第75回 「住み替え」と「事業承継」

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自覚して生きている人は少ないですが、人生には必ず終わりがやってきます。人生だけではありません。会社にも経営にも必ず終わりはやって来ます。でもそれは不幸なことではありません。不幸なのは終わりがないと信じていること。その結果、想定外の終わりがやって来て、予期せぬ不幸に襲われてしまうのです。どのような終わりを受け入れるのか。終わりに向き合っている人には青い出口が待っています。終わりに向き合えない人には赤い出口が待っています。人生も会社も経営も、終わりから逆算することが何よりも大切なのです。いろんな実例を踏まえながら、そのお話をさせていただきましょう。

【資金繰りという魔物】

住み替えをしています。

以前買ったマンションが、
子供も大きくなって手狭になったことと、
落ち着いて過ごせそうな場所が
見つかったからです。

簡単に住み替えと言っても、
結構お金がかかることがわかってきました。
15年前にマンションを買ったときは、
口座のお金は20万円しかないのに
モデルルームに突撃して購入できたので、
今回もなんとかなるとたかをくくっていたのですが、
なかなか、そうはなりません。

数年のスパンで見ると、
ローンの支払いは減りますし、
減税の恩恵も受けます。
新しい住宅は、メンテナンスも楽です。
住宅費用は結構下がる計算です。

しかし、
今回は売るのにもお金がかかりますし、
買うのにもお金がかかるので、
もともと現金を持ち合わせていない
私達の家計は火の車です。

人生の設計としては上手な運用でも、
家計の資金繰りとしては、無謀な住み替えなのです。
「そんなこと誰も教えてくれないじゃないか!」
「ネットにそんなこと書いてなかったよ!」
と憤ったとしても、誰のせいでもありません。

子供のテストでの計算間違いを指摘しながら、
お父さんは家計の計算すらできないのは、
子供にあわせる顔がありません。
まあ、そんなことは家庭では話しませんが。

【事業承継は売買です】

住み替えでかかる費用や税金は、
事前にわかっているものですが、
その資金繰りとなると、個々の事情があるので
他人はよくわかりません。

「お腹が減った」と、今にも泣き出しそうな
からっぽの自分の財布を見ると、
ちょっと切ない気分になります。
そして、もっと大きなお金が動く
「事業承継」を想像してしまいます。

個人の住宅売買でさえめんどくさいのに、
会社の「事業承継」になると、
色々なものを売ったり買ったりしないと、
所有権を移転することが難しいとわかります。

【事業承継の資金繰り】

「事業承継」をテーマに取材をしていくと、
まず、世の中の経営者は、
(私達が思っているほど)
現金を持っていないことがわかります。
つまり、
モノや会社の資産として保有しているので、
個人の貯蓄の比率が、
とても低いことが多いのです。
これは、私のからっぽの財布と同じ状態です。

経営者が退任するときに、明日からあなたが社長ね。
という、肩書の変更はできるかもしれません。
しかし、オーナー社長となると、
有形無形の資産を売ったり買ったりしなければならず、
資産の移動や、それにかかる経費が莫大になります。

事業承継にもお金がかかるのです。

そんなことわかってはいるけれど、準備をしていない。
計算上なんとかなるはずと想定できても、
気がつくと資金繰りが回らないことが多々あります。
経営が上手なオーナー社長も、
会社の出口においては、
資金繰りを計算できない人がたくさんいるのです。

住み替えをするお父さんも、
事業承継を迎えたオーナー社長も、
資金繰りにこそ、注意しなければなりません。

まずは子供の計算問題を
一緒に解いてみることから始めましょうか。

 

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- 著者自己紹介 -

人材会社、ソフトウェア会社、事業会社(トラック会社)と渡り歩き、営業、WEBマーケティング、商品開発と何でも屋さんとして働きました。独立後も、それぞれの会社の、新しい顧客を創り出す仕事をしています。
「自分が商売できないのに、人の商品が売れるはずがない。」と勝手に思い込んで、モロッコから美容オイルを商品化し販売しています。<https://aniajapan.com/>
売ったり買ったり、貸したり借りたり。所有者や利用者の「出口」と「入口」を繰り返して、商材を有効活用していく。そんな新規マーケットの創造をしていきたいと思っています。

出口にこだわるマーケター
松尾聡史

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