従業員として働いている立場だと、ほぼ全員が言われたことがある言葉があると思いますが、そのひとつが
「経営者意識(目線)をもて」
という標語です。逆にいえば、経営者や経営層の方であればほぼ全員口にされたことがおありでないでしょうか。
正直、言われた側にとっては気持ちのいい言葉ではありません。
中には、雇われの立場と権限で契約している人間に何を求めてるんだ、と感情的に反発する方もいらっしゃるでしょう。
他方、言う側も、客観性が薄く、自己中心性が強いがゆえの発言である場合もゼロではないと思います。
しかし、大多数の方は、常識的感覚のもと、「経営者意識をもて」という言葉を用いるのではないでしょうか。常識的とは、いわばチームスポーツの監督がメンバーに「チームの目的は勝つこと以外にない。それを忘れるな」と言うのと同じような感覚です。
チームは勝つために運営され、企業は利潤を得るために活動する。
明白な事実です。
そして、個人がこれをどう受け止めるべきかという点で、シンプルに正解は存在します。
「誰に言われたとかではなく、それは真理なので、自分の中で素直に受け止めて実行する」
です。
年齢や立場に関係なく、りっぱな人はそれを理解し、行動することでしょう。
ただし、残念ながら、あまりわたくしはりっぱでなく、先に申し上げたとおり正直ネガティブな感想を抱いてもいます。
また、その理由もうっすら思いあたっています。
同じくスポーツでたとえれば、「勝つこと」はチームの存在意義です。
逆にいえば、勝ちさえすれば原則的にすべてはうまくいきます。チームが最大限の利益を得たとき、ステークホルダーへの還元が行われる。チームのメンバーもおのずと還元の一部を期待できる、そこまでが前提でもあります。
一方、もしその前提が成立しないとき、チームとメンバーの利害もまた、一致しないことになります。
稼いでもメンバーに利潤が還元されないチーム、または利潤を還元しても相応のパフォーマンスを期待できないメンバー。その認識が両者のどこかにひそむかぎり、「経営者意識をもて」というフォアザチームの標語には、かならず取りこぼされるものがあるのです。
とどのつまり、「経営者意識をもて」は、皆に共通するテーマながら、チームからみてそれを投げかけるに値するメンバーをけっこう選ぶ、ということなのです。