日曜日には、ネーミングを掘る ♯98 ウラオモテのある電話帳

今週は!

このようなブログを毎週書いていることもあって、「ネーミングって、どんなときに、どうやってできるんですか」と聞かれることがあります。

私は朝型人間なので、ネーミングが生まれるのは夜明け前後という場合が多いのですが、その日の朝がやってくるタイミングは、依頼を受けてから3日後だったり1か月後だったりいろいろです。いずれにせよコンセプトを“寝かせておく時間”は必要になってきます。

しかしながら、ごくまれにコンセプトの打ち合わせをしている最中にできてしまうこともあります。今回、ご紹介する案件もそんなふうにできてしまった例です。

仕事の依頼をしてくださったのは、大阪に本社を置く株式会社そうごうさん。『そうごうページ』という地域に特化した電話帳広告を、全国で発行している会社さんです。

「あっ、これ、うちの電話台にも吊るしてあったよ」と思い出してくださる方もいらっしゃるかもしれません。「くらしに便利なみんなの電話帳」をキャッチフレーズに、創業から40年以上に渡って売れ続けているロングセラー広告商品です。

とはいえ、世の中はスマートフォン全盛。検索しさえすれば欲しい情報はなんでも手に入る時代です。電話帳にも暮らしに便利なだけではない付加価値が求められています。そこで、社長の石原康行さん、ビジネスモデルの転換を含めたリ・ブランディングを考えてみたいと、私が所属するブランドファーマーズ・インク(BFI)に相談に来られたのでした。

BFI代表でありコンセプトメイキング担当の安田(佳生)さんのアイデアは、紙の電話帳ならでは「ページをめくる」アナログ感を残しつつ、街を元気に楽しくできるようなメディアに変えることでした。

具体的には、1冊の電話帳を2つ分けて考え、表紙からめくると「会社やお店のことが好きになるようなお話」を読むことができ、裏表紙からめくると「困ったときにすぐに役立つ情報」を知ることができる。

会社や商店の電話番号を掲載するだけでなく、2つの違った面(情緒と機能)から、それぞれ表現方法も変えて伝えようというアイデアでした。

「つまりは、佐藤さん。表と裏がある電話帳ってことです」

「安田さん。名前、それでいいんじゃないの。ウラオモテのある電話帳」

こうして新しい電話帳のネーミングが、その場の手短なやりとりで決まりました。

商品やコンセプトのユニークネスが際立っているとき、ネーミングはあれこれこねくり回さず、まずはそのものを生かすことを考えるのが良いと思います。あまりやり過ぎると、小林製薬さんになっちゃいますけどね。笑

そうごうさんの電話帳プロジェクトは、今春から神奈川県の葉山町を舞台に実験がスタートします。新しいビジネスモデルや、それにもとづく職種のネーミングも提案していますが、それはまたの機会に。まずは電話帳のウラオモテをチラ見ください。
※文言や電話番号はダミーです。

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