第54回 一流の経営者が求める「相互メリット」の流儀

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第54回 一流の経営者が求める「相互メリット」の流儀

安田

以前藤原さんは「一流の経営者は一方的なメリットを喜ばない」ということを仰っていましたね。私もそこはすごく共感するポイントでして、ぜひ深掘りしてみたいなと。


藤原

ああ、ありがとうございます。

安田

一流であればあるほど「相互メリット」を求めるということですけど、一般的にはむしろ逆のイメージがある気がするんです。一流の経営者、つまり儲けてる人ほど「自分の利益」ばかりを追求しているんじゃないかという。


藤原

そうですね。実際、僕自身も若い頃はそういうイメージを持ってました。経営者は皆自分が儲かることばかり考えているんだって(笑)。

安田

藤原さんにもそんな時期があったんですね(笑)。まぁ確かに、「生き馬の目を抜く」なんて言葉もあるくらいですからね。ビジネスの世界は「やるかやられるか」だと。


藤原

そうそう。でもいろいろな経営者さんにお会いする中で、「ああ、この人は一流だな」と感じる人ほど、こちらのメリットを考えてくださるんですよ。そういう実体験を通じて、だんだんと意識が変わっていきました。

安田

私もまったく同感でして、だからコラボや提携をするときには、必ず相手が自分より多くのメリットを得られるようにと考えているんです。「相手が7で自分が3」くらいのバランスでいると、相手も一生懸命ギブをしてくれようとするのでゆったり構えていられる。


藤原

本当にそうですね。ビジネスを長く安定して続けていくには、「いかに相手にメリットを感じてもらえるか」がすごく大事だと思います。

安田

そうそう。とはいえ、「とにかく与えなきゃ!」って肩肘張っているわけじゃないんですよね。その方が自分に余裕が生まれるし、結果的には主導権を握りやすくもなる。要するにギブしていた方が自分のメリットも大きいんです。


藤原

わかります。僕も相手が「メリットを与えてくれてるな」と感じるほど、「返さなきゃ!」って思うんですよ。まさに「返報性の原理」が働いてるんでしょうね。結果、相手側の方により多くのメリットが生まれることも多くて。

安田

本当にそうですね。いわゆる「ギバーとテイカー」の話だと思うんですが、ただ実際の世の中には、テイクはするけどギブはしないという人もいる。


藤原

ああ、なるほど。こちらがギブをしても全然返ってこないパターンがあると。

安田

そうそう。だからギバーにも2種類あると言われてるんです。世の中で一番豊かな層もギバーなんだけど、逆に一番貧乏なのもまたギバーだと。「貧乏なギバー」にはなりたくないですけど、かといって返ってくるところだけにギブをするのもちょっと違うじゃないですか(笑)。


藤原

同感です(笑)。明らかに見返りを期待しているようで、違和感がありますよね。でも、じゃあどうすればいいんでしょうね。

安田

私は「貧乏なギバー」になっちゃう人にも原因があると思っていて。多分そういう人は、単純にギブの量が足りないんですよ。1人にギブして、返ってこなくて、悲しんでいる。そうじゃなくて、10人100人にギブをすればいい。そうすれば1割か2割か、運が良ければ3割くらいは返ってくるんです。


藤原

なるほどなるほど。そうやって返ってきたギブを、改めて別の誰かにギブしていく。それがいい循環になっていくんですよね。1回か2回返ってこなかっただけでやめてしまうと、その循環が起こらないからだんだんと貧しくなってしまう。

安田

そのとおりです。「失敗したところでやめてしまうから失敗になる」ってよく言われますけど、それと同じなんでしょうね。


藤原

とはいえ、天性のテイカーのような人もいるので、そこの見極めは必要だとは思いますけど。

安田

なるほど。確かにそうですね。ちなみに藤原さんはどうやってテイカーかどうかを見極めてるんですか?


藤原

本来の業務以外の部分でのご要望が多かったりすると、ちょっと危険信号かなと思いますね。例えば流通業だと、小売店から「陳列や棚卸しを手伝ってくれ」なんて頼まれたりするケースもあると聞きます。

安田

ああ、商品やサービス以外で労務提供を求められると。


藤原

そうそう。最近はだいぶ少なくなったようですけど、一昔前はどこも当たり前のようにありましたからね。中には新規オープンの初回在庫は全部の商品を1円で納入しなさいよ、という「1円納入」なんていう慣習もあったりして。

安田

へぇ! そんなことがあったんですね。こちら側からサービスで提案するならまだしも、取引先から要求されるわけですか。

藤原

そうなんです。「1円で納入したら、棚を使わせてあげますよ。そしたらリピートで儲けられるでしょう?」という理屈なんですけど、今思うと驚きですよね。

安田

本当ですね。でもそういう気質がまだ残っているところもあるんじゃないですか? どう対応するのがいいんでしょうね。

藤原

それでいうと、うちはそもそもクレドにも「相互利益を追求します」と明記しているんです。だから「本来の商品以外のものを求めているな」と感じたら、「相互利益を目指しましょう」ときちんと伝えるようにしています。

安田

なるほどなぁ。でもそれをハッキリ言うには、相応の実力がないと難しいですよね。商品力に自信がなかったり、相手のインフラを利用しないと売上にならないような会社だったら、そこまで強気に出れないですから。


藤原

そうかもしれません。とはいえ優越的地位の濫用は法律でも禁止されてますから、堂々としていればいいと思いますけどね。

安田

確かに仰るとおりですね。そう考えると、結局はこちらの自信のなさがテイカーを生み出しているという現実もあるのかもしれませんね。

藤原
そうかもしれません。そこから抜け出すためには、やはり自分が強くあれる場所を選んでいく必要があるということだと思います。

 

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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