ちょっと古典的ですが、「あなたは最も多くの時間を共に過ごす5人の平均だ」という言葉があります。ようするに、周囲の人間のレベルが自分のレベルである、と。
これは、自己啓発的な話の流れで語られるテーマのようです。ここから、続けて「いま心地よい環境にいるということは、自己変化を停滞させる」「成長を望むのなら環境を変えていく必要がある」という展開につながっていったりするようです。
たしかに、良くも悪くも、人間関係を含めた社会的属性こそが他者からみた人間のスコアリングであることは明白です。収入が高い人たちの中にいる人は収入が高いとみられて、いかつい人たちが仲間であればその人もいかつく、パーティピーポーに囲まれた人はおそらくパーティピーポーでありましょう。
ビジネスの世界でいえば、その時点の実力や格付はその人を理解するより環境やランクで推察する方がはるかに簡単です。ですので、先の自己啓発の理屈では、より上のランクに属することができるように行動することが、ひいては自分のレベルを上げていくことでもある、といえるのでしょう。
釣りバカ日誌やサラリーマン金太郎のような、自分はフツーだけれど付き合う人がハイクラスというのはファンタジーで、すべての物事には優劣があり、人の集団にも上下があるというのが社会的にはファクトです。
しかし、それは結果的にそういうものであって、自分から積極的に乗っかっていくのはキツいんじゃないのかなあ……と、凡俗の徒は思ったりもします。
そもそも、「周囲5人説」自体、考えれば至極あたりまえのことです。
いる場所のレベルを上げれば自分のレベルも上がる、というよりは、自分のレベルが上がればいつのまにか立ち位置が上がっていた、ということかもしれません。ニワトリが先か卵が先かという話です。
ユニークなのは、自分のスコアリングをするうえで、自己評価ではなく他人をモノサシに持ってくるという切り口です。たとえば、周りの奴らはバカばっかりだと言う人は、自分がバカだったことになってしまうのがおもしろいところなのです。
ちょっと気の利いた警句だったのが、成長とか、環境を変えるとか、なんか変な方に行ってるんじゃないかな……と思いますが、まあ、競争が得意な方には真理なのかな。なのかも。