7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第39回「リストラと優良企業の境目」
石塚さんの予言が、どんどん現実になってます。
私の予言がですか?
早期退職者を募集している大企業が、十数社あるんですけど。
はい。多分もっとあるでしょうけど。それが?
その対象が、絵に描いたように「45歳以上」っていう。1社だけ44歳で、残りはぜんぶ45歳。石塚さんの45歳定年説、見事的中です。
いやいや(笑)そんな。予言とは言えませんよ。当然の帰結です。
しかも、その十数社に共通しているのが、東証1部上場企業ということ。「東証1部に入っときゃ安心」みたいなものが、崩れてきてます。
今度、東証1部の基準見直しするじゃないですか。
基準の見直し?
要は、東証1部企業を仕分けするんですよ。
仕分け?
はい。「プレミアム市場を創設するから、東証1部からは抜けてください」と。
じゃあ、「1部」のさらに上が、できるってことですか?
そうです。「A・B・C」じゃなくて「S・A・B・C」みたいになる。
Sランク?
せっかく東証1部に入ったのに、「優良企業をさらに選別します」っていう。
じゃあ、Sランクに入るような企業は、さすがにリストラしないんですか?
いや、どんどんします。逆に、余裕があるからそれができるっていう。
なんと!じゃあ、従業員から見たら、ぜんぜんSランクじゃないですね。
内部留保もうんとあるし、不動産も持ってるし、割増退職をつけてでも「この船を下りていただけませんか?」と言える企業。
それがSランク企業だと?
だって、体力がなければ、もう維持するしかないじゃないですか。
金払ってでも「従業員をやめさせられる会社」が、真の優良企業なのだと。
そういうことですね。
これって、いつまで続くんですか?
これと言うのは?
45歳以上の何パーセントが退場するまで、このリストラは続くんですか?
うーん、逆に安田さんに聞きたいんですけど。
はい。何でしょう?
仮に100人の会社を経営してたとして、社風が一変するのって、新卒が何%ぐらいになった時ですか?
社風が一変?うーん……30%ぐらいですかね。
30%だと、激変しますよね?
はい。1割じゃあんまり、変わらない気がします。
1割では変わらないですよね。僕は、その境目、25パーセントだと思ってるんですよ。
25%ですか。
はい。25%を超えると変わっちゃうんですよ、会社の雰囲気が。
なるほど。
すると逆も言えて、いなくなる方も25%を切ると、その層の影響力がなくなる。
つまり、75%以上辞めてくれれば、影響力がなくなるってことですか?
そういうことです。
じゃあ、 75%が辞めるまで、リストラは続くと?
本音を言えば、企業側は99%辞めて欲しいのです。
もちろんそうです。誰も本音を言えないから、代わりに言いますけど。
ほぼ全員辞めて欲しい?
生産性の低い45歳以上は、全員辞めてほしいんですよ。
石塚さんから見ると、45歳以上で給料に見合わない、生産性が低い人の割合って、どのぐらいなんですか?
ゆるーく言って8割はそうでしょうね。
8割は給料に見合わない?
はい。厳しく言うと5%だと思います。
じゃあ、95%は赤字?
でしょうね。
若手でも十分、その仕事はできちゃうと?
上が居なくなれば。むしろ居ることが、害になってる。
早期退職って、人数限定してますよね?
目標人数は決めてますね。
「予想より、たくさん来ちゃった」みたいなニュースを見かけますけど、じつは企業側は喜んでいるんですか?
基本的には喜んでます。ただ、早期の募集ほど、優秀な人も抜けていくんですよ。だから「あぁ〜」っていうのも、ありますね。
やっぱり、そうなりますか。
それをチャンスと捉える人って、本当は残ってほしい人なんですよ。
ですよね。発想がポジティブですもんね。
いちばん困るのは、周囲の誰もが「おまえだろ。おまえこそ応募しろよ」って人が、第2次、第3次にも応募しないこと。
しがみついてる?
2000年前後には、「辞めさせ屋」っていう仕事があったぐらいですから。
ありましたねえ。「研修」と言いながら、退職を決意させるみたいな。
「クビキラー」なんて言われて。
今でもあるんですかね?
今もカタチを変えて、ありとあらゆることをして、辞めてもらうんですけど。
でも、辞めない?
敵もさる者っていう、話ですよね。本当に辞めて欲しい人はしがみつく。
実際どうなんですか。100人「辞めます」って中に、何割ぐらい優秀な人が入っちゃうものなんですか?
早期は、かなりの割合が入ると思いますよ。
そうなんですか。
はい。新宿の某百貨店は、5分足らずで終わったらしいです。
応募が殺到したってことですか?
だって、5,000万円ですよ。
じゃあ、優秀な人が?
はい。みんなすぐクリックですよ。
クリック?
幼稚園とかの応募と一緒ですよ。みんな画面の前にいて「よし、クリック!やったあ!」みたいな。
応募する人って、みんな優秀なんですか?
あるいは、自分か奥さんの実家が、割とお金持ちとか。
辞めても食っていけると。
それと、早く結婚して子どもが卒業した人。「もういいよ俺」みたいな。
なるほど。
「逃げ切れる」という見込みをもってる人は、早いですね。
ちなみに、優秀な人って、みんな抜けていくんですか?
いや、そこはエリート社員の自負があって「俺はどんなことがあっても、最後まで残るぞ!」って人もいます。
どれぐらい居るんですか?
半々かな。
ちなみに「絶対俺は一生しがみつくぞ!」って人たちは、最終的にはどうなるんですか?
もう、しがみつく人たちは「何があっても耐える」っていう感じですね。ある年齢になると役職定年が始まるんですけど。
「給料が下げられちゃう」っていうやつですね。
そうです。でも、どんなにボディーブローが効いてきても、とにかく耐えると。
もし、石塚さんのお友達だったら、何てアドバイスします?辞めたら絶対食えないって人に。
「耐えしのげ」って言います。
「どんなにしんどくても、しがみつけ」と。
「置かれた場所で咲きなさい」の一言でしょうね。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。