第29回 まずいものこそ、カラダに良い。

この対談について

健康人生塾の塾長にしてホリスティックニュートリション(総括的栄養学)研究家の久保さんと、「健康とは何か」を深堀りしていく対談企画。「健康と不健康は何が違うのか」「人間は不健康では幸せになれないのか」など、様々な角度から「健康」を考えます。

第29回 まずいものこそ、カラダに良い。

安田
久保さんのFacebookをよく拝見しているんですが、先日春菊について書かれていましたよね。

久保
ええ。「春菊にはカロテンやミネラルが多く含まれていて、サラダや和え物にしたり汁物に入れると美味しいですよ」というようなことを書きました。
安田
実は私、春菊があまり好きじゃないんですよ。子どもじゃないんだからと言われそうですけど(笑)。

久保
そうでしたか(笑)。
安田
好みは人それぞれでしょうけど、少なくとも子どもが美味しいと感じる味ではないように思うんです。かといって、大人になったら自然と美味しく感じるようになるかというと、そこにも疑問があって。

久保
と言いますと?
安田
大人が言う「美味しい」って、「健康にいいものだから、(カラダにとっては)美味しいに違いない」という意味もある気がして。春菊なんてその最たるものじゃないかと私は睨んでいるんです(笑)。

久保
笑。つまり、味わいとしては美味しくないんだけど、カラダは喜んでいる、だからこれは“美味しい”のだということですね。
安田
そうそう。実際、我々の世代は「カラダに良いものはまずくて、美味しいものはカラダに悪い」ってイメージがあるんですよ。良薬口に苦し、というのと同じような意味で。

久保
ああ、確かに。実際「薬」という漢字は「草で楽になる」と書きます。つまり昔の人々は、植物の中に薬のような成分があるということを知っていたんでしょうね。
安田
なるほど。つまり、美味しさより「薬効」を期待して食べていたものもあったと。

久保
そうなんだと思います。そもそも薬効というのは、言ってみれば「毒」なんですよね。その量や成分を調整することで、カラダの不調を治すのに役立てている。
安田
そうか。それならむしろ不味くて当たり前だ。

久保
そうなんです。なぜ植物の中に薬効のようなものがあるのかと言えば、それは虫などに葉っぱを食べられないように、虫が嫌う苦味成分などを取り込んでいるからです。不味いからこそ意味があるわけで、美味しくしてしまったら元も子もない(笑)。
安田
確かに(笑)。つまり自分の身を守るために、自らを美味しくなくしたわけですか。すごいなぁ。

久保
抗酸化成分などもそうですよね。植物は光合成をしますが、紫外線にやられて酸化してしまうと枯れて死んでしまう。だから「抗酸化成分」が必要になるんですね。
安田
なるほど。確かポリフェノールも抗酸化成分ですよね。

久保
仰る通りです。ブドウやブルーベリーなどにはポリフェノールの一種であるアントシアニンが多く含まれています。これも、植物が自分の身を守るために抗酸化作用のある成分を作り出しているわけです。
安田
ポリフェノールも渋味や苦味が強くて、美味しいものではないですよね。でも、カラダには良いと。

久保
そういうことです。そして昔の人は、そういう効用のある植物をすり潰して飲むことで病原菌をやっつけていた。まさに「薬」のような使い方をしていたんです。
安田
なるほどなぁ。植物が外敵や環境の変化から身を守るために作り出した成分を、人間が使わせてもらっていたんですね。それが巡り巡って「まずいけど、カラダには良い」という考え方になると。

久保
そうなりますね。ところで美味しくない植物としてよく挙がるのが、青汁などでお馴染みのケールです。私も決して美味しいとは思いませんが(笑)、ケールって実は季節によって味が変わるって、ご存知でしたか?
安田
え、そうなんですか? 知りませんでした。

久保
以前勤めていたファンケルで聞いた話なんですが、夏よりも冬に採れたケールの方が甘いんですって。
安田
へぇ! ケールなんて、年がら年中まずいのかと思っていましたけど(笑)、違うんですね。

久保
そうなんです。というのも、夏は虫から身を守るために葉が苦くなるんですって。一方で冬は、虫ではなく寒さから身を守る必要がある。寒くて葉が凍ってしまうと、細胞が壊れてしまいますから。
安田
ああ、なるほど。季節によって目的が変わるわけですね。だから冬は「毒」が減って美味しくなると。

久保
そうそう。と言っても、別に人間の味覚に合わせたわけではなく、糖分を増やすことで粘度を高くし、防寒性を高めるんだそうです。実際に冬に採れたケールで作った青汁を飲んだら、砂糖が入っているのかと思うほど甘くてびっくりした覚えがあります(笑)。
安田
へぇ。でもそんなに甘くても、つまり「毒」が減っても、健康的な成分は変わらないんですか?

久保
それはなぜか変わらないそうです。不思議ですよね。
安田
ところで、最近の野菜って昔に比べて食べやすくなった気がしませんか? 以前よりも美味しくなったというか…。

久保
ああ、確かにそうかもしれません。
安田
この前、生の人参スティックを食べながら「昔の人参なんて、固くて不味くてとてもこんな食べ方はできなかったぞ?」って思ったんですよ。食べやすくなって嬉しいんですが、一方でそれは栄養が減ってしまっているということでもあるのかなと。

久保
実際そういう面はあると思います。品種改良をすることでえぐみや苦味を無くしているわけですが、そのえぐみ・苦味の中にこそ薬効成分があるわけで。
安田
食べやすくて美味しいものばかりじゃよくないぞ、と。

久保
ええ。とはいえ、これは時代の流れとして仕方ないことなんだとも思います。そもそも昔は、糖質を摂ることが非常に難しかったんですよね。だからこそ甘いものに「美味しさ」を感じ、食べたいと思った。
安田
結果人間は、その本能的な欲求を超刺激するような食べ物を自ら作り出してしまったわけですね。

久保
そうそう。せっかく美味しいものが溢れているんだから、もう今さらまずいものは食べたくない。ある意味これは本能の話なんですよ。
安田
でも糖質ばかり摂っていては不健康ですよね。やっぱり、「カラダに良いものはまずい」という結論になりませんか?

久保
そうですね。カラダに良いものは、食べにくい・飲みにくい・まずい、ということでいいと思います(笑)。

 


対談している二人

久保 光弘(くぼ みつひろ)
健康人生塾 塾長/ホリスティックニュートリション研究家

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仙台出身、神奈川大学卒。すかいらーくグループ藍屋入社後、ファンケルへ。約20年サプリメントの営業として勤務後、2013年独立し「健康人生塾」立ち上げ。食をテーマにした「健康人生アドバイザー」としての活動を開始。JHNA認定講師・JHNA認定ストレスニュートリショニスト。ら・べるびい予防医学研究所・ミネラル検査パートナー。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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