百聞は一見にしかずと言うが、多くの人は自分の目で確かめるまで都合の悪い真実を受け入れない。たとえば少子化は貧困が原因であると信じていたりする。お金がないから子育てができない、もっと豊かになれば出生率は上がるのだと。だが日本で最も出生率が高かったのは戦後のさらに貧しい時代である。
日本だけではない。世界では貧しい国のほうがはるかに出生率は高い。先進国の豊かな国ほど出生率は低い。これが正しいエビデンスである。だがこれほど明確な数値が出ているにも関わらず少子化を貧困のせいにしている。人間とはこういうものだ。都合がいいように勝手に事実を解釈するのである。
ここで経営者に問いたい。なぜそんなに必死になって人を雇用するのかと。人がいないと仕事が回らない。それは本当に事実なのだろうか。少子化を貧困のせいにしているように、仕事が回らないことを人不足のせいにしているだけではないのか。だが、いくら声高に叫んでみても経営者の耳には届かない。
放っておくと応募者が来ない。仕方がなく給料を増やす。能力に対して報酬を増やしているのではない。需給バランスによって仕方なく給料を増やしているのだ。応募者にしてみたら転職するだけで収入が増える状況。スキルアップしなくても初任給は上がっていく。当然のことながら実態との乖離が進む。
少ない応募者の中から比較的マシな人材を選んで雇用する。何しろ人がいないと仕事が回らないのだ。いないよりはマシだ。だがその考えは半年もしないうちに後悔へと変わる。主体性も成長意欲も責任感もない人材。当然である。彼らの目的である収入アップは転職時にすでに果たされているのだ。
戦力にならないどころかお荷物になっていく。これならいない方がマシだ。ここに至ってようやく経営者は気づく。規模を縮小し売上を下げてでも利益を優先した方がいいのではないかと。そんなことは考えるまでもないのである。人を雇い売上を維持することが正しいと信じていただけ。そこに根拠はない。
少子化時代に経営者がやるべき仕事は明白である。最小限の人員で最大の利益を上げる仕組みを考えること。できるだけ雇用せず外部の優秀な人材を活用すること。どう考えてもこれしかない。雇用すればするほど組織の質は下がり人件費は上がっていく。先入観なく眺めてみれば誰でも分かる計算式である。
尚、同日配信のメールマガジンでは、コラムと同じテーマで、より安田の人柄がにじみ出たエッセイ「ところで話は変わりますが…」と、
ミニコラム「本日の境目」を配信しています。安田佳生メールマガジンは、以下よりご登録ください。全て無料でご覧いただけます。
※今すぐ続きを読みたい方は、メールアドレスとコラムタイトルをお送りください。
宛先:info●brand-farmers.jp (●を@にご変更ください。)

















