前回ちょっとお話しした、労働力不足からの移民問題ですけど。

はい。

あれは政策というよりは、現場からの要望に応えたって言ってましたよね？

そのとおりです。

それは、どの業界から来てる話なんですか？農業とか建築とか？

どこが選挙の票田になるかを考えたら、見えてきますよね。まず土木建築系はやっぱり多いと思いますし、あと、介護系も多いですね。

じゃあ、サービス業とか、外食とかも。

小売りなんかもそう。でも、いちばん要望が強かったのは、地方公共団体かもしれません。

どういうとこですか？地方公共団体。

たとえば某自動車メーカーの大工場が群馬にあるんですけど。

群馬に大工場？

群馬の太田ってとこなんでけど。

はい。

太田はもうブラジル人の街になってます。

なんと！

過疎化に悩む地方公共団体の首長はみんな、それが羨ましいんですよ。

ブラジル人の街になることが？

いえ、税金を落としてくれることが。

なるほど。

だから今回の入管法の件で「最大の圧力」をかけかたのは、地方公共団体の各首長ですよ。「そうしないと、次応援しませんよ」みたいな。

海外人材の受け入れには、いくつか問題があると言われてますよね。

はい。

まず彼らの扱い方。単なる安い労働力扱いでいいのかどうか。それから地域社会に溶け込めるかどうか。そして同じ仕事をする日本人の収入が下がってしまうこと。

これたぶん、報道規制してると思うんですけど。

何ですか？

今ひどい犯罪が増えてるんですよ。

外国人労働者が起こしてると？

就業先でいろんなトラブルあると、結局そこ辞めちゃったりするじゃないですか？

そういう人が多いみたいですね。

ところが彼らって大借金して来てるんで。

そうなんですか？

日本に来るために年収の何倍も借金するんですよ。

そんなに！

たとえばベトナムって社会主義国なんで、もし「返せません」って話になったら本国にいる家族ぜんぶ収監されちゃうわけですよ、刑務所に。

そうなんですか！

だから、絶対に「自分はギブアップした」って言えないわけですよ。それで、どっかに潜り込んじゃうわけです。

不法滞在ってことですか？

はい。そうすると「いらっしゃい」っていうアングラな世界もあるわけで。

そもそも、なぜ辞めちゃうんですか？

社会主義国ってアルバイトすらしたことがないわけです。そこからいきなり飲食店で「いらっしゃいませ」って無理があるわけですよ。それに業界や職場によっては、かなり就業環境がひどいところも多い。

どうにか出来ないんですかね？

僕は、連れて来るよりも先に外国人労働者の「中途採用をやれ」って言ってます。

もうすでに国内にいるんだから、まずその人たちをきちんと雇えと？

はい。必要に応じてちゃんとイリーガル状態を是正して、しかるべきマッチングをすればいいんです。

なぜ、そうしないんですか？

とにかく「儲かるから」ってことで、ブローカーがはびこってて。浅はかな話なんですけど、先のことを考えずに「入れろ」「入れろ」って話になってる。

じゃあ今の段階で、すでにいっぱい入ってると。

ものすごい数が入ってます。

今いる人にちゃんと働いてもらえば、治安もよくなるし、彼らも稼げて仕事も回るし、いいことばかりじゃないですか。

受け入れ企業が「ちゃんとした職場」を提供できるかどうかですね。

雇うんだったら「日本人と同じつもり」で迎えなくちゃいけないですよね。たとえば賃金にしても「外国人だから安い」みたいなのじゃなくて。

その通りなんですけど。外国人労働者が日本に来てくれるのも、実は一時のような気がするんですよね。

どうしてですか？

我々が考えてる以上に、アジアの国の経済成長はすごいですから。

たしかに。じゃあ「稼げる」だけじゃなくて「あそこ素敵だよね。あそこで働きたいね」って言ってもらえるような努力が必要ですね。

方向性としては僕も大賛成なんですけど。

ダメですか？

だって、日本人集めるのでさえ下手くそな会社が、外国から来たくなるほどの魅力をつくれますか？

確かに。

やっぱり「稼ぐ力」をつけていくしかないですよ。

生産性を高めないと、外国人労働者にも来てもらえなくなると？

間違いないです。収益性を高められない会社は、もう行き詰まるしかないです。

実際どうなんですか？収益性の高い中小企業って増えて来てるんですか？

人に関して進んでる中小企業ほど「収益性が高い」というイメージですね。

進んでるというのは、どのように？

儲かってる会社って、社長自身が「社員の満足度を上げるための施策」をしっかり考えてます。

社員満足度を考えていない会社は、儲かってない？

売上は上がっていても、わずかな利益しか出ていない会社が多い。

それって逆じゃないんですか？儲かってるからそこに手を打てる。

いや、違いますね。利益によって変わるんじゃなくて、最初から思想が違う。

途中からは変わらないと？

人に関して遅れてる会社の社長って「人が集まる会社にするためには」みたいな話にまったく関心ないんですよ。

かなり時代に取り残されてますね。

日本の中小企業が越えなきゃいけない「最大の壁」がそこだと思います。

最大の壁？

はい。人に対してどう考えるかという部分。「余裕がないと考えられない」という思考こそが、中小企業の成長進歩を妨げている。

中小企業って、なんだかんだ言って労働集約型じゃないですか。

はい。

だったら「いかに一生懸命働きたいと思ってもらうか」が収益を分けるポイントですよね？

おっしゃる通り。僕は、今が最後のチャンスだと思ってるんです。

最後のチャンスですか？

はい。どうにもならない状況を前にして、「よし、変わろう！」と腹をくくる経営者が増えるんじゃないかと。

増えますかね？

分かりません。でも危機的な状況にならないと、劇的な変化って起こらないじゃないですか。

今のところ、その気配は感じませんけど。

そうなんですよね。