第41回 「自責思考」の育て方

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第41回 「自責思考」の育て方

安田

「自責思考」と「他責思考」について最近よく考えるんです。一般的には「自責思考」の方が高く評価されますよね。


藤原

そうですね。以前、悩みの質についてもお話しましたけど、自責思考の方が人生の幸福度も高いと思います。

安田

そうですよね。一方で、他責思考になってしまっても仕方ないんじゃないか、という場合もある。例えば就職氷河期世代は、他の年代に比べて明らかに厳しい状況だった。こういう中では皆が「世の中のせいだ…」と他責思考になってもおかしくない気はするんですよ。


藤原

確かにそうかもしれませんが、だからといって就職氷河期世代の全員が他責思考かというと、そんなことはないわけです就職で苦労したからこそ、一発奮起して起業して大成功を収めた人もたくさんいますし。

安田

ふーむ、確かにそうですよね。そう考えると「自責」も「他責」も、年代や時代性でくくれるものじゃなさそうですね。


藤原

そう思います。どちらかというと、生まれつきの癖に近いくらい、物心つく頃にはすでに備わっているものかもしれません。そもそも自分が恵まれているかどうかなんて、比較対象次第でどうとでも言えてしまう。例えば戦争中の人々と比べたら、氷河期世代だって十分に恵まれているわけで。

安田

確かになぁ。つまり、「どこに焦点を当てるか」なんでしょうね。松下幸之助さんも「恵まれない環境に生まれたことが、実は恵まれていたんだ」と言っていますし。貧しさや体の弱さといった「恵まれない環境」こそが彼を強く育てることになった。


藤原

ええ。おそらく彼も自責思考だったからこそ、そこから成長できたんだと思います。

安田

なるほど。ちなみに私はというと、恵まれてなかったというよりもとにかく苦手なことが多くて。学校では勉強どころか音楽や体育、美術に至るまですべてが苦手で、テストは0点ばかり、走るのも遅い。性格は暗いし嘘ばかりつく嫌われ者でした(笑)。


藤原

へぇ〜、今の安田さんからするとなかなか信じがたいですけどね(笑)。そこからワイキューブ時代の安田さんにどうつながっていくのか……

安田

自分でも不思議です(笑)。ただ、何もかもうまくいかないような状況でも、あまり他責思考になったことはないんです。なぜか自分を「神様にえこひいきされ続けている人間だ」と思い込んでいる節があって。


藤原

そうなんですね。苦手なことだらけで苦労している割に、素晴らしくポジティブだったんですね。

安田

そうなんです(笑)。たとえ悪いことが起きても、「神様は僕のためにこんなシナリオまで用意してくれたのか」と。むしろ自分だけがえこひいきされ過ぎてるんじゃないかと心配になるくらい。


藤原

へぇ、すごいなぁ。なんでそこまで思えるようになったんでしょう?

安田

うーん。性格が明るかったり前向きだったりというわけではないんですよね。どちらかというと気が弱い方なので。そう考えると、周り人の影響が大きいような気もします。


藤原

ははぁ、なるほど。確かに周囲にどんな人がいるかで捉え方って変わりますもんね。ちなみに私も、勉強も運動も苦手で、喧嘩も弱かったんです。そして安田さんと違って「なんて自分は恵まれていないんだ」と思っていた(笑)。

安田

そうなんですね(笑)。つまり少なくとも小さな頃は、藤原さんは「他責思考」だったと。


藤原

ええ。何かうまくいかないとすぐ人のせいにしてました。「親が悪い」「学校が悪い」と嘆いて、そのくせ自分では何もせずグズグズしていたような記憶があります(笑)。

安田

へぇ、人には意外な過去があるものですね(笑)。


藤原

そうですね(笑)。ただ、それがいつからか自責思考になっていた。今思うと、「自責思考で生きた方が得だな」とどこかのタイミングで気付いたんでしょうね。

安田

そうそう。本当にそうなんです。自責思考の方が損得で考えても圧倒的に得だし、人生が楽しくなりますよ。私も20年間オーナー社長をやったことで、さらに自責思考が確固たるものになった実感があります。社長業って誰のせいにもできないポジションですから。


藤原

でも、意外と社長でも他責思考の人いますよね?

安田

確かにいます。不思議ですねぇ(笑)。業界や地域のせいにしたり、「今の日本の政治家がよくないから」みたいなことを言ったり。


藤原

そうそう。「従業員がダメだから業績が上がらない」とか平気で言ったりね。

安田

そう考えると、社長業だからといって自然と自責思考になれるわけじゃないのかもしれませんね。意識的にそうする、あるいは藤原さんが仰るように自ら気付く必要がある。


藤原

仰るとおりですね。「ES(従業員満足度)」の観点で言っても、まずは社長が自責思考になって、さらにそれを従業員に伝えていくことが重要な気がします。「自責思考の方が人生の幸福度は上がるんだよ」と啓蒙していくというか。

安田

その通りなんですよね。他責思考の人は「人のせいにしていたら不幸にならずにすむ」と思っているのかもしれませんが、むしろそれ逆なんですよね。自分を幸せにできるのは自分だけなのに、そのパワーを自ら放棄してしまっている。


藤原

まさにそうですね。でも自責思考に変われば、「どう自らを変えていこう」という発想になる。つまり自走できるようになるので、結果周囲の状況もどんどん変わっていくわけで。

安田

そうなんですよね。そこに早く気づけるかどうかが、人が幸福に生きていくキーなのかもしれませんね。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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