人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。
第77回 多様性の時代に朝礼は必要か?

いわゆる「社内の儀式」ってあるじゃないですか。朝早く出社して掃除やラジオ体操をしたり、朝礼なんかは今もやっている会社は多いですよね。そういうのってなんとなく時代遅れな気もするんですが、ES(従業員満足度)の観点からいうとどうなんでしょう?

仰るとおり、やや時代遅れな感はありますが、一概にダメとは言えないと思いますね。そういう文化が好きなスタッフが集まっていれば、むしろいいことかもしれない。例えば出社前にオフィスの近隣の清掃が習慣化されていて、それを「社会貢献」として誇りに思えていたり。

ふーむ、確かに。ともあれ、以前も内的報酬の話で「人によって何を喜ぶかは違う」って仰っていましたけど、朝礼やラジオ体操って好きな人もいればそうじゃない人もいると思うんです。そうなると全員が前向きに取り組むのって難しくないですか?

だからこそ、採用段階で「うちにはこういう文化があります」と伝えておく必要はあるでしょうね。少し前に話題になった「夢を大声で叫ぶ」みたいな朝礼も、あれでモチベーションが上がる人もいれば、ただの苦行に感じる人もいますから。

そりゃそうですよね。でも考えてみたら、儀式的な習慣って「全体統一」が前提だから、余計に問題が起こりやすいのかもしれないですね。特に今は「多様性の時代」で、同じ会社の中にもいろんな考え方の人がいるわけで。

確かに、多様性を維持しつつ儀式的な習慣を続けるのは難しいでしょうね。だから一旦の結論としては、「全員参加の強制は避けた方がいい」。どうしてもやるなら、「なぜこれをやるのかを丁寧に説明し、納得してもらう」が必須になってくるでしょう。

そんなふうに「やりたい人がやる」っていうのが、理想的なスタイルなのかもしれませんね。ただ掃除や体操と違って、朝礼は完全に任意にはしにくい文化ですよね。社長の話が面白いとか、意味のある朝礼ならいいんですけど、現実にはそうじゃない会社が多い。

確かに、「朝礼は当たり前」と思っている人も多いですからね。うちの会社でも朝礼はやっていますが、私自身は必ずやるべきだとも思っていないんです。それよりも「何のために朝礼をするのか」がメンバーに伝わっているかどうかが大事で。
対談している二人
藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表
1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。