ちょっと前、有名な芸人さんが、「SNSは芸能人やアスリートが使えばいいもの。素人が使うな」と発言して大いに炎上しました。
当人はこれを受けて、不特定多数の人々が誹謗中傷や無責任な発信をすることに対しての怒りが極端に出てしまった、と釈明されたそうですが、個人的にはこれ、ごもっともすぎる感覚だと思います。「素人」がいうのもなんですが。
言葉は言葉、誰もが同じように発することができるかもしれませんが、情報としての意味、価値、影響力などのバリューはどれひとつ同じではありません。むしろ、言葉や画像というフォーマットを同じくしているだけで、ほとんどの場合、それ以外の要素は並べて比較できるものでもありません。
そして、情報の量が爆発的に膨張してしまった現代で、すべての情報を公平に扱っていては一瞬で人生が終わります。情報には格付けをして、価値が広く認められるものだけを相手にする必要があります。
かくして、情報は、有用なごく一部と、それに反響して生まれた大多数のノイズに二分されていきます。
つまり、SNSが条件的には双方向性のメディアであっても、発信する層と受容する層は分かれていなければ成り立たないのです。
というような状況で、情報の上流にある層に対して下流の層があれこれいう行為が、つまりはノイズそのものであり、「価値がない」とまでいえるかといえば、まあ、いえるわけです。
ただ、実際、SNSの時代の前からそんなことはいくらでもありました。
たとえば、引っ越して新しく住む土地では「地元の医者の評判を知りたい」というニーズが昔からあったはずです。
ネット以前なら口コミ、今もふつうに医療機関をまとめたWEBサイトにはレビュー機能がありますし、GoogleMapにも豊富な評価がついています。
ですが、考えてみるとこれは奇妙な話です。
医療行為の主観的評価はもちろん自由に行うことができますが、医療行為を勝手にやったら違法行為です。それほど、高度な専門性というものにはする側/される側を区別する障壁が設けられているにもかかわらず、あたりまえにどの医療者が優秀で、どれがダメだと語ることは「レビュー」なのです。
社会へ深刻な悪影響があるわけではないでしょうが、少なくとも、芸能人が客の素人へ唾するのよりも、よほど構造的にはイビツなのではないかとおもいます。