大阪・兵庫を中心に展開する、高価買取・激安販売がモットーの『電材買取センター』。創業者である株式会社フジデン代表・藤村泰宏さんの経営に対する想いや人生観に安田佳生が迫ります。
第28回 社員の「失敗」を、褒めて表彰する会社
突然ですが、社員がミスをした時って、藤村さんは社長としてどんな対応をされているんです?
どうでしょうね。もちろんケースバイケースではあるんですが、前提として「失敗」なのか「ミス」なのかを考えますかね。
へぇ、失敗とミスは別物だと。もう少し詳しく教えていただけますか?
僕は「失敗」は「努力した結果」だと考えているんです。だからそれに対しては基本的には怒らない。一生懸命やったけど「失敗」してしまっただけなので。
なるほど。では「ミス」とはどういうものなんでしょう。
ミスというのは単純に、手抜きの結果なんです。雑な仕事や適当な対応をしていたから起こったこと。これはちゃんと怒りますね。
なるほど。…ということは変な話、起こった事象がまったく同じでも、そこに至るまでの本人の姿勢によって、「失敗」か「ミス」に分かれると。
僕はそう考えています。一生懸命に、真剣にやった結果ならOK。でも、手を抜いて起こったことならちゃんと怒る。そういう感じですね。ただなんというか、「ミスが多い人」というのはいますね。そういう人はだいたい「いつも人のせい」にしている。
あぁ、わかります。ミスを指摘すると「そんなの聞いていない。ちゃんと説明しなかった方が悪い」なんて言ったりして(笑)。
そうそう(笑)。僕はそれが一番許せないんですよ。「聞いてないからわからなかった」なんて、社会人がしていい言い訳じゃない。わからないなら尋ねるべきだし、情報がないなら自分から取りにいこうよと。
つまり「情報を取りに行かなかった」という手抜きが原因だから、それは「ミス」なわけですね。
仰るとおりです。一方の「失敗」は、「できることは全部やった。でも何らかの理由で失敗してしまった」ということで、全然意味が違うわけです。本人は全力でやっていたんだから、責める必要なんてない。むしろ褒めてあげてもいいくらいで。実際、社員総会で「大失敗したで賞」として表彰したこともあるくらいなんです(笑)。
なんですか、それ。気になります(笑)。
ある時、『電材買取センター』の店舗スタッフが、閉店直前にトイレの床掃除をしていたんですね。水をジャーっと出しながらキレイにしてくれていた。そんな時にご来店されたお客様がいらっしゃったので、彼女は慌てて接客しに行ったんです。
ふむふむ。それで?
彼女は一生懸命にお客様の対応をして、そのまま閉店作業をして帰った。…トイレの水を出しっぱなしにしたままね(笑)。たまたま別のスタッフが店舗に忘れ物を取りに来て、自動ドアを開けた瞬間…水がザザザーって勢いよく溢れてきたそうで(笑)。
えー?! お店が浸水しちゃっていたってことですか?
ええ(笑)。掃除に使っていたデッキブラシが運悪く排水溝を塞いじゃっていたみたいで。膝くらいの高さまで水が上がってきていたそうです。
うわ〜それはかなりの大損害ですよね。それでも怒らなかったばかりか、表彰までしちゃったんですか。…すごいですね(笑)。
いやいや、それはもう怒る必要なんて全くない話なんです。だって普段からやるべきことをしっかりやっていた結果、ちょっと「失敗」しちゃっただけなんですから。
真面目に仕事をしていたけど、やらかしちゃったのは、しょうがないというわけですね(笑)。
仰るとおりです。だから僕がいつも幹部や役員に言ってるのは、「僕の仕事は社員を褒めること。叱らせるようなことはさせないで」ということなんです。
つまり「ミス」をさせないように、しっかり社員の指導をしてください、ということですね。
そうですそうです。僕はひたすら褒めるだけ。「失敗」も褒める。社長ってのはそういう役割なんですよ。
対談している二人
藤村 泰宏(ふじむら やすひろ)
株式会社フジデンホールディングス 代表取締役
1966(昭和41)年、東京都生まれ。高校卒業後、友禅職人で経験を積み、1993(平成5)年に京都府八幡市にて「藤村電機設備」を個人創業。1999(平成11)年に株式会社へ組織変更し、社名も「株式会社フジデン」に変更。代表取締役に就任し、現在に至る。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。