第18回 無価値なものに目を向けよう!

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第18回 無価値なものに目を向けよう!

安田

今回は「無価値の価値」についてお聞きしたいと思います。というのも以前藤原さんが「無価値の価値を考えることで、新たな価値が発見できる」というようなことを仰っていて。


藤原

ああ、なるほど。だいだいにおいてわかりにくい私の理論の中でも、それは特にわかりにくい話かもしれません(笑)。普通の経営者さんには理解してもらえないかも……

安田

笑。まぁ実際、普通の経営者さんは、「無価値のもの」じゃなく「価値のあるもの」に興味がありますからね。要するに「自分の感覚で価値が理解できるもの」でビジネスをしたがる。


藤原

仰るとおりです。ただ、時には「自分には価値があるとは思えないもの」についても考える必要がある、という話で。要は自分の知っていることだけ、興味があることだけに意識を向けるのではなく、もっと視野を広げて、他者の価値観にも興味を持とうということです。

安田

なるほど。自分の価値観だけで商売をしていたら、新しい価値を生み出すことはできないよ、ということですね。こういう話でよく例に出るのは美術館や博物館ですけど。


藤原

ああ、確かに。ああいうものの運営費を「無駄だ」と言う人は一定数いますよね。もっとわかりやすくお金を生み出すものに投資すべきだ、と。

安田

そうそう。そういうのって、やっぱりちょっと視野が狭いなと私なんかは感じてしまうんですよ。


藤原

わかります。ちょっと別の話ですが、日本って飲食店に入ると水はタダじゃないですか。お茶を無料で出してくれるところも珍しくない。一方でコーヒーは「〇〇フラペチーノ」「〇〇ラテ」などといって、600〜700円もする。

安田

ああ、確かにね。考えてみれば不思議です。飲食店に入って「緑茶は700円です」と言われたら絶対驚きますもん。


藤原

そうそう。旅館に行けば、無料どころか「お疲れになったでしょう」と仲居さん自らお茶を入れてくれるわけですよ。そして日本人はそれを当たり前だと感じる。これ、つまり「緑茶というものはお金を払う価値がない」と思っているということですよね。

安田

確かに。つまり「無価値」だと思っているわけだ。


藤原

そうそう。でも例えば「流氷の中に1000年あった水」「10年に一回しか取れないお茶」みたいなものだったらどうです? それは◯◯フラペチーノなんかよりずっと価値があるでしょう?

安田

ああ、なるほど。でもそれは、実際にそういう付加価値がある水やお茶の場合ですよね。ただの水、ただのお茶に価値を付けるにはどうすればいいんです?


藤原

まさに「そこを考えてみるのも面白いですよ」という話なんです。頭を捻って、無価値なものに価値を与えていく。というのも、日本の企業って、値段を決めるときにひたすら「原価」で考えるでしょう?

安田

ああ、確かに。原材料が◯%上がったから、場所代が高騰したから値上げします、みたいなのばっかりですよね。


藤原

そうそう。商品開発の工程なんかでも「仕入れ値はいくらで、人件費はいくらで…」と考えているうちに、結局「原価はいくらだから、この商品の価値は◯円だ」みたいな思考に陥ってしまう。

安田

ああ、分かる気がします。そもそものアイデアはすごく価値のあるものだったのに、そういう先入観が邪魔して高い金額をつけれないわけですね。


藤原

そうそう。そういう考えを一旦ストップして、「どうすれば10倍の値段で売れるだろう」みたいな方向で考えたら、新しい道が開けていくと思うんです。

安田

ははぁ、なるほど。金やダイヤの価値は誰でも知ってますけど、ちょっとした工夫をすることでさらに価値を上げることも可能かもしれないですよね。すごく斬新な梱包方法で売り出したり、あるいは新しい価値を提案するようなキャッチコピーを添えたり。


藤原

まさにそういうことです。既に知られている価値じゃなく、自ら新しい価値を探しにいくんです。「無価値の価値を考える」というのはそういうことです。

安田

ははぁ、なるほど。…でもそれって、言うほど簡単じゃないと思うんですよ。どうやったら「無価値の価値を考える」ことができるのか。かく言う藤原さんはそのスキルを磨くために何をされてきたんですか?


藤原

なんというか、人生自体がその修業という感じです(笑)。旅行に行っても、誰かと会食していても、常に「無価値の価値」を考えるようにしています。まぁ、それだとあまりに漠然としていると言うなら、個人的には「メルマガ」を書くことをオススメしますね。

安田

ふむ。メルマガですか。それはどうして?


藤原

その「無価値の価値」の話に限らないんですが、思考の整理に最適なんです。人間の思考って本人が思っているよりグチャグチャしているので、それを文字という形に整理してアウトプットすることで、単なる思いつきだったものがビジネスアイデアになったりする。

安田

ははぁ、なるほど。私自身もメルマガを書いているので、その感覚はすごくよくわかります。


藤原

そうでしょう? 先ほど話に出た商品開発の場でも、新しい商品価値を作ろうとしているときに「あ、あのときメルマガに書いたアイデアが使えるかも」なんてパッと思いついたりもする。つまり新たな価値を生み出しやすくなるんです。

安田

ははぁ、確かに。自分の思考も整理できるし、商品開発のアイデアを生み出す材料にもなるなんて、まさに一石二鳥です。


藤原

そうなんですよ。その割に、自分の思考を文章にアウトプットしている経営者さんって意外と少ない。これはもったいないなぁと。

安田

確かにそうですね。これを読んでいる経営者さん、騙されたと思ってぜひメルマガを書き始めてください(笑)。ちなみに、そもそも「価値」って人それぞれだったりするじゃないですか。例えば経営者さんも、お金の使い方は様々でしょう?


藤原

確かにそうですね。同じ額を稼いでいても、使い方はバラバラだったりしますし。

安田

そうそう。パーッと銀座のお姉さんに使う社長もいれば、自分は一切遊ばず全部社員に還元する社長もいる。


藤原

そうですね(笑)。「お金の使い方」というのはその人の価値観を良くも悪くもあらわにしますね。

安田

まさにそういうことが言いたかったんです。つまり、社長のお金の使い方が、会社のイメージはもちろん、従業員満足度にも大きく影響すると思っていて。


藤原

確かに、価値観というものはその人の一挙手一投足に自然と出てしまう。会社というのは結局、社長を中心とした人間の集まりですから、あらゆる面で影響はあるでしょうね。

安田

でもそう考えるとですよ? 自己中心的な価値観を持った社長が、先ほどから話に出ている「無価値の価値」を考えても、あまりいい結果を生まないような気がしませんか。


藤原

確かにそれはそうかもしれませんね。というか、そういう人は厳密に言うと「無価値の価値」を“考えられない”んですよね。考えているつもりでも、結局すべて「自分の価値観」の上で考えているわけで。

安田

ああ、なるほど。たとえば「この日本酒は美味い! この価値を世界に広めたい」と言いながら、和食を食べるときに練りワサビを使っていたり。


藤原

笑。日本酒で世界に打って出るならそこは天然ワサビを使ってほしいと(笑)。まぁ食の好みは人それぞれですけど、確かに説得力はないかな。

安田

ですよねぇ(笑)。多分自己中心的な人は、「俺は練りわさびのほうが好きなんだ!」という感覚で突っ走っちゃうんでしょう。あるいはそもそも他人の価値観に興味がないか。


藤原

その可能性は高いと思います。逆に言えば、新たな価値を生み出したいなら、他人の価値観をしっかり理解することが重要で。つまり「無価値の価値」を創造するためには、「他人の価値観」に着目することが必要不可欠なんですよ。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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