赤い出口、青い出口 第19回「システム化がバカをうむ」

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自覚して生きている人は少ないですが、人生には必ず終わりがやってきます。人生だけではありません。会社にも経営にも必ず終わりはやって来ます。でもそれは不幸なことではありません。不幸なのは終わりがないと信じていること。その結果、想定外の終わりがやって来て、予期せぬ不幸に襲われてしまうのです。どのような終わりを受け入れるのか。終わりに向き合っている人には青い出口が待っています。終わりに向き合えない人には赤い出口が待っています。人生も会社も経営も、終わりから逆算することが何よりも大切なのです。いろんな実例を踏まえながら、そのお話をさせていただきましょう。

第19回 システム化がバカをうむ

【将棋のシステム化】

システム化は人によるミスをなくします。
そして、過去のデータや、世の中の動向をデータ化したものを取り込んで、
システム自身を改修していきます。ちょっとした人工知能です。
ここまでくると、もはや人間では勝ち目がありません。

例えば、将棋。
記憶力の化け物のようなプロ棋士が、過去の棋譜を覚え、
そこから攻略法を考え続ける、選ばれしものの「知のスポーツ」でした。
現在は、究極の正解を追い求める競技としての魅力は格段に下がりました。
コンピュータの処理能力や通信速度の発達によって、
記憶力も対戦経験も人間の能力をはるかに超えてしまったのです。

【将棋の未来】

将棋は正解を求めるゲームから、人間観察エンターテインメントになりました。

テレビやネットの中継を見られた方はわかると思うのですが、
解説画面には、将棋ソフトの次手予想が映されています。
見る側は、勝利への解答用紙を片手に、ミスを誘発したりミスをしたりする、
密室でおこなわれる心理戦を楽しみます。

ただ、勝つ手順が目的なら、AIがやればいい。
若手棋士が歴戦の猛者をバタバタと倒す痛快さもさることながら、
昼食やおやつに何を食べるのかあてっこしたり、
なぜそうなるのかをみんなで勝手に想像して楽しむ、
エンターテイメントになっているのです。

これから、
将棋という競技においては、正解の試行錯誤はおそらく、
将棋ソフトの開発とともにあります。
システム化された将棋は、
正解を求め続けるモチベーションは続いていくのでしょうか?

【システム化がバカをうむ】

効率や正解が私たちの理解を超えたときに、
どうも人の興味は薄れていくような気がしてなりません。
私たちは、興味がないものは努力をしません。

創意工夫をし続けて、ノウハウをためていった先輩方たち。
その努力がデータ化・記号化されたときに、
使う人の興味が薄れ、工夫をし続けることをやめてしまうのです。
結果としてシステムを使い続けると、人が考えることをしなくなります。
「システム化がバカをうむ」ことになるのです。

【システム化の先に】

ここには私たちがシステム化と向き合うヒントがあるのかもしれません。
経営者にとっては、システム化・効率化は至上命題。
システム化を推進すると同時に、
使う側には新しい興味や創意工夫を持たせる必要があります。
あるいは将棋のように、分野を変えて戦っていくのか。
システムをつくる側も、使う側も、
創意工夫をし続ける楽しさを、なくさないようにしたいところです。

 


- 著者自己紹介 -

人材会社、ソフトウェア会社、事業会社(トラック会社)と渡り歩き、営業、WEBマーケティング、商品開発と何でも屋さんとして働きました。独立後も、それぞれの会社の、新しい顧客を創り出す仕事をしています。
「自分が商売できないのに、人の商品が売れるはずがない。」と勝手に思い込んで、モロッコから美容オイルを商品化し販売しています。<https://aniajapan.com/>
売ったり買ったり、貸したり借りたり。所有者や利用者の「出口」と「入口」を繰り返して、商材を有効活用していく。そんな新規マーケットの創造をしていきたいと思っています。

出口にこだわるマーケター
松尾聡史

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