大阪・兵庫を中心に展開する、高価買取・激安販売がモットーの『電材買取センター』。創業者である株式会社フジデン代表・藤村泰宏さんの経営に対する想いや人生観に安田佳生が迫ります。
第23回 フジデンが上場を「目指さない」理由
世の中には「上場」を目指す経営者も多いと思うんですが、藤村さんはどうですか? やっぱり今後のビジョンの1つとして、上場も考えられています?
うーん…ないですね。
へぇ、一度も考えたことないんですか?
正直に言うと、昔は考えていたこともありました。でも、知り合いの経営者さんたちの上場話を聞いた時に「これは僕には合ってへんな」と悟りまして(笑)。
そうなんですか?(笑) どんなところに違和感がありました?
僕の感覚ですけど、せっかく上場しても相応の資金が集まっていないように見えるんです。今の日本では、売上1000億円の規模の会社じゃないと上場のメリットはないように思えてしまって。
ふーむ。でも経営者にとって「上場企業の社長」になることは1つのゴールでもあるし、いわゆる「ステータス」になりません? …と思いましたが、藤村さん、そういうことにあまり興味ないタイプでしたね(笑)。
仰るとおりです。そういう「ステータス」なんて、全く興味がない(笑)。ちなみに上場に疑問を持つようになったのには、ある人の言葉も影響しているんです。
ほう。どなたですか?
アパホテルの代表の方です。その方が「上場は貧乏人がすることだ」って言っていて。
へぇ〜そんなことを仰っていたんですか! 確かにアパホテルさんは全株オーナーで、上場はされていませんね。
ええ。潤沢な資金がオーナーの手元にあれば、新しいことを始める時にも早いスピードで決断できるし、銀行に頼る必要もないと。それを聞いて驚いたと同時に、「そうか、お金と信用があれば、上場する必要性はないんやな」と。
なるほどなぁ。それに上場すると、結局のところは「株主のために」利益を出さなくてはいけなくなりますからね。「利益は給料で社員に還元する」という藤村さんの方針とはズレてしまいますね。
まさにそこなんです。僕は今「上場するために出店している」わけではなくて、「社員の給料を上げるために出店している」ので。そもそも会社の利益を株主に配分するというのは、目的が違うんです。
なるほどなるほど。
ちなみに今、『株式会社フジデン』は無借金経営なんですね。それから『株式会社電材センター』も、自己資本率が約40%で、目標としている60%には、あと3年もすれば到達できるだろうと考えていて。
つまり藤村さんとしては、会社の財務基盤をしっかり安定させて、なおかつ社員に高い給料を払える会社にしていくけれど、そのために「上場」する必要はない、と。
そうですそうです。誰にも文句を言われずに「増収増益して社員の給料を上げる」ためには、むしろ「上場しない方がいい」のかなと。
とは言え社員さんにとってみたら、自分が「上場企業の社員」になったら嬉しいんじゃないですかね。周りからの信用度が上がったり、ストックオプションで報酬がもらえたりもするし。
いやぁ〜…イチ社員がもらえるストックオプションの金額なんて微々たるものじゃないですか。しかも株を売れる時期なんかにもいろいろ制約があるし。それを狙って「社長、上場しましょう!」なんて言う社員、いないんちゃうかなぁ…。
確かに(笑)。私も実は社員さんたちは「上場すること」にそれほどこだわってないんじゃないかと思っていまして。社長さんからは「全社一丸となって上場を目指しています!」って聞いていても、実際、社員さんたちはそこまで盛り上がってない(笑)。
やっぱりそうですよね(笑)。自社株を持っている幹部とか役員クラスの人たちは別ですけど、多くの社員さんにはたいした問題じゃないんだと思います。
今の僕と同じように「社員の給料をどんどん増やす方針」を受け継いでくれる会社に買ってもらうのがいいと思っています。ただ現実問題、なかなかそういう人はいなくて…(笑)。
そりゃそうでしょうね(笑)。藤村さんほど「社員の給料アップに本気な経営者」って、なかなかいないと思います(笑)。
僕がいつか引退を考える頃までには、事業承継したいと思えるような方を見つけたいと思います。
対談している二人
藤村 泰宏(ふじむら やすひろ)
株式会社フジデンホールディングス 代表取締役
1966(昭和41)年、東京都生まれ。高校卒業後、友禅職人で経験を積み、1993(平成5)年に京都府八幡市にて「藤村電機設備」を個人創業。1999(平成11)年に株式会社へ組織変更し、社名も「株式会社フジデン」に変更。代表取締役に就任し、現在に至る。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。