第77回 多様性の時代に朝礼は必要か?

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第77回 多様性の時代に朝礼は必要か?

安田

いわゆる「社内の儀式」ってあるじゃないですか。朝早く出社して掃除やラジオ体操をしたり、朝礼なんかは今もやっている会社は多いですよね。そういうのってなんとなく時代遅れな気もするんですが、ES(従業員満足度)の観点からいうとどうなんでしょう?


藤原

仰るとおり、やや時代遅れな感はありますが、一概にダメとは言えないと思いますね。そういう文化が好きなスタッフが集まっていれば、むしろいいことかもしれない。例えば出社前にオフィスの近隣の清掃が習慣化されていて、それを「社会貢献」として誇りに思えていたり。

安田

ああ、なるほど。確かにうまく機能しているケースもありますよね。


藤原

ええ。ただ一方で、「こんなの意味がない」と思っている社員が多数いる中での強制は、ESを下げる要因になってしまいます。

安田

ふーむ、確かに。ともあれ、以前も内的報酬の話で「人によって何を喜ぶかは違う」って仰っていましたけど、朝礼やラジオ体操って好きな人もいればそうじゃない人もいると思うんです。そうなると全員が前向きに取り組むのって難しくないですか?


藤原

そうですね。そういう意味でも、会社の方針としてやるなら、「業務の一環」として報酬と紐づける必要があるでしょうね。

安田

そうですよね。でも仮に報酬がもらえたとしても、「仕事だから仕方なくやる」というスタンスになってしまいませんか? それこそ近所の清掃とかも。


藤原

だからこそ、採用段階で「うちにはこういう文化があります」と伝えておく必要はあるでしょうね。少し前に話題になった「夢を大声で叫ぶ」みたいな朝礼も、あれでモチベーションが上がる人もいれば、ただの苦行に感じる人もいますから。

安田

あらかじめ伝えておいて、納得した人だけ入ればいいわけですね。確かにある日突然「明日から夢を叫ぶ朝礼に変える!」なんて言われたら、戸惑っちゃいますもんね(笑)。


藤原

ええ(笑)。まぁ、どんな文化にしていくにしろ、トップダウンで強制するより、従業員の価値観とすり合わせた方がうまくいくという単純な話でもあります。

安田

そりゃそうですよね。でも考えてみたら、儀式的な習慣って「全体統一」が前提だから、余計に問題が起こりやすいのかもしれないですね。特に今は「多様性の時代」で、同じ会社の中にもいろんな考え方の人がいるわけで。


藤原

確かに、多様性を維持しつつ儀式的な習慣を続けるのは難しいでしょうね。だから一旦の結論としては、「全員参加の強制は避けた方がいい」。どうしてもやるなら、「なぜこれをやるのかを丁寧に説明し、納得してもらう」が必須になってくるでしょう。

安田

確かに「納得感」って大事ですもんね。うまく理解してもらえればES向上にも繋がるかもしれないし。


藤原

そう思います。そういえば、「掃除の神様」と言われたイエローハット創業者の鍵山秀三郎さんのエピソードはご存知です?

安田

ああ、「日本を美しくする会」を立ち上げたり、会社でもトイレ掃除を徹底していたんですよね。


藤原

そうそう。でもそれを社員に強制したわけじゃなく、ただ彼自身が黙々と掃除を続けた。そしてそれに共感した社員が、自発的に参加していった。

安田

そんなふうに「やりたい人がやる」っていうのが、理想的なスタイルなのかもしれませんね。ただ掃除や体操と違って、朝礼は完全に任意にはしにくい文化ですよね。社長の話が面白いとか、意味のある朝礼ならいいんですけど、現実にはそうじゃない会社が多い。


藤原

確かに、「朝礼は当たり前」と思っている人も多いですからね。うちの会社でも朝礼はやっていますが、私自身は必ずやるべきだとも思っていないんです。それよりも「何のために朝礼をするのか」がメンバーに伝わっているかどうかが大事で。

安田

なるほどなるほど。何も考えずに週に1回集まって、社長のありがたい話を聞くだけ、みたいな朝礼は意味がないんでしょうね。


藤原

そういう朝礼ならやめた方がいいかもしれません。情報共有だけならデジタルツールでできますし。でも生の声や空気感って、やっぱり伝わるものがある。だからこそ、臨機応変な対応が必要なんだと思います。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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