第143回 世界最強のスーパーが日本に来ない理由

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第143回 世界最強のスーパーが日本に来ない理由

安田

IKEAが日本でかなりの赤字を出していて、撤退する店舗も増えているそうですが、ご存知ですか?


倉橋

ああ、そうみたいですね。

安田

ネットの意見だと、「あの迷路のようなショッピング動線が、タイパを重視する今の日本人に合っていないんじゃないか」みたいなものがあるそうですが。


倉橋

それもあるでしょうけど、それ以上に、「日本にデビューした時から売り方やシステムが全く変わっていないこと」に原因がある気がします。未だに店内をぐるぐる回遊して、カタログを見て注文するスタイルから抜け出せていない。

安田

あれはあれで楽しかったんですけどね。一方で、ドン・キホーテも迷路のような複雑な店作りですけど、こちらは集客もうまくいってしっかり儲かっている。同じような回遊型の店舗なのに、なぜIKEAのスタイルは日本では受け入れられなくなったんでしょう。


倉橋

IKEAのやり方は、最初はテーマパークや動物園に行くような感覚で楽しいんですが、いざ買って帰って自分で組み立ててみると「想像以上に面倒くさいな」とお客様が気づいてしまうんです。

安田

ああ、確かに。私も10年くらい前に行って、いろいろ見て回るのはすごく楽しかったんですが、いざ家でソファーを組み立てたら本当に大変で。それ以来IKEAには行っていませんね。


倉橋

最初の期待値や点数は高くても、一度面倒な経験をするとリピートのチャンスが極端に減ってしまう。本来なら、お客様の点数が低くなってきたタイミングで、柔軟に改善していくべきだったんです。例えば組み立て済みのものを直接販売するとかね。

安田

ははぁ、つまり日本人というターゲットに合わせた工夫が足りなかったと。


倉橋

ええ。その点、ドン・キホーテはここ3年、5年でとにかくスピーディーに変わっている。ターゲットを若者からファミリー層にぐっと寄せて、スーパーを買収して生鮮食品を強化したりと明らかに店が変わっていますよね。

安田

毎日来店してもらうために、売り方自体をどんどん変化させていると。海外ではIKEAのDIYスタイルで売れ続けているわけで、やはり国やカルチャーによって商売の正解は違うということなんでしょうね。


倉橋

違うと思います。僕もIKEAの組み立てには本当に参りましたもん(笑)。「あそこに行ったらまた面倒な組み立てをさせられる」と思うとリピートしようとは思えませんね。心の中で低い点数をつけて、行かない理由を無意識に作ってしまってます。

安田

わかります。図面もわかりにくいんですよね。専用の工具を揃えている家庭も日本には少ないですし。かつての大塚家具のように店舗での丁寧な案内から、自宅への納品、組み立てまでしっかりやってくれる至れり尽くせりのスタイルの方が、日本人には合っていたんでしょうか。

倉橋

合っていたと思いますよ。ロイヤルカスタマーへの対応もしっかりしていて、どういうお客様に来てほしいかというペルソナがきっちり決まっていましたから。だから家具屋さんとしてすごく支持されていましたよね。

安田

でもそこからビジネスモデルを中途半端に変えたことで、売れない方向に軸を外してしまったということなんでしょうか。

倉橋

そうですね。よりカジュアルな客層にターゲットを変更したことで、結果的に今までのロイヤルカスタマーがいっぺんに離れてしまった。時代に合わせて柔軟に変化していくのは重要ですが、核の部分を見失ってはいけないということだと思います。

安田

なるほどなぁ。とはいえ前の成功体験が強ければ強いほど、経営陣も現場も変わりたがらないものじゃないですか。変わる=過去のやり方を否定することになるわけで。

倉橋

気持ちはわかりますけど、変わらずにいることはできないんです。例えば今の時代に、飲食店のテーブルにアクリル板の衝立がまだ置いてあったら、それだけで「神経質で古い店だ」と思われてしまう。その瞬間にお客様の中では減点されて、次からは来ていただけなくなってしまう。

安田

うーん、確かに。お店側としては、お客様のためを思って置いているんでしょうけどね。IKEAのように、成功した業態をそのまま全世界に広げて大量に売るスタイルは、日本では通用しにくいんでしょうか?

倉橋

それはあると思います。日本のマーケットが世界で一番難しいと言われる所以でしょうね。世界一の売上を誇るスーパーのウォルマートでさえ、日本には本格参入してきませんし。調査の段階で、日本は非常に厳しい市場だという結果が出ているんだと思います。

安田

なるほどなぁ。逆に日本で商売をするなら、毎年のようにお客様の細かな変化に合わせて、柔軟に工夫し変化し続ける覚悟がないと難しいということですね。

倉橋

カルフールのような世界的大手でさえ撤退しましたからね。日本人のシビアなお客様は、不満があっても直接文句は言わず、とにかく黙って心の中で採点して、そして静かに来なくなるという。本当に難易度が高い市場だと思いますよ。

 


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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