第84回 オーナー社長の事業承継

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自覚して生きている人は少ないですが、人生には必ず終わりがやってきます。人生だけではありません。会社にも経営にも必ず終わりはやって来ます。でもそれは不幸なことではありません。不幸なのは終わりがないと信じていること。その結果、想定外の終わりがやって来て、予期せぬ不幸に襲われてしまうのです。どのような終わりを受け入れるのか。終わりに向き合っている人には青い出口が待っています。終わりに向き合えない人には赤い出口が待っています。人生も会社も経営も、終わりから逆算することが何よりも大切なのです。いろんな実例を踏まえながら、そのお話をさせていただきましょう。

前回の本コラムでは、
オーナー経営者の場合は、
税金を避けて会社にお金を残し続けると、
事業承継しにくくなることをお伝えしました。

会社の成長にコミットすればするほど、
個人や家族に資金を移せず、
引退するときに社長個人に移すお金がないのです。
それが原因で、事業承継ができないわけです。

結局、事業承継する際に
資金の問題は切っても切れません。
事業承継をする際には、
オーナー個人と会社の資金を
どこかの日付で線引きしなければならず、
オーナーの思ったように資金の移転ができません。

個人の資産をつぎ込んで会社運営をしたり、
会社の資金リスクを一手に引き受けた、
オーナー社長はどこかで報われてもいいと思いますし、
それを主張するのは当然です。

ただ、資金移動の際に、
会社に有り余る現金があれば、
問題は起こりにくいのですが、
現金がないときは揉め事が起こります。

救いもあります。
日本の法律において、
資金を移転するのに優遇されるタイミングがあります。
つまり、税金優遇されるチャンスがあるのです。
これは以下の2回です。

1:社長を辞めた時の退職金
2:亡くなった時の相続

問題はその時に、会社に支払い原資があるかです。
だいたい、先行投資として使ってしまっています。
資産はあれど、現金はない状態です。
それに気づいている方は、支払い原資を準備していますし、
すぐに準備できない方は、
何年かかけて準備をしていくのが
上手な資金移転の方法と言われています。

金額の多寡にもよりますが、
事業承継に関してはご子息が継ぐのが
資金的にはトラブルが起きにくいのですが、
最近は家族が後継者でないケースがあり、
問題が先送りされがちです。

それもこれも、
社長には契約期間があり、寿命もあるのですが、
企業は永続的に続く前提で考えられています。
つまり、
社長には強制的に出口があるのに、
企業所有権の出口は、
自分が創り出さなければいけないのです。
オーナー社長の責任みたいなものです。

そう考えていくと、
社長の役割である組織や事業の承継と、
オーナーの財産や資金などの所有の承継は
別のものとして考えたほうが良さそうです。
2つを分けることによって、
会社の売却も考えることができますし、
もめ事の少ない事業承継となりそうです。

ただ、オーナー社長はだいたい
組織や事業も所有権も承継したがらないもんなんですよね。
死ぬまで仕事をしそうな人が多いですから。

 

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- 著者自己紹介 -

人材会社、ソフトウェア会社、事業会社(トラック会社)と渡り歩き、営業、WEBマーケティング、商品開発と何でも屋さんとして働きました。独立後も、それぞれの会社の、新しい顧客を創り出す仕事をしています。
「自分が商売できないのに、人の商品が売れるはずがない。」と勝手に思い込んで、モロッコから美容オイルを商品化し販売しています。<https://aniajapan.com/>
売ったり買ったり、貸したり借りたり。所有者や利用者の「出口」と「入口」を繰り返して、商材を有効活用していく。そんな新規マーケットの創造をしていきたいと思っています。

出口にこだわるマーケター
松尾聡史

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