第86回 欲しいものには価値がある。

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自覚して生きている人は少ないですが、人生には必ず終わりがやってきます。人生だけではありません。会社にも経営にも必ず終わりはやって来ます。でもそれは不幸なことではありません。不幸なのは終わりがないと信じていること。その結果、想定外の終わりがやって来て、予期せぬ不幸に襲われてしまうのです。どのような終わりを受け入れるのか。終わりに向き合っている人には青い出口が待っています。終わりに向き合えない人には赤い出口が待っています。人生も会社も経営も、終わりから逆算することが何よりも大切なのです。いろんな実例を踏まえながら、そのお話をさせていただきましょう。

クリスマスプレゼントの季節です。
毎年、おじいちゃんたちが、
子どもたちに何が欲しいか聞くのですが、
ゲームや文具など、
その時に興味のあるものを欲しがります。
そして1ヶ月も経たないうちに、
欲しかったクリスマスプレゼントは、
飽きてどこかへ追いやられるのです。

欲しいものを手にできるなんて、
年に何回もないのに、
そのチャンスを無駄にしているのは、
アホだなあと思ってしまいます。
もっと長く使えるものや、
人生の糧になるようなものを
要求すればいいのにと感じてしまうのです。

私たちは経験や知識を積み重ねて、
長く使えるものや人生の糧となるものを
“価値の高いもの”として認識していきます。
だからすぐに飽きてしまうものや、
将来に影響の少ないと思うものは、
無駄なものとして、切り捨てがちになります。

先日、冷蔵庫を買い替えました。
前の冷蔵庫は5年も経っていなかったので、
買い換える必要はなかったのですが、
妻がどうしても“瞬間冷凍”の機能がないと
料理が美味しくならないというので、
買い替えてしまいました。
私はわたしで、美味しいご飯を食べたいと、
圧力IH方式の炊飯器を
妻の反対を押し切って買いました。

そして3ヶ月。
冷蔵庫の”瞬間冷凍”機能をもつ冷凍室は、
ただの冷凍食品の保管庫になっています。
圧力IHの炊飯器で炊いたご飯は、
炭水化物抜きダイエットのため
買った本人不在で稼働しています。

これでは子供に対して、
つまらないものを欲しがるな!とか、
言えたもんじゃありません。
価値の高いものを見極めることのできる
私たちの積み重ねた経験や知識なんて、
まったく意味のないものだとわかります。

将来のことを考えて、
長く使えるものを、
人生に意味のあるものを。
私たちはちょっと知恵がつくと、
そんなことを言い始めます。
そして、そんな宣伝文句につられて、
実際にものを買ってしまいます。
まあ、だいたい当初の目的を忘れたり、
利用することに飽きたりして、
モノを消費していくのですが。

気持ちが変化する、飽きちゃう、
買ったことによって興味を失う、
長続きしない。
そんな事がわかっているのなら、
買わない理由付けをするのではなく、
今この瞬間に欲しいものを買う。
それが自然なのかもしれません。

SDGsや省エネが叫ばれる時代に、
ちょっと時代錯誤な気もします。
しかし、
私たちがものを買うことにおいて、
価値を感じているのは「モノ」自体ではなく、
欲求を満たす「行為」ということなのです。

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- 著者自己紹介 -

人材会社、ソフトウェア会社、事業会社(トラック会社)と渡り歩き、営業、WEBマーケティング、商品開発と何でも屋さんとして働きました。独立後も、それぞれの会社の、新しい顧客を創り出す仕事をしています。
「自分が商売できないのに、人の商品が売れるはずがない。」と勝手に思い込んで、モロッコから美容オイルを商品化し販売しています。<https://aniajapan.com/>
売ったり買ったり、貸したり借りたり。所有者や利用者の「出口」と「入口」を繰り返して、商材を有効活用していく。そんな新規マーケットの創造をしていきたいと思っています。

出口にこだわるマーケター
松尾聡史

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