第7回 「新卒採用」は、経営者人生で初めて感じた「楽しさ」だった

この対談について

大阪・兵庫を中心に展開する、高価買取・激安販売がモットーの『電材買取センター』。​​創業者である株式会社フジデン代表・藤村泰宏さんの経営に対する想いや人生観に安田佳生が迫ります。

第7回 「新卒採用」は、経営者人生で初めて感じた「楽しさ」だった

安田

前回に引き続き、今日も『電材買取センター』の新卒採用についてお聞きしていこうと思います。最初の高卒採用では、2年間で12人を採用したんでしたっけ?


藤村

そうです。とは言え、定着はあまりしませんでしたね。やはり高校を卒業したばかりの若い方には、接客業は難しかったんでしょう。

安田

ふーむ、なるほど。そこで対象を大学生に変えて。大卒は何人くらい採用したんですか?


藤村

毎年4〜5人は採用していましたね。

安田

毎年そんなに多く?! 何度も聞くようですが、その時もまだ赤字だったわけでしょ? それなのにどんどん社員が増えていくじゃないですか(笑)。


藤村

そうなんですよ。店舗も増やしていましたから、ますますお金ばかり出ていってしまって(笑)。しかも店舗はワンオペで十分に回るシステムだったので、そんなに多くの社員は必要なかったんですよ。結果、常にお客さんより従業員の方が多い状態だったりして(笑)。

安田

笑。ちなみに「このお金を使い切ったら閉店」と、最初に2000万円を準備していたわけですが、それがなくなった後も続けていたわけですよね。最終的にはどれくらい使ったんですか?


藤村

6000万円ほどですかね…(笑)。なおかつ『電材買取センター』の純損失が1年で3600万円ありましたから。

安田

そんなに…! そのキャッシュはどうしていたんですか?


藤村

キャッシュは安田さんのアドバイス通りどんどん借りていましたので、7億円くらいあったんですよ(笑)。

安田

7億円も!? でもさすがに4000万円近い純損失を出していたら、銀行も難色を示しそうなものですが…。


藤村

それで言うと、電材買取センター単体だとそうなんですけど、ヤマダデンキさん関連の方は黒字だったんです。だから会社全体としては5000万円くらいの収益があったんですね。

安田

ああ、なるほど。でも、そもそも確実に利益が出る事業があるんだから、『電材買取センター』を閉めてしまえば会社としては楽になる。そうは思わなかったんですか?


藤村

うーん、いや、そんなこと全然考えなかったなぁ。

安田

つまり「いずれ電材買取センターは黒字になる」という確信があったと。


藤村

いえ、そんな見込みも全くなかったです(笑)。でもなぜか、その頃にはもう「閉めよう」って意識はまったくなくなってましたね。

安田

うーん……私も散々「おかしい」と言われてきましたが、藤村さんもなかなかですね(笑)。


藤村

笑。1つ理由を挙げるなら、採用活動がすごく楽しかったんですよね。僕の会社を選んでくれた若い子たちと一緒に仕事する。それが楽しくて仕方なくて、勇気や元気をたくさんもらえたんです。それまでの僕の経営者人生って、常に「破産」から逃れるために手を尽くすだけだったから。

安田

ははぁ、なるほど。初めて「経営する喜び」を感じたと。


藤村

そうそう。新卒採用した子たちに「キミたちはいい会社で働けているんだよ」と胸を張って言えるようになりたい。そんな想いでひたすら社内の改善や改革を進めていました。

安田

なるほどなぁ。…ん、ちなみにその前の事業はどうだったんです? エアコン工事を通じて、そういう喜びを感じることはなかったんですか?


藤村

うーん、正直なところ、なかったかもしれない。

安田

ふーむ。でも、経営者的に「割の良い仕事」なのは間違いないじゃないですか。自社の社員は必要最小限にして、業務委託の職人さんを手配するだけでいい。それですごく儲るんだから。


藤村

仰るとおりなんですが、いかんせん「ありがとう」と言われることが全くない仕事で…。それが辛かったですね。現場にいる職人さんたちは言われていたかもしれないけど、僕らが登場するのはクレーム処理の時だけだから。

安田

あぁ、そうか。何かトラブルがあった時に、お客様のところへ謝りに行くのが仕事なんですね。


藤村

そうそう。それに「手配するだけ」と言っても、職人さんたちにはすごく気を遣いますし、発注元のヤマダデンキさんからクレームを受けることもある。つまりヤマダデンキ・職人・お客様の三方に頭を下げ続ける仕事だったので、そんなに好きにはなれませんでした。

安田

なるほど〜。それよりは新卒採用した若い子たちと、お客さんから「ありがとう」を言われる仕事の方が楽しかったわけですね。


藤村

仰るとおりです。社員たちとワイワイ一緒に事業をやっているのが楽しい。儲けるのは二の次。その気持ちは今も変わらず僕の中にあります。

 

 


対談している二人

藤村 泰宏(ふじむら やすひろ)
株式会社フジデンホールディングス 代表取締役

Facebook

1966(昭和41)年、東京都生まれ。高校卒業後、友禅職人で経験を積み、1993(平成5)年に京都府八幡市にて「藤村電機設備」を個人創業。1999(平成11)年に株式会社へ組織変更し、社名も「株式会社フジデン」に変更。代表取締役に就任し、現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

感想・著者への質問はこちらから