この記事について
税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。
これは「社労士さんに聞くこと」じゃないかもしれませんけど。
なんでしょう。
「生産性の低いヤツは、いらない」ってことですよね?
まあ、平たく言えばそういう事です。
であれば、なぜ老人の延命をするんですか?お金がかかる割に、国としての生産性は低いですよ。
シルバーデモクラシーじゃないですけど、そこに票が集まってるんですよ。
じゃあ、選挙のためってことですか?
そうです。選んでもらわない限り、政治の主導権は握れないですから。老人に配慮せざるをえない政治になってます。
じゃあ本当は年金も払いたくないし、老人も早いとこポックリ逝ってほしいと。
安倍さんも言及してますけど、「70歳まで働いてほしい」というのが本音じゃないですかね。
働いてほしいっていうか「会社はクビにするな」ってことですよね。70まで。
そうです。
あれは「70まで年金は出なくなりますよ」というメッセージだと、受け取っていいんですか?
明言は避けるでしょうけど、もう年金自体はたぶん72歳とか、それぐらいから払いたいと思ってるでしょうね。
明言はしないけど「議事録を読めば、そう書かれている」という話でしたよね?
はい。しっかり読めばそう書かれてます。
でも「読めば読むほど、分かりにくく」書かれてますけど。あれワザとですか?
「ワザと分かりにくくしてる」というわけじゃないと思います。
じゃあ、どうしてもっと分かりやすく書かないんですか?
「こういうふうに取られたら嫌だな」っていうのを意識してるから。
「こういうふうに取られたら嫌だ」けど、そういうふうには思ってる?
思ってるでしょうね。
「年金を出したくないと思ってる」とは、思われたくないけど、本当は出したくないと思ってる。ややこしい!
私の立場では言いづらいんですけど、「出すのは厳しいな」ぐらいには思ってるでしょうね(笑)
じゃあ、解雇規制に関してはどうなんですか?
それも今の政権は「何とかしたい」と思ってるでしょうね。
ですよね。だって採用が増えないのって、解雇できないからですからね。「採っちゃったけどコイツ要らないよ」という人も抱えていかないといけない。
現状の法律ではそうですね。
でもそれで「世界でも勝てる生産性の高い会社」にするってのは、無理がありますよね。
政治的な支持率との兼ね合いで、アンタッチャブルだと言われているのが「解雇規制と年金」の2つなんですよ。
本当はやりたいけど、やったら選挙に勝てない。
そうなんですよ。でも解雇ってすごく悪に思えるんですけど、「もっといい仕事に就ける」って可能性もあるわけです。
それは間違いないですね。無理やりしがみついてるより、ずっといいと思いますけど。
やっぱり支持率の問題が大きいんですよ。本当は「金銭的な解決ができる法整備」が必要だと分かっているんです。
「お金払えばクビにしてもいいよ」ってことですか?
そうです。
今でも大手は、結構リストラしてるじゃないですか。
自主退職という名目でやってますね。
あれでは全然足りない?
全然足りないですね。自主退職だと優秀な人も辞めちゃいますし。
本当は人件費の高い40歳以上の社員を「ズバッと」切りたいんでしょうね。優秀な人だけ残して9割くらいズバッと。
三越伊勢丹なんかは「60までの給与を払ってでも」50代の社員に辞めてもらってます。こういう企業はどんどん増えて行きますね。
リストラの対象年齢も下がってきますよね?
40代とかは厳しいです。
ですよね。
10年ぐらい後を考えると、産業構造がガラッと変わって「デジタルネイティブに太刀打ちできないだろう」と。
まあ、経営者はそう考えますよね。
「小さい頃からスマホに触れてる人間のほうが、新しいことを生み出せる」というのが一般的な考え方ですね。
逆転現象も起きてますからね。「50代のほうが給料高いけど、20代のほうが仕事できる」みたいな。
過去の積み重ねだけでは、成果が出なくなってますんで。
だから、採用でも外資に勝てなくなってます。いきなり新卒に40万払う外資があったり。日本企業だと上のおじさんたちを養わないといけないんで。
そうですね。
国家の大方針としては、そこをズバッとクビにさせてあげたいんですか?
私の立場では、何とも言えません(笑)
いや、言ってください。
日本って、中小企業の流動性は結構あるんですけど、大企業の流動性ってほとんどなくて、そこに溜ってるわけです。
それで?
国家としてもそれを分かってるので、大企業から中小企業に流したいんですよ。
そのために解雇規制を緩和したい?
そうでしょうね。
じゃあ、順番はどうですか。
順番ですか?
はい。「儲からない中小企業は潰れてくれ」「年金出さないぞ」「解雇OK」は、どれが最初に来るんですか?
労働時間の上限規制が一番最初です。
まずは、生産性低い会社は撤退しろと。
そうです。そこをふるいにかけてから・・・
次は流動性を高める?
そうです。
大手から人材出すために解雇規制を緩める?
そうですね。で、年金の問題は「働ける年数を上げていく」ことで、少しはしのげると思ってるので。
年金は一番最後?
はい。少し高齢者が減ってくるタイミングじゃないですかね。支持率を考えると。
でも「解雇OK」とか言ったら、絶対に選挙は負けますよね?
負けますね。
にも関わらず、解雇規制は緩和されるんですか?
もうこれは、やらざるを得ないんですよ。
なるほど。じゃあ「俺が犠牲になってやる」みたいな政治家が出てくるんですかね?
いや、それをやったら政党ごと負けてしまうので。
1人の首じゃ済まないと?
はい。
じゃあ、誰がやるんですかね。官僚ですか?
官僚はサラリーマンなので、内閣しか見ていません。
でも内閣は決断できないですよね?選挙に負けるんで。
国民が納得せざるを得ないデータを、用意するんじゃないですか?
そんなの、あるんですか?
ちょっと前に裁量労働制か何かで、ぜんぜんデータ取ってない資料が出てきましたよね。
ほとんど「データ改ざんだった」みたいな。
あれもやっぱり、政権見て動いてるんですよ。忖度して。
え!じゃあ、忖度してまたデータを作ると?
私からは、何とも言えませんが。
いやいや、言ってるのと同じですよ。「解雇OKにしないとこの国はダメです」みたいな資料を忖度して作るんでしょ?官僚が。
私、殺されそうですけど(笑)
久野勝也
(くの まさや)
社会保険労務士法人とうかい 代表
人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は地元である岐阜県多治見市。
事務所HP https://www.tokai-sr.jp/
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。