを見極めなきゃいけないってことですね。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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