自分が通っている床屋が、近日店を改修するそうです。
床屋のおっさんはわたくしと同年代のアラフィフで、
親父さんの代からでやっている典型的な「まちの床屋」なのですが、
店の間取りが少し変わっています。
80年代くらいの造作であろう店の内部は席が3台あるのですが、
現在ワンオペであるため決まった1台しか使っておらず、
残りの2台には雑多な荷物が置かれています。
また、昭和な店内と、いまの店主が持ちこんだ
クラシックなバーバー的装飾とが混然とした空間も
あまり理美容の店舗では見ない様相です。
若者向けのオシャレな美容院でも、地元のおじさんたちの床屋でも、
ロープライスチェーンのドライな雰囲気な店でも
それなりの統一感があるものですが、それがありません。
そのスタイルで長年続いているので
客としても慣れきっていましたが、
それが今回大幅なリフォームをするのだといいます。
それは、店の雰囲気を変えたいといった
ファッション的な観点はほとんどなく、生活に基づいた理由で、
ひとことでいえば
「自分が仕事をたたむまでを考えて、場所を整理する」
ためのようです。
わたくしのような雇われで生活している者からすれば
独立稼業、職人仕事の方は
やはり自由とリスクを均等に背負っているように見えるものです。
そして比較的年配になってくれば、リスクの中身も
ビジネスを長く続けられるかという不安より
健康がメインテーマになってくることでしょう。
制度的な年齢制限がないといっても
業務の性質上、そこいらのサラリーマンより
肉体的負担が強いことを思えば、
ふつう際限なく働きつづけるものではありません。
床屋のおっさんも、
自分が動ける現実的な期間を考えた結果、
最後の大きな投資としてリフォームを決意するに至ったというわけです。
職人は自分の肉体、気力に向き合わざるをえないものでしょうが、
もちろんそれ以外の業務、業態の人も等しく老いていくものです。
逆算をしていろいろ考えなくてはいけない時期というのは
意外にかなり早いのではないか、と今回思った次第です。
……まあ、意外に早いというのは、
三十代後半の人が人生の秋風を最初に感じた瞬間に、くらいの早さなので、
わたくし手遅れなんですが。