日曜日には、ネーミングを掘る。♯151「BALMUDAの“The”」

今週は!

ボクは、このブログを掲載前日の土曜日(締切直前ともいう)に書くことが多い。テーマが決まっていることもあるが、決まっていないこともある。決まっていないときは、テーマを探してジタバタする。

今回もジタバタしながらフェースブックを眺めていたら、知人でビジネス評論家でもある石塚毅さんがバルミューダ社についての新聞記事を取り上げてくれていた。なんとうれしや!じつは、バルミューダについて以前からちょっと掘ってみたいことがあったのだ。石塚さん、思い出させてくれてありがとさん。

バルミューダの製品ネーミングは、同社の名を広く知らしめることになったヒット商品『BALMUDA The Toaster』発売以来、

社名+The+製品ジャンル

という構成でほぼ統一されている。

掘ってみたかったというは、この真ん中にある“The”についてである。

なぜ“The”なのだろうか。英語の定冠詞Theにはいろいろな意味があり、英語上級者も悩まされると聞いたことがあるが、そのなかの1つに「この世にひとつしかないもの」の前に置くという用法がある。

この文脈において、バルミューダ社が自社の製品にTheを付けることは至極当然なブランド戦略のように思える。ただ、なんとなくではあるが、バルミューダのTheにはもっと深い意味があるのではないかと思っていたからだ。

そこで思い浮かぶのは、寺尾玄代表と音楽の関係である。

よく知られていることであるが、寺尾代表はバルミューダ社を創業する前に、ミュージシャンとして活動していた。20代でロックスターを志し、デビューまでしたものの挫折したことからバルミューダは誕生したのである。

しかし、挫折したとはいえ、音楽に対するリスペクトはいまも変わらないらしく『BALMUDA The Speaker』の開発ストーリーのなかでは、ザ・ポリスの名曲「Every Breath You Take」を通して、音楽への想いを語っている。(期間限定映像のなかで使用された大澤誉志幸の『そして僕は途方に暮れる』もじつに印象的だった)

そこにザ・ポリスの名前を発見したことで、ふと思ったのであるが、1960年代に登場したロックバンドはTheからはじまるものが多い。

ザ・ビートルズ
ザ・ローリングストーンズ
ザ・ドアーズ
ザ・ビーチボーイズ
ザ・バンド

とあげれば切りがない。そこには、「オレたちをそんじょそこらのバンドと一緒にするんじゃねーよ」という主張が多分に込められている。

バルミューダの製品名に付けられたTheにも、彼らと同じような強い自負心が込められていることは間違いないだろう。「唯一無二をつくっている」という誇りと自信である。

で(ここからはボクの勝手な想像であるが)、そこにはひょっとして寺尾玄が叶えられなかった音楽への想いも託されているのではないだろうか。寺尾代表にとって、1つ1つの製品はThe BALMUDAというバンドが奏でる曲であり、自身の手による製品開発ストーリーはユーザーに贈るライナーノーツなのかもしれない。

社名と製品ジャンルの間に置かれた3つのアルファベットをじっと眺めていると、そんなふうに思えてくるのだ。

参考にさせていただきました:バルミューダ (balmuda.com)

 

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