今週は。
ここ最近、
個人で事務所や会社を立ち上げる
友人・知人が増えてきている。
年齢も経歴もいろいろであるが
各々自分の好きなような肩書や屋号で
思い思いの活動を始めている。
愉快で素敵な世の中になってきたと思う。
なってきた、というより、
戻ってきた、というべきか。
思えば、江戸のむかしは、
私業の時代、商売の時代であった。
「熈代勝覧(きだいしょうらん)」なる
絵巻をご存じだろうか。
文化2年(1805年)頃の
日本橋から今川橋までの
大通りの様子を描いたもので、
この絵巻の複製が
東京メトロ「三越前」駅の
地下コンコース壁面に
約17メートルに渡って設置されている。
三井不動産のウェブサイトに
記載された説明書きによれば、
ネーミングの由来は
「熈(かがや)ける御代の
勝(すぐ)れたる景観」だそうな。
なるほど目を凝らして見れば、
沿道には88軒の問屋や店、
そこに行き交う1,671人、
さらには犬20匹、馬13頭、
牛4頭、猿1匹、鷹2羽が
屋号や商標が書かれた暖簾や
看板などと一緒に克明に描かれている。
この絵巻を『江戸商売図絵』(中公文庫)
と照らし合わせて見ると
江戸時代にはじつにいろいろな
商売(職業)があったことがわかる。
当時は、「物貰い」も商売であった。
たとえば「庄助しょ」と
呼ばれていたのは、
竹箒を持って店の前を掃きながら、
「庄助しょ、庄助しょ、
朝から晩まで掃除をしょしょ」と言いつつ
銭をもらって歩くという者で、
じつはそれも「掃除をするふりをするだけ」
だったという何とも奇天烈な商売である。
こうした商売と、
いわゆるまともな商売が、
タテ(序列)の関係ではなく、
フラット(つまり、同じ通り)に
並んでいるのが、
この時代の面白さである。
時の螺旋階段をぐるりと回り、
いま再び、そのような時代に
近づいているように思う。
熈(かがや)ける時代である。
戻ってきた、と書いたのは、
そういうわけである。