日曜日には、ネーミングを掘る ♯141「TOROkko」

今週は。

酉の市も終わり、
日々深まりゆく秋。

広葉樹の枝々からは、
濃く色付いた葉が一枚また一枚と、
さよならも言わずに落ちていく。

小春日和に恵まれた先週の日曜日、
久しぶりにのんびりと
鎌倉駅前の書店まで歩いた。

朝比奈街道から、
八幡宮の境内を通って小町通りへ。
いまは映画記念館になった
川喜多邸の前を通り、
小さな踏切を渡ると、
正面に鎌倉五山第三位の寿福寺。

かつて今小路と呼ばれていた通りを
駅の方へ歩きかけていくと
左に小さな看板があるのが目に留まった。

焼き菓子のお店のようであるが
カフェも併設しているらしい。
ちょっと気になって、
書店の帰りに立ち寄ってみる。

予想通り、珈琲が美味しい
居心地の良いお店だった。

帰り際、レジで
店主と思われる女性に尋ねた。

-こちらのお店、新しいの?

―1年ほど前からやっています。

―そう、気がつかなかったな。

―お店をあけるのが不定期なんですよね。

-へー、それでかな。

“くせ”で店名の由来を尋ねる。

―TOROkkoって、
あのトロッコのことだよね。
どうしてトロッコなの?

-そうですよね。
どこにもトロッコらしいところがないから。

-うん。

-じつは、ここは2軒目で
最初にお店を出したのは北鎌倉だったんです。
北鎌倉ってほら…。
あ、鎌倉の方ですか?

-うん。

-ならわかりますよね。
あそこって結構な山じゃないですか。
お店は山の上の方にあったんですが、
すごい急な坂で。

-うん、うん。

-その感じが、以前
鹿児島に旅行したときに乗った
トロッコ列車からの眺めに似ていて。

知らなかったが、鹿児島には、
薩摩焼酎の運搬に使われていた
トロッコ列車がいまも
走っている街があるらしい。

なるほど。それで合点がいった。

-美味しい珈琲をごちそうさま。
また来ますね。

-はい。お待ちしています。
お気をつけて。

トロッコを降りると、辺りはもう真っ暗。

私は歩きながら
次回のブログの書き出しを考えはじめている。

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