第3回 リモートワークの先に見える、私の存在意義
5年前、ドバイに2年ほど住んでいました。
英語ができるわけでもなく、外国人の友達がいるわけでもなく、ただ単に「外国に住んでみたい」という思い付きで。
なんとかなるだろうと、たかをくくって住んではみたものの、言葉の壁やルールの違い、家族のフォローなどで15キロほど体重も落ちていきました。
そこで初めて実感したことがあります。
今までいろんな人に依存しながら収入を上げ、お酒を飲み、旅行して、生きてきたんだなあと。ドバイにいる人は、トヨタの車には興味があっても、小さな島国から来たおじさんに、誰も興味は持たないのです。
仕事もプライベートも関わる人がいて、助け合って成り立っているのだと初めて考えさせられました。
そして、日本にいる親や友人とすぐに会えない状況は、家族も一緒。
フラストレーションは溜まるものの、お互い家族以外に安息の地はありません。
そうして家族だけは戦友とでもいうべき大切な存在だと、強く感じることができました。
さて2020年は、新種のウイルスが猛威を振るい、世界的に人と人との距離をとらなければならない状況になっています。
企業は社員を自宅に待機させ、個人間をオンラインでつないで会議をします。取引先も自宅にいる担当者同士のコミュニケーションで仕事を流します。
強制的に距離をとらなければいけない環境では、フラストレーションがたまっても、飲みに行く場所もなければ、飲みに行く人もいません。
この状況は、私がドバイで味わった感覚と似ているのではないかと思うのです。
今まで会社に出社してさえいれば、情報も取れる。仕事もまわしてもらえる。同期と飲みに行けば、愚痴も聞いてもらえる。お客さんに訪問して話を聞けば、注文がとれる。
頻繁に会うことによって、目に見えない関係性で成り立っていた自身の存在価値が、ウイルスのおかげで揺らいでいるのではないでしょうか?
そして、家族との生活にその価値を見出した人も、少なからずいるだろうと考えます。
一方で、経営者も気づいてしまいました。
「ん?毎日出社しなくてもいいんじゃない?」
確かににコストはかからない、その分給料も安くて済む。
この先、社員はリモートワークに移行するのか、営業がオンラインに変わるのか、事業ごとデジタル化するのかは不透明です。いずれそうなると思いますが。
ただ、会社と距離をとって生活をすることで、自身を客観的に見なくてはいけない状況になったということはとても大きなことです。
リモートワークは、会社に勤める人の存在価値をあらためて見直す機会を与えてくれました。会社、家族との関係性と自身の存在。そして、デジタル化の波が自分にも襲ってくる予感。
自分の人生の時間をなにに費やすのか。
家族が大切だと感じたのか。
会社でのコミュニケーションが大事だと思ったのか。
リモートワークを契機に、自身の能力や適性、そして人生を考えるようになる人が増えたのは事実でしょう。来たるべきデジタル化にどのようにふるまうかが、リモートワークが垣間見せた、個人が未来に対応するためのカギになります。
会社に貢献する手段であれ、自己研鑽することであれ、自身のキャリア形成・人生設計に向けて行動に移すことが会社員にとっての「青い出口」。
リモートワークの不自由さを言い訳に、会社への依存を深めるのは会社員にとっての「赤い出口」。
私は日本に帰ってきてから、ドバイで感じたことを家族で話し合い、妻にビジネスをつくってもらいました。私は会社員として働きながら、夜、自宅に帰ってサポートをしました。
現在も継続して、小さなビジネスを楽しんでいます。
私たちの家族にとっては、ドバイの孤独感がファミリー企業の入口になったのです。
- 著者自己紹介 -
人材会社、ソフトウェア会社、事業会社(トラック会社)と渡り歩き、
営業、WEBマーケティング、商品開発と何でも屋さんとして働きました。
独立後も、それぞれの会社の、新しい顧客を創り出す仕事をしています。
情報流通量の多少が、価値の大きさを決める時代となり、
「出口」の情報流通量を増やすことに重点を置いています。
これが「出口にこだわる」マーケティングの基となっています。
また、「出口にこだわる」実証として、
モロッコから美容オイルを商品化し、販売しています。
<https://aniajapan.com/>
商品の「出口」で情報が増えれば、ファンが増える。
「出口」に注力することで、新規マーケットの創造に力を発揮します。
出口にこだわるマーケター
松尾聡史