♯156「歯科医院のネーミング」

今週は!

目下、仕掛中の仕事のひとつに、新しく開業する歯科医院のネーミングがある。開発をするにあたっていろいろ調べていくと、この業種、なかなかにハードルが高いことがわかってきた。

厚生労働省のよる最新の統計によると、日本に現在ある歯科医院の数は、なんと約6万8千件余。ネーミングで圧倒的に多いのが医院長の個人名である。姓+歯科医院もしくはデンタルクリニックで、ボク(佐藤)のようにありふれた姓の場合は、フルネームを使用することもある。

ほかに地名や一般名詞を使っているケースもあるが、「さくら」「いずみ」といった当たり障りのないものがほとんど。ちなみに歯科医の仲間内では、札幌の歯科医院の名前が面白いとされているらしい?が、それでも「みるく歯科」「ポテト歯科」止まりである。

なぜこのようになるかと言うと、歯科医院が非常に差別化のつきにくい業種だからである。どんな歯科医院でも、基本やることは同じ。時間差こそあれ取り入れる技術も同じ。ゆえに際立ったコンセプトが立てにくい。結果、唯一の違いが医院長の名前となり、町中インプラントの文字と医院長の写真が入った看板であふれてしまうわけである。

そんななか、ボクが注目しているのが『ブランパ』という歯科医院である。銀座の中央通りを歩いている際に、エントランスを目にしたのがきっかけだった。

医療法人社団銀座メディカルデンタルクリニックがプロデュースする、この医院。ホームページを見ると、「日本から銀歯をなくそう」というスローガンのもと、次のようなコンセプトが紹介されている。

「当クリニックでは、最新のセラミックマシーンと専門のスタッフにより、1日で治療を終わらせることができます。結婚式や成人式、大切な面接まで時間がない方や、治療に時間をかけたくない方、何度も通院することが難しい方でも治療をすることができます。」

ちなみに名前の由来は、フランス語で“白”を意味するblancと、歯をパッと白くできるということでPa! 明快な使命と革新的な技術、そこからくるコンセプトとネーミングが一体となったこの業界では非常に珍しい例といえる。

とはいえ、技術が支えるこのコンセプトも、やがてインプラントのように当たり前になり、レッドオーシャン化していくのではないだろうか。

冒頭に戻って、現在開業準備中の歯科医院。率いることになる若き医院長も、従来にはないユニークな考え方の持ち主である。さて、どんなコンセプトとネーミングになるだろう。今週提案することになっているので、次回以降のブログで報告できるかもしれない。

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